開催中の「TOTOジャパンクラシック」。日米女子ツアーの共催とあって、多くの米女子ツアー選手が参戦。そんな中、スウィングコンサルタントの吉田洋一郎が注目するのは2016年のワールドレディスサロンパスカップで来日し、見事に優勝を果たしたレクシー・トンプソンだ。アジア勢が上位を占める米女子ツアーで孤軍奮闘のアメリカ人は、今シーズン20戦で予選落ちがわずかに1回のみ。そして、迎える日本勢の中で期待したいのが、最近急激に飛距離を伸ばした葭葉ルミ。飛ばし屋である二人のスウィングの特徴を吉田洋一郎が現地から生レポートする。

「男の子には負けたくない」という思いで、レクシーは飛距離を伸ばした

レクシーの長所はなんといっても270ヤードを超えるドライバーショット。そして、その飛ばしの秘訣はずばり下半身の使い方にあります。ダウンスウィングで地面をグッと踏み込み、その反動を使ってヘッドスピードを加速させる打ち方をしています。これはいわゆる「地面反力」を使った打ち方で、結果インパクトで左足が浮き上がるような特徴的な動きが見られます。

画像: 左足が浮き上がるように踏込み「地面反力」を使うレクシー・トンプソン。平均飛距離は約274ヤードで、ツアー3位だ

左足が浮き上がるように踏込み「地面反力」を使うレクシー・トンプソン。平均飛距離は約274ヤードで、ツアー3位だ

8歳からレクシーの指導を行うジム・マクリーンは、この動きは彼女のスウィングにとってとても重要なピースだと語っています。

「私が彼女のティーチングをする前から、インパクトで下半身が伸び上がる動きはみられました。通常のティーチングではショットの安定性を考えて修正をする場合もありますが、彼女の武器(飛距離)を奪いたくなかったので、そのまま活かすことにしたのです」

インパクトでひざが伸びるように地面を蹴る動きは、筋力が少なく自分の力でヘッドスピードを上げることができない、ジュニアに多くみられます。ジュニアは重たいクラブを振る中で、クラブを速く振るための動きを自然と模索していきます。

結果、手に力を入れて思い切り振るよりも、地面を蹴ってそれを回転に変えたほうが、クラブが速く動くことに気が付くのです。特に飛ばしに貪欲なプレーヤーほどその傾向が強くみられます。

「レクシーの兄もゴルファーで、ジュニアの頃よく一緒にラウンドをしていました。そのとき男の子に負けない距離を出すために身に付けたのが、地面反力を使ったスウィングだったのだと思います」
レクシーは長所を伸ばしてスウィングを設計していった結果、米ツアー屈指の飛ばし屋になることができたのです。

マスコットバットでの素振りが葭葉ルミを飛ばし屋に変えた

レクシーに飛距離で勝るとも劣らないのが、昨年より急激に飛距離を伸ばしている葭葉ルミです。今年行われた全米女子オープンでは、4日間の平均飛距離ランキングで出場選手全体のトップの数字(256.5ヤード)を記録しました。

両者とも飛ばし屋ですが、スウィングのタイプはまったく異なります。レクシーが左足で地面を押すことで生まれた縦方向の地面反力を使うのに対し、葭葉は右足で地面を蹴ることで垂直軸に対する体の回転で飛ばします。

画像: 右足を地面に押し込むように粘らせながら蹴る葭葉ルミ。日本ツアーで唯一平均260ヤード飛ばす“飛距離女王”だ

右足を地面に押し込むように粘らせながら蹴る葭葉ルミ。日本ツアーで唯一平均260ヤード飛ばす“飛距離女王”だ

「昨年まで飛距離アップに関して取り組んだことがなかったのですが、クラブメーカーが変わるタイミングでスイングも飛ばし仕様にしてみようと思ったのがきっかけです」(葭葉)

そこで葭葉が始めたのが、マスコットバットによる素振りでした。

「オフシーズンにゴルフ用の軽いバットをかなり振り込みました。バットを振るときはボールがあると思って本気で素振りをしましたね。その時に右足を地面に押し込むように粘らせながら蹴ることで速く振れるようになりました。」

葭葉のトップは大きく、右サイドが伸びあがった状態で、振り遅れを助長しかねない形です。しかし、この動きによって上に向かった力が、今度はダウンスイングで地面へ向かい、右足を強く踏み込む原動力となることで、体の回転を速めてヘッドを走らせるのです。

レクシーと葭葉。スウィングのタイプは全く異なりますが、両者とも足りない部分を補うために試行錯誤したことで、型にはまらない自分の力を最大化できるスウィングに行きつくことができました。
今週はそんな二人の日米飛ばし屋対決にも注目です。

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