2017年の日本女子オープンでメジャーの最少アンダー記録となる20アンダーを叩き出し、2位と8打差の圧倒的スコアで優勝した畑岡奈紗。なぜここまでのスコアを出すことができたのか、心技体それぞれの理由を探った。

【心】目標のセットの仕方が絶妙だった

「最終日の畑岡選手は、あくまでも自分の決めた目標スコアを達成する、そのことだけにフォーカスしてプレーしているように見えました。これには、キャディの小俣裕次郎さんが相当うまく選手を鼓舞したようです。ゴルフでは相手を見るとプレッシャーが増しますが、スコアにフォーカスすると集中力が増すことがあります」

と語るのは、最終日に現地で取材したプロゴルファーの中村修。

「前の週にミヤギテレビ杯で勝ち、本来ならそこで日本ツアーの出場権を得て、アメリカツアーに集中できる! となってもおかしくないところ、その次の週に日本女子オープンがあったことが大きかったと思います。勝って安心するのではなく、連覇がかかる日本女子オープンへの気持ちのギアがさらに一段階上がったようです」(中村)

「日本ツアーで勝つ」という目標をクリアした直後に「日本女子オープンを連覇する」という目標がきた。その“順番”が良かったのだというわけだ。

画像: 2種連続優勝と40年ぶりの「日本女子オープン」連覇を飾った畑岡奈紗

2種連続優勝と40年ぶりの「日本女子オープン」連覇を飾った畑岡奈紗

【技】圧倒的なショット力を、冷静なマネジメントがさらに活かした

畑岡を見たゴルファーが驚くのは、なんと言ってもその飛距離ではないだろうか。ドライバーで250ヤードをかっ飛ばし、他の選手より1番手かそれ以上短いクラブでセカンドショットを狙える。このアドバンテージは計り知れない。その上で中村は、勝利には畑岡の冷静なマネジメントがあったと語る。

「テレビを見ていた方は、グリーンの端に切られたピンを果敢に狙う畑岡選手のマネジメントは“超攻撃的”に映ったかと思いますが、現地で見ていると、実際は攻めと守りのバランスが絶妙でした。もちろん、攻めるべきときは果敢に攻めていたのですが、ピンの反対側を狙って、セーフティエリアに乗せる場合もあり、ボクシングでいえば懐に入ってのインファイトと、距離をおいてのアウトボクシング、両方をバランス良く行っていたような印象があります」

その上、日本女子オープンの最終日はパットの調子が絶好調だったことで、ビッグスコアが生まれたというわけだ。ショットとパットが噛み合うとはまさにこのこと、というゴルフだったが、それを支えたのは18歳とは思えない冷静なマネジメントにあったと中村は分析する。

画像: 好調なパッティングでロングパットはOKに寄せ、チャンスでは確実にバーディパットを決めた

好調なパッティングでロングパットはOKに寄せ、チャンスでは確実にバーディパットを決めた

そして、好調なパッティングを生んだのが、プレーのテンポ。畑岡のプレーは終始テンポが変わらないように見える。しかし、実は本人の中では「緊張するとプレーが早くなる」という自覚があるのだという。

「スウィングもパッティングも、緊張するとテンポが早くなり、(インパクトが)強くなる。なので、そうならないように気をつけました」(畑岡)

中村いわく、実際畑岡はたとえミスをしても、ナイスショットをしても、次のプレーのテンポが変わらなかったという。また、アドレナリンが出た場合に自分がどれくらい飛距離が“出てしまう”か、そのあたりをキッチリ把握している、いわば自己掌握スキルの高さも優勝に一役かったのは間違いがない。

【体】飛ぶだけでなく安定感があるのは強靭な下半身あればこそ

畑岡の放つ弾道は、飛ぶだけでなく他の選手よりも明らかに高かった。初日に雨が降った影響もあり、最終日は10フィート、コンパクション21.5と、カチカチの超高速グリーンというわけではなかったが、端に切られたピンポジションを考えれば十分タフなセッティング。その中で、ショット力でバーディを奪い続けるのは、飛距離・高さ・正確性の三拍子が揃わなければ不可能。それを可能にしたのは、ズバリ畑岡の強靭な下半身だと中村は言う。

「ドライバーの飛距離に注目が集まりますが、アイアンも飛ぶんです。しかも、その弾道が高い! それを生んでいるのが、下半身です。まるで陸上のアスリートのような強靭な下半身からは、かなりのトレーニング量が伺えます。下半身が強いと、思い切り振ったときでもスウィングが安定しボールが曲がらないんです。

画像: 下半身の強化が飛距離とスウィングの安定、そして2週連続優勝へとつながった

下半身の強化が飛距離とスウィングの安定、そして2週連続優勝へとつながった

同じスピードが出せるクルマなら、より排気量が大きく、車重が重いクルマのほうが安定感は増すと思いますが、この排気量であり車重に相当する部分が、プロゴルファーの場合は下半身。畑岡選手は、ただ飛ぶだけじゃなく、ピンハイにキッチリと距離を合わせ、止められる技術と正確性がある。それが、2週連続優勝とタフなセッティングをねじ伏せた大きな要因だと思います」

心技体、すべてが噛み合った。まだまだ18歳、米女子ツアーの過酷な移動やスケジュール調整に苦戦し、アメリカでは苦戦が続いた2017年シーズンだったが、この二連勝を契機に、2018年はアメリカでも大器の片鱗を見せつけてくれそうだ。

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