2008 年5月。ミケロブ・ウルトラ・オープンで2位に7打差をつけて優勝したアニカ・ソレンスタムが今季限りで引退すると表明したニュースを聞いて、驚いた。

おそらく燃え尽きた、やるべきことはすべてやった、という気持ちもあったと思う。94年プロ転向し、以降14年間でメジャー10勝を挙げ、米ツアー通算72勝。03年には、《アニカの冒険》といわれた男子ツアーへ出場という大胆なチャレンジが話題になった。それはベーブ・ザハリアス以来58年ぶりのことだった。

画像: 女子ツアーでは敵なしの状態だったアニカ。あまりの強さに03年にはPGAツアー「バンク・オブ・アメリカ・コロニアル」に挑戦した。96位で予選落ちとなったが、その勇気にゴルフ界は大いに盛り上がりを見せた

女子ツアーでは敵なしの状態だったアニカ。あまりの強さに03年にはPGAツアー「バンク・オブ・アメリカ・コロニアル」に挑戦した。96位で予選落ちとなったが、その勇気にゴルフ界は大いに盛り上がりを見せた

彼女がゴルフを始めたのは12歳。スウェーデンのストックホルム出身で、米国のアリゾナ大学に留学してゴルフ部に入り、91年に全米女子学生選手権優勝。92年には世界アマチュア選手権に優勝してのプロ転向だった。

5年連続など計8度の賞金女王。2001年スタンダード・レジスター・ピン大会の2日目には、18ホールを「59」という驚異的なスコアで、女子ツアー史上最少ストロークをマークした。また02年は、23試合中11勝という戦績だった。

画像: キャディを落下地点に立たせてショートアイアンの練習をするアニカ。キャディは前後に2、3歩動くだけ。ショット精度はズバ抜けて高かった

キャディを落下地点に立たせてショートアイアンの練習をするアニカ。キャディは前後に2、3歩動くだけ。ショット精度はズバ抜けて高かった

「アニカのトレーニングメニューは、男子選手でも辛いほどハード」と内藤雄士プロコーチに聞いたことがある。
 
2003年にゴルフ殿堂入りを果たしたとき、彼女はこんなスピーチをしていた。

「ある記者が、私についてこう書いていました。アニカは強く偉大な女子プロゴルファーではなく、《勇敢なゴルファー》だと。その記事を読んだときは、とても感激しました」

画像: 女子ツアー界にアスリート的思考を持ち込んだのもアニカだった

女子ツアー界にアスリート的思考を持ち込んだのもアニカだった

彼女は、男子・女子という性別の区別なく「アスリートと呼ばれたい」という意思を自ら努力と実績を示して戦い抜いた。そして、その夢を果たしたという実感があっての引退表明だったのだろう。(文・三田村昌鳳)

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