「MP」でもない「JPX」でもない、ミズノが立ち上げたブランド「ミズノプロ」から、ニューモデルのアイアン3機種が発表された。ミズノの新作アイアンと聞いたら黙っていられないとばかりに、みんなのゴルフダイジェスト編集部員でありプロゴルファーの中村修がさっそくテスト!

この打感、左手が喜んでいる! 最新型マッスル「ミズノプロ118」

ゴルフ歴が長いベテランやミズノファンはご存知かもしれないが「ミズノプロ」とは、かつて「ミズノスタッフ」から改称された老舗ブランドであり、後に生まれた「MP」はそのイニシャルをとったもの。何といっても、往年の名器アイアン「TN-87」(88年)も、あの名ドライバー「300S」(99年)も「ミズノプロ」という“冠”がついていた。ミズノの、いや、ゴルフクラブの歴史に名を刻んだブランドが復活したのだ。それだけでもこのクラブへの“本気度”がうかがえるというもの。中村は言う。

「ボクらの世代にとって『ミズノプロ』は懐かしいブランドです。名前が懐かしいだけでなく、このアイアンはどこか『TN-87』を思わせる顔つきをしています。オールドファンにはたまりませんね」(中村、以下同)

画像: ミズノプロ118。ゴルファーなら、誰もが思わず触れたくなる官能的なシェープだ

ミズノプロ118。ゴルファーなら、誰もが思わず触れたくなる官能的なシェープだ

そう言いながら手にしたモデルが、マッスルバックの「ミズノプロ 118」。まずはその見た目から感想を述べる。

「トップブレードが薄くて非常にシャープでありながら、ブレードがバックフェースにかけて傾斜しているので、安心感も同時に与えてくれます。ブレードがあまり薄く見えると難しい印象を受けてしまうもの。このアイアンはシャープさがありながら、構えたときに必要以上のプレッシャーを感じさせない工夫がなされています。このあたりの細かい工夫はアイアンを知り尽くしているミズノならではですね。構えると速く打ちたい! どんな弾道で飛んでくれるのかワクワクしますね」

画像: トップブレードは薄いが、薄く見えすぎない工夫が凝らされている。マッスルバックを知り尽くしているミズノだから可能な形状の美学がそこにはある

トップブレードは薄いが、薄く見えすぎない工夫が凝らされている。マッスルバックを知り尽くしているミズノだから可能な形状の美学がそこにはある

そして、気持ちよさそうにボールを打ちながら、7番アイアンの弾道を計測した。その結果がこちら。

キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
158Y 158Y 17.4度 49.7m/s 6539rpm
163Y 163Y 18.7度 50.1m/s 5083rpm
165Y 166Y 17.8度 50.5m/s 5062rpm
154Y 155Y 18.4度 48.3m/s 5266rpm
156Y 157Y 17.5度 48.8m/s 5064rpm 

画像: 試打は、弾道計測器など最新鋭の設備が揃うレッスンスタジオ「パフォーマンスゴルフスタジオ」(東京・新小岩)で実施した

試打は、弾道計測器など最新鋭の設備が揃うレッスンスタジオ「パフォーマンスゴルフスタジオ」(東京・新小岩)で実施した

「かつてのマッスルバックより、明らかにやさしくなっていますね。とくにミスヒットに強い。4球目は少しダフってしまいましたが、距離が大きく落ちませんでした。しかもマッスルバックにありがちな、芯を外したとき手に響くイヤな手ごたえを感じにくいんです」

弾道データを見ると、他の2モデルよりも打ち出し角が高いし、スピン量も確保されている。まさに、アスリートがイメージ通りの球の高さ&スピン量で、ターゲットにボールを運べるアイアンということ。一言でいえば、「たまらなくやさしいマッスルバック」。その「やさしさ」の秘密はなんだろうか?

「重心が低くなっています。薄めのトップブレードに対して、ヘッドの下部が中空さながらにぶ厚く作られています。しかも、かつてのマッスルバックよりもネックが短め。重心を低くする工夫が盛り込まれているんです。

画像: マッスルながら、ネックは短い。見た目はトラディショナルながら、低重心でやさしく打てる工夫が随所に盛り込まれている。明らかな進化を感じられるマッスルだ

マッスルながら、ネックは短い。見た目はトラディショナルながら、低重心でやさしく打てる工夫が随所に盛り込まれている。明らかな進化を感じられるマッスルだ

「マッスルバックというと、上からツブしにいくように打たなくてはいけないイメージがありますが、それは重心が高めのアイアンで芯に当てるための打ち方です。このアイアンは重心が低くなっているので、今どきの払うようなイメージで打ってOK。マッスルバックを使ってみたいというゴルファーは、このモデルをぜひ打ってみてください」

ところで、「各モデル5球ずつ打つ」という打ち合わせを事前にしたにも関わらず、中村はその後も試打をやめようとしない。10発、20発……取材時間がいくらあっても足りないので、こちらが静止しなければならないほど。

画像: 試打者・中村をトリコにした打感の秘密がこの分厚いバックフェース。えも言われぬ打感と、低い重心を同時に実現している

試打者・中村をトリコにした打感の秘密がこの分厚いバックフェース。えも言われぬ打感と、低い重心を同時に実現している

「打感があまりにも気持ちいいので、ついたくさん打ちたくなっちゃいますね」

とのことだった。打感ばかりは文字でも写真でも動画でもお伝えできないのが、なんとももどかしい。

物欲メーター緊急作動! やさしくて、カッコいい。「ミズノプロ518」

続いて打ったのは、ハーフキャビティの「ミズノプロ 518」。このモデルは「MP-59」や「MP-15」などで用いられていた、バックフェースにチタンをインサートする“チタンマッスル”アイアンだ。

画像: これを見て「カッコいい!」と思わずにいられるゴルファーは存在するのだろうか。ミズノプロ518

これを見て「カッコいい!」と思わずにいられるゴルファーは存在するのだろうか。ミズノプロ518

「マッスルバックの『118』よりも、ややグースがついているし、トップブレードに少し厚みがあります。さらに、フェースを正面から見たときに丸みがついているから、構えたときにボールを包み込むようなやさしいイメージがありますね。また、バックフェースにチタン、ソールのトウ側にウェートがはめ込まれている。全体的にやさしさが味付けされています。見た目的には、ものすごくカッコいいアイアンで、所有欲を全開に満たしてくれそうです」

このモデルも7番で試打をして、弾道データを計測した。

キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
163Y 163Y 16.9度 50.3m/s 5361rpm
167Y 168Y 16.4度 51.1m/s 4801rpm
163Y 163Y 18.0度 50.1m/s 5030rpm
162Y 162Y 18.3度 50.1m/s 5225rpm
167Y 168Y 17.4度 51.1m/s 4872rpm

データが安定しているところを見ると、テスターにかなり合っているモデルとも言える。

「一言でいえば“カッコいいのにやさしい”アイアンです。ソールのトウ側のウェートによって、パターでいうトウ・ヒールバランスの効果があり当たり負けしにくいしミスヒットのブレにも強い。“チタンマッスル”である上に、キャビティの上部が肉薄になって重量が周辺に配分されている。ソール幅がやや広くなってダフりにくい。それらの構造によって、ミスヒットにより強いアイアンになっています」

画像: トウ側のウェートが“いい仕事”をしている。これによりミスヒットへの強さは抜群で、見た目以上のやさしさを感じられる

トウ側のウェートが“いい仕事”をしている。これによりミスヒットへの強さは抜群で、見た目以上のやさしさを感じられる

「118」に比べて、初速と距離がやや伸びたのはナゼだろうか?

「やはりロフトが少し立っていることもあります。とはいえ、ネックがやや短くなったりして重心が低いので、球の高さは十分に出せます。今どきの高い球でターゲットを狙えるアイアンですね。このモデルはトウからヒールにかけての全長が長めなので、ダウンブローに打ち込むよりも、ハンドファーストを強くしないで払い打つほうが合います。それでも、ややグースがついているから球がつかまる。シャフトは『ダイナミックゴールド95』(S200)と軽めなので、幅広いゴルファーが振りやすさを感じながら、リキまずに打ちこなせるでしょう」

やさしさとカッコ良さのバランスは、近年世界中のクラブメーカーが脳に汗をかいて工夫しているアイアン作りの最重要ポイント。このバランスを高次元で満たして見せたのは、さすがアイアンのミズノの面目躍如である。

「1番手飛ぶ」がちょうどいい。最新型ポケキャビ「ミズノプロ918」

3本目の「ミズノプロ 918」はポケットキャビティのモデルで、従来でいえばミズノの既存ブランド「JPX」のアイアンに近いイメージ。

画像: 3モデルの中では“飛び系”のアイアンだが、見てくださいあえて色味を抑えたこの控えめなデザインを。これこれ、こういうのが欲しかったんだ!

3モデルの中では“飛び系”のアイアンだが、見てくださいあえて色味を抑えたこの控えめなデザインを。これこれ、こういうのが欲しかったんだ!

「軟鉄鍛造でキャビティをこれだけ深くできたのはかなりの進化」と言うように、重心が深いことでスウィートエリアの広さと球の上がりやすさが想像できるという。さらに、素振りをした時点で指摘したのは、純正カーボンシャフト(70・S)の出来の良さ。

画像: 試打者が打つ前から絶賛したのがこのシャフト。アイアンの純正カーボンシャフト=ペナペナという先入観は、このモデルに限っては完全に捨て去ったほうがいい

試打者が打つ前から絶賛したのがこのシャフト。アイアンの純正カーボンシャフト=ペナペナという先入観は、このモデルに限っては完全に捨て去ったほうがいい

「70グラム台という軽すぎず重すぎない重量設定がまず絶妙です。しかも、手元側が太めでしっかりしているから頼りなさはまったくないし、真ん中がややしなるので振りやすいんです。このシャフトなら、打ち込んでもいいし振り抜いてもOK。いい出来ですね」

キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
169Y 170Y 16.7度 51.5m/s 4786rpm
168Y 169Y 15.4度 51.6m/s 5215rpm
170Y 171Y 16.4度 52.2m/s 5559rpm
164Y 165Y 17.8度 50.4m/s 4972rpm
174Y 175Y 17.5度 52.4m/s 4740rpm

7Iで計測した弾道データは上記の通り。前2モデルに比べると、やはりボール初速と距離が伸びている。

「マッスルバックの『118』より1番手、ハーフキャビティの『518』と比べても半番手飛びますね。ポケットキャビティでヘッドサイズが大きいので左右の打点ミスに強く、ソール幅が広いのでダフっても滑り、グースが程よく利いているから球がつかまりやすいけど引っかからない。飛んでやさしい、スコアセーブ型のアイアンと言えますね」

画像: 1番手飛んで、やさしいモデルながら見た目はあくまで清楚系。「この見た目ならオッケー!」という人は多いにちがいない

1番手飛んで、やさしいモデルながら見た目はあくまで清楚系。「この見た目ならオッケー!」という人は多いにちがいない

ただし“とにかく飛べばいい”という、今どきのぶっ飛びアイアンとは一線を画すようだ。

「飛び系アイアンにありがちな、カチンと硬い打感でフライヤーのように飛んでしまうモデルではありません。ソリッドな“ミズノの打感”を損なわずにやさしく飛びます。実はスピン量が『518』とそん色ないくらい出ていることもあって、やさしいアスリートアイアンといって差し支えないし、女子プロにもちょうどいいのでは。アイアンでもう少し距離が欲しくて、コースをやさしく攻めたい人におススメです」

画像: 大地の裂け目のような深く大きいキャビティ。これがやさしさの源泉だ

大地の裂け目のような深く大きいキャビティ。これがやさしさの源泉だ

ミズノの欧米におけるキャッチコピーは、「ナッシング フィールズ ライク ア ミズノ」。ミズノの感触は他では味わえないという意味だが、それはなにもマッスルバックに限った話ではない。マッスルの得も言われぬ打感とは一線を画すとしても、ミズノのアイアンならではの打った手が喜んでしまうような打感は、ポケットキャビティでも味わえてしまうのだ。
僕たちは今、伝説が生まれる瞬間に立ち会っているのかもしれない

画像: ミズノの“本気”がこの3モデルには詰まっている。上からミズノプロ118、ミズノプロ518、ミズノプロ918

ミズノの“本気”がこの3モデルには詰まっている。上からミズノプロ118、ミズノプロ518、ミズノプロ918

最後に3モデルのヘッドを「118」→「518」→「918」という順に並べると、ヘッドが大きくなり、ロフトが立ち、トップブレードが厚くなり、グースがついて、ソール幅が広くなるというふうに徐々に徐々にフローしている。

球筋を自分のコントロール下に置きたい。縦の距離を揃えたい。唯一無二の打感を味わいたいという人は迷わず「118」を。

カッコよさとやさしさ、アイアンには両方を求めたい。所有欲を満たすアイアンが欲しい。そして打感はもちろん譲れない。そういう人には「518」。

さらに、やさしさのみならず飛びも求めたい。それでいて打感も良いほうがいいし、見た目に安心感も欲しいという贅沢な向きには、「918」が間違いない。

3モデルの棲み分けが明確だから、自分にどのモデルが合うかがわかりやすいという。ミズノが積み重ねてきたアイアンのノウハウがふんだんに盛り込まれた「ミズノプロ」。その良さは、どんなゴルファーでも体感できるはずだ。

アイアン作り独自の哲学を持つ老舗メーカー、ミズノが威信をかけて世に出した今回のミズノプロ。日本のゴルフクラブ史に新たな1ページが書き加えられた瞬間に、我々は立ち会っているのかもしれない。

(取材協力:パフォーマンスゴルフスタジオ 撮影:小林司)

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