クラブアナリストのマーク金井氏を発起人として開催されている「MMT9(マーク・マイクロ・トーナメント 9Holes Championship)」。トーナメントながら、プレーするホール数は72ホールはおろか18ホールですらない“9ホール”によるストロークプレーというユニークな大会だ。なおかつ、プロとアマが同組でプレーし、プロは4本以内、アマチュアは7本以内というクラブ本数制限まである。しかも開催コースは河川敷の赤羽ゴルフ倶楽部! 2017年1月12日に開催された、その第6回大会に実際に出場したゴルフライター・児山和弘のレポートをお届けしよう。

川岸良兼、今野康晴、田島創志……歴戦の猛者と一緒に試合⁉︎

9ホールとコンパクトな試合形式で、プロとアマが腕を競い、ギャラリーも来場しやすい、この「MMT9トーナメント」。そのコンセプトに賛同し、私も第1回からアマチュア予選に出場しているのだが、正直、予選通過は簡単ではない。この第6回大会のアマ予選でも力及ばず敗退し、今回は、大会サイドのご好意でメディア枠での出場となった。

出場する選手は、プロと予選を通過した屈強のアマチュアたち。周囲を見渡すと、川岸良兼、今野康晴、田島創志とツアー優勝経験者がずらり。スタート前は選手紹介アナウンスもあり、参加したアマチュアはさながらプロトーナメントでティーオフするような気持ちになる。緊張して、ティショットをミスする選手も少なくない。

画像: スタート前は選手紹介アナウンスも

スタート前は選手紹介アナウンスも

「手前でOK」「ボギーでOK」に徹したら、思わぬ結果が!?

私の作戦は、「ボギーならOK」というもの。無理にパーや、ましてバーディを狙うと、大ケガになりやすい。二打目はピンを狙わずに、「手前でOK」と腹をくくった。それに合わせた7本のセッティングは、「1W、UT(22度)、8I、9I、PW、AW、パター」というもの。短い距離を打つ番手を厚めにし、番手間の距離を開けなかった。

7本というクラブ本数制限があると、どうしても番手間の距離が残りやすい。予選を通過した5下ハンディの猛者たちは、球筋を変えたり、コントロールショットしたりして、距離を打ち分けているが、残念ながら私にその技量はない。そのため距離は合わせず、アプローチで凌ぐ戦略だ。

結果は、2オーバーの「37」(パー35)。アマチュアでは2位、全体でも7位タイという好成績だった。私としてはできすぎだが、「ボギーでOK」と思ったことで、アプローチもパットもそれほど緊張しなかったのが功を奏したようだ。

異色の「スイッチヒッターゴルファー」と同組に

画像: 「右は距離、左は正確性」と使い分けるスイッチヒッター、高橋慧選手

「右は距離、左は正確性」と使い分けるスイッチヒッター、高橋慧選手

一緒にラウンドしたプロは、高橋慧選手。世界ジュニア、日本アマに出場経験のある若手で、左右どちらでも打てるスイッチヒッターの選手として、注目を浴びているプレーヤーだ。

残念ながら、この試合は、プロにクラブ4本の制限があるため、バッグに入れるのは右用のみで、この日、左打ちを見ることはできなかった。次の日からフィリピンゴルフツアーのQTに出かけるということだったが、アジアの地で、往年の名プレーヤー、同性の高橋慶彦のような両打ちが見られるだろうか。

高橋選手とは、使っているクラブのことなどを話した。同じ環境でプロと競技するだけでなく、こうしてゴルファーならではの会話をしたりするのも、「MMT9」の面白いところだ。プロとアマとの距離が近く、選手とギャラリーとの距離も近い。

プロのクラブは「4本しばり」だからみんな“直ドラ”連発

画像: 荒川の河川敷に造られた赤羽ゴルフ倶楽部。小さく傾斜のあるグリーンがゴルファーを楽しませ、同時に苦しめる

荒川の河川敷に造られた赤羽ゴルフ倶楽部。小さく傾斜のあるグリーンがゴルファーを楽しませ、同時に苦しめる

9ホールで、3000ヤードに満たない赤羽ゴルフ倶楽部。プロなら、どのホールでもバーディが取り得るコースだ。しかし、プロに許されたクラブはわずか4本。パターとウェッジは確定として、ティショットに使うドライバーかFWを入れると、使えるクラブはあと1本になってしまう。ピンまでの距離に合わせるのは、プロといえどもそう簡単ではない条件だ。

それに加えて、赤羽ゴルフ倶楽部の小さく傾斜のきついグリーンが加わる。冬枯れした高麗グリーンはスピードがあり、とくに下りでは加速がつきやすい。傾度が3〜4度という強い傾斜がいたるところにあり、そのそばにピンが切られている場合も多かった。(※筆者注:一般的に傾度が2度を超えるとゴルファーは強い傾斜を感じる)

当日は天気がよく、河川敷特有の風も弱い、絶好のコンディションだった。多くのプロが、これはスコアを伸ばさないと勝てない、と感じたのではないだろうか。難しいピン位置をピンハイに攻め、バーディを狙うゴルフが随所に見られた。

プロとしては、なんとしても伸ばしたい12番パー5。セカンドショットでは飛距離を稼ぐため、地面にあるボールをドライバーで打つ、いわゆる直ドラを選択する選手が多かった。これほど、直ドラが見られる試合もなかなかないのではないだろうか。本数制限というルールが生み出した、「MMT9」の妙味がここにある。

ワンオン可能なホールでプロがスコアを落とす怪。そこに「勝負の綾」を見た

画像: 「MMT9」では、プロもアマもクラブを担いでプレーする

「MMT9」では、プロもアマもクラブを担いでプレーする

スコアは伸びるものと予想されていたが、実際には選手たちは苦戦した。カギとなったのは、13番(317ヤード、パー4)だろう。プロであれば、ティショットでグリーン手前のバンカー付近まで届く選手がほとんどで、1オンも不可能ではない。プロはみな伸ばしたいホールだ。

しかし、ティショットは落とし所がわりと狭く、奥のOBも近い。何よりもグリーンの傾斜がきつく、二段グリーンの上にピンが切ってあるのに、ピン奥は、強く下っている難所だ。結果的には、ここでスコアを崩す選手が多かった。

ティショットで220ヤードも打てば、残りはウェッジで乗せられる。プロならパーを取るのは造作もないホールだろう。バーディを取ろうとすると、そこにスコアを崩すリスクが生まれる。そのリスクに誰もが果敢に挑むから、勝負が面白くなる。

スコアだけを見て、判断するのは簡単だ。しかし、ゴルフにはスコアには現れにくい、プレーヤーの心理と技術が交差する勘所がある。「MMT9」では、クラブ本数制限によって、そんな勝負の綾を随所にみることが出来る。ゴルフの面白さをまた違った面で見せてくれるのだ。(了)

画像: 一言でボギーと言っても「ナイスボギー」と「パー逃しのボギー」と「バーディと紙一重のボギー」は違うのだ

一言でボギーと言っても「ナイスボギー」と「パー逃しのボギー」と「バーディと紙一重のボギー」は違うのだ

次回開催は未定。腕に覚えのある方は、次回開催をチェックしてみては……?

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