2017年の日本オープンでアマチュアとしてトップと1打差の2位でフィニッシュした金谷拓実くん。この金谷くん、以前から注目のアマチュアゴルファーとして知られ、週刊ゴルフダイジェストの誌面にも登場している。そこで、2016年1/26号で実現した、金谷くんとシニアプロで同じ広島県出身の田村尚之プロとの「ラウンド対談企画」をプレーバック。金谷くんって、どんなゴルファー?

ゴルフは“ひとつ覚え”が強い

田村尚之(以下、田村):今日は一緒にラウンドして、自分とゴルフのスタイルが似ている部分が多いなと。身長と体重はどのくらい?

金谷拓実(以下、金谷):170センチで62キロぐらいです。(2016年1月時点)

田村:体型もスリムで、筋力が特別あるわけじゃない。僕の若い頃と似ているよね。線が細くて、体も弱かったから、飛ばすことより、とにかく曲げずに真っすぐ飛ばす方法を身に付けるしかなかった。金谷くんも球を曲げて攻めるイメージはあまりないんじゃない?

金谷:ありませんね。目標に対して、常にストレートな球筋で狙っていきます。

田村:球筋を打ち分けようとすれば、それに応じた打ち方を覚えなきゃいけないけど、真っすぐ一本なら、ひとつで済む。ああしよう、こうしようと迷うこともないから、ミスする確率も低いんだ。金谷くんの球も左右のよじれが少なくて、きれいな順回転で飛んでいる。高校2年で日本アマを制したのも納得です。

金谷:一緒にラウンドさせていただいて、田村さんは球の飛ばし方が上手くて、さすがだなと思いました。ドライバーもアイアンも、球が一瞬、上空で止まって、ゆっくりと落ちてくる感じ。縦の距離がピタリと合って、まさに僕が追求している、理想の弾道です。

田村:ゴルフは“ひとつ覚え”が強いと、僕は思っている。変則と言われても、気にする必要なんてないんだよ。

左ひじを曲げることでフェース向きが変わらず、直進性が高くなる

田村:インパクトからフォローにかけて、金谷くんは左ひじを伸ばさずに、曲がった状態で振り抜いているでしょう。それが“変則”と言われる理由でもあるんだけど、世界ランキング1位のジョーダン・スピースも左ひじは曲がっているし、リー・ウエストウッドや、日本だと藤本佳則もそう。

僕はアマ時代に池田勇太や松山英樹とも、ナショナルチームで一緒に戦ったけど、ライン出しの正確さは、藤本くんが群を抜いていました。左ひじを曲げることでフェース向きが変わらず、ボールに直角に当てられる。直進性が高い、最新のクラブとボールにマッチしたスウィングであり、ちっとも変則なんかじゃないんです。

左ひじの曲がった金谷くんのインパクト。田村プロはこのカタチを高く評価する

金谷:僕がスウィングで一番気をつけているのは、左ひざを正面に向けたまま振り抜くことです。左ひざが右、左と流れると軸がブレて、ヘッドの最下点も移動してしまいます。左ひざは正面に向けたまま、バックスウィングで曲げて、伸ばしながらインパクト。これなら軸がブレません

田村:金谷くんは状況に応じて、クラブを握る長さを変えたりするタイプ?

金谷:普段よりも気持ち短く持つことはありますが、極端に短く握ることはないです。

田村:やっぱり。一緒にラウンドしていて、そう思ったんだよ。ちなみに、僕はクラブを握る長さは一切変えない。

金谷:どうしてですか?

田村:短く持つと、ヘッドのバランスが軽くなって、クラブが軽く感じるよね。そうなると、同じスウィングでは打てなくなる。もしそれをすべての番手でやったとしたら、クラブの14本なのに、倍以上の打ち方を覚える必要が出てきちゃう。ゴルフが難しくなるだけで、アマチュアなら、なおさらやらないほうがいい。

ゴルフで一番大事なのは「いかに縦の距離感を揃えるか」

田村:たとえば、松山くんなんかは、アドレスに入ってから始動するまでの時間が結構長いよね。でも、金谷くんは軽く素振りをするくらいで、アドレスに入った後も、間髪入れずにスッとヘッドが上がる。それは意識しているの?

金谷:いえ、特に意識はしてなくて、普段からこのリズムです。ただパットは試合のときだと、もう少し時間をかけているかもしれません。

田村:僕も考えたら、サッと打つタイプだから、一緒にラウンドしていて、とても回りやすかった。さっきも少し話したけど、2人とも「目標に真っすぐ」とシンプルに考えているから、迷いがなくて、決断が早い。リズムがいつも一定だから、自然と距離感も合ってくるんだよね。

金谷:僕がゴルフで一番大事だと思っているのは、いかに縦の距離感を揃えるか、なんです。田村さんはそれが抜群に上手くて、自分が落としたい場所に、ピンポイントで正確に狙える技術が凄い。

田村:ゴルフは飛ばし合いじゃなくて、“的当てゲーム”だというのが、僕の考え。アイアンもアプローチも、真上からダンクシュートで、カップに入れるイメージ。逆に、金谷くんの素晴らしいところは、スウィングのスピードがどの番手でも変わらないこと。スピードが揃うと、縦の距離感を合わせやすくなって、的当てゲームができるんです。金谷くんは、たとえば8番アイアンだと短いけど、7番では大きい、という距離感が残ったときはどう対処している?

金谷:短い番手を持つことはまずないですね。大きめのクラブを選択します。

田村:僕もまったく同じ。短い番手で届かせようとすると、スウィングのリズムやスピードが早くなるし、ロフトを立てて打つなんていう、余計な細工も必要になる。

金谷:大きい番手を持って、普段よりゆっくり振る意識で、距離を調節しています。田村さんはどうしていますか?

田村:アドレスで左足を少し後ろに引いて構える。トップがコンパクトになるから、自然と距離が落ちるよね。リズムやスピードは変えずに振れるからシンプルなんだ。

“真っすぐ”を追求してもらいたい!

田村:このまま、“真っすぐ”を追求して欲しいけど、やっぱりもっと飛ばしたい?

金谷:ハイ。どうしたら飛距離をもっと伸ばせるかが、今の一番の課題です。

田村:でも、それには当然リスクも伴う。ヘッドを返したり、体重移動は伸ばせるけど、そのぶん最大の武器である縦の距離感が犠牲になり、正確性も損なわれる恐れがある。どっちを取るか悩ましいところだけど、自分の強みをしっかりと持って、“軸”をブラさないことが大事だと思いますよ。

金谷:ハイ、頑張ります!

画像: 田村プロも長くアマチュアで活躍しただけに、金谷くんの気持ちがよくわかる。対談は大盛り上がりで幕を閉じた(撮影は2016年1月)

田村プロも長くアマチュアで活躍しただけに、金谷くんの気持ちがよくわかる。対談は大盛り上がりで幕を閉じた(撮影は2016年1月)

アマチュアの大器・金谷拓実くんに、今後も注目したい。

写真/姉崎正、渡辺塁

(週刊ゴルフダイジェスト2016年1/26号より)

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