PSを入れた3本ウェッジ時代を築いたのジャンボ尾崎だった。

たかが、ロフト2~3度の話ではない。プロはここに技術の粋を究めている。それまでのプロは総じて”ボールをカットする”技術を駆使してホールを攻略していた。ところがジャンボ尾崎はそれをクラブで肩代わりさせようとしたのだ。

もっとしなやかで、柔らかい打球が欲しい。そのためにはもっとロフトの開いたSWが欲しい。その結果SWとPWとの隙間を埋めるクラブとして、3本目のウェッジが必要となった。ちなみに当時のアイアンは5番アイアンで28度前後。以降4度ピッチで刻まれてPWで50度、そしてSWで56度が標準だった。しかし、ジャンボは58度、60度、62度とさまざまなSWのロフトを試していた。PWとのロフト差は開く一方だった。

現在の5番アイアンのロフトはハーフキャビティのプロモデルで、25度や26度が標準になっている。28度といえば6番アイアンのロフトに近くなる。(2016年モデルとの比較)

この裏にはアプローチ技術の変化がある。前述した通り”カット”から”スクェア”インパクトへの変化があった。合わせてアイアン全体の打ちやすさ感の向上により、ジャンボはロフトを立てるという試みも実践している。アイアン全体のロフトが立てば、いっそうSWとの差が広がってしまう。この辺りにも「PS誕生の必然」があったようだ。

アプローチ技術の変化、ストロングロフト。ともに今やゴルフ界の常識となっているがいずれも”元祖”はジャンボ尾崎。1920年代も終盤、かのジーン・サラゼンが「飛行機の翼」をヒントに砂の中でもヘッドが潜り込まない設計のサンドバンカー専用ウェッジを発明した。

これがサンドウェッジの始まり。以来50余年、アイアンのセッティングはほぼ固定されていた。そこに登場したPSであり、サラゼンのSW以来となる3本目のウェッジの普及だった。

確かに内外ゴルファーを広く見渡せば、当時すでにSWを2本入れる者、PWを2本入れる者と、構成は多様だった。しかしそれはあくまでゴルファー個々の事情によるものだった。

画像: 「PS誕生の必然」はロフトのストロング化にあった

明確に3本のウェッジをシステム化して確立させたゴルファーは、紛れもなくジャンボ。ジャンボのアイディアがサラゼンに匹敵するかどうかは、今後のゴルフ史に判断をゆだねるとして、ジャンボが”現在の常識”を作り上げたことだけは確かなことと断言できそうだ。

SWのロフトの拡大で誕生したジャンボの3本目のウェッジは、当然のことながらSWの香りを強く残したものだった。例えばそれは形状に現れた。アイアンのシャープなシルエットではなく、丸みを帯びたSWに近い形であるとか。そのため名前にも「ピッチショットもできるSW」の意味合いが込められている。

だが、セッティングにPSが加入したことで、ジャンボにとっての100ヤードは俄然自信満々の距離となった。というのもSWを目一杯に振れば、絶えず引っかけの恐怖と直面することになる。そこでPWでスリークォーターとなるのだが、これではスピンのかかりが悪い。「安定したショットで均一なスピンをかけたい。鋭すぎる弾道ではなく柔らかな打球でね。PSだとそんな打球が可能なんだ」

もともとSWはフルショットするクラブではないという。バウンスがあり、しかもロフトが多くアップライト。ちょっとしたズレが大きなミスを引き起こす。つまりPSはフルスウィングできるSWとも解釈できる。

このように、ジャンボはPSを入れることで100ヤード以内の盲点をなくしたというわけだ。しかし、かのジャンボといえども現在のウェッジ3本システムの普及は予想だにしなかったようだ。そしてB社もまた、同様だった。

3本目のウェッジが普及した背景には、低重心化、深重心化というアイアンそのものの進化が色濃く影響している。つまり、ソールの薄いまるで鉄の板のようなアイアンから、打ちやすさ重視のアイアンが誕生した。するとその打ちやすさ感は、飛距離の欲を刺激する。

ジャンボが80年代前半に実践した「アイアン全体のロフトを立てる」という試みである。5番で30度が常識だったアイアンが90年前後から徐々に立ち始めた。その結果、ジャンボでなくてもPWとSWとの間に段差が生まれてしまったのだ。

一般アマチュアにとってもSWとPWの隙間を埋めるクラブが必要になった。そしてその時すでにジャンボがそのクラブ”PS”を駆使して第2の黄金期を迎えていた。トップダウンと底辺からの欲求。実に急速なる3本目のウェッジの普及は、それだけの下地があってのことだったというわけだ。

常に新しい発想で打ち方もクラブも生み出すジャンボ尾崎。改めてその功績に脱帽です。

月刊ゴルフダイジェスト2003年7月号より一部抜粋

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