「HEIWA・PGMチャンピオンシップ」で2017年シーズン3勝目を挙げ、賞金王レースのトップに立ったチャン・キム。188センチの長身から繰り出される300ヤード超の飛距離が武器だが、実は知る人ぞ知るツアー屈指のアプローチ名人でもある。そんな飛ばし屋の隠れた武器を、スウィングコンサルタントの吉田洋一郎が紐解く。

高さで止めるか、スピンで止めるか

私が「アプローチが上手いプロ」と言われて真っ先に思いつくのが田島創志プロです。以前一緒に練習をさせてもらっていた事もあり、よく近くでプレーを見ていたのですが、とにかくスピンコントロールが上手い。「ここからじゃ寄らないでしょ」というようなシチュエーションからでもピンそばに止めてきます。アプローチの技術に関して、ツアーでもとても評価の高かった選手と言えるでしょう。

そんな田島プロは、現在JGTOのコースセッティングアドバイザーを務め、各トーナメントでカップを切るなどプレーヤーの視点を活かして大会の運営に関わっています。

そんなトーナメントのコースとそこでプレーする選手を知り尽くす田島プロが、今、もっともアプローチの上手い選手として名前を挙げたのがチャン・キムでした。

画像: 田島創志がツアーいちの小技巧者に挙げたのは、ツアー随一の飛ばし屋、チャン・キムだった

田島創志がツアーいちの小技巧者に挙げたのは、ツアー随一の飛ばし屋、チャン・キムだった

「チャン・キムは僕と同じで、高さではなくスピン量で距離感を調整するタイプの選手。結構難しいシチュエーションからでもしっかりと寄せてくる。技術レベルはかなり高いと思います」(田島)

高さで止めるタイプの選手は攻略法が限られます。たとえばカップが下り傾斜に切られていて高さで止めたいとき、ボールが木の下にあると「上が使えない」状態になり、寄せるのが難しくなります。

画像: ボールリフティングが得意で手先が器用なキム

ボールリフティングが得意で手先が器用なキム

一方、田島プロやチャン・キムのようにスピンで距離感を調整するタイプの選手は、深いラフなどではない限り状況に左右されることはありません。ただ技術的にはとても難しい打ち方を要求されます。

田島プロの場合、どのくらいランを出したいかや、その時のライに応じてインパクトで手元を止めたり、急激にフェースを返したりしてコントロールしていましたが、まさに職人技。プロでもすぐにマネできるものではありません。

「激スピン」を生み出すゆったりストローク

スピンをかけるというと、田島プロのようにインパクトで特殊な動きをするイメージがありますが、チャン・キムのアプローチはこれとは正反対です。どんなことを意識しているのか本人に聞いてみました。

「スピンをかけるためにフェースとボールができるだけ長い間くっつけていることが理想です。インパクトでボールがフェースからすぐに離れてしまうとバックスピンはかからないんです。だから僕はなるべくヘッドをゆっくり動かして、ボールがフェースから離れないようにしています」(キム)

強いインパクトをイメージすると距離感にバラつきが出たり、ライに影響されてゆるんでしまうなどのミスのリスクもあります。

「ただゆっくり振ると距離が落ちるので、その分スウィングアークは大きくしています。大きくゆっくりが僕のアプローチの基本ですね」(キム)

画像: 「大きくゆっくり」振るのがアプローチの基本だというキム

「大きくゆっくり」振るのがアプローチの基本だというキム

その上で、さらにスピンをかけたいときはクラブの入射角を変えるという。

「スピン量が必要な時はクラブの入射角をよりなだらかにします。そうする事でインパクトゾーンが長くなって、よりボールとの接触時間が長くなるのです」(キム)

クラブの使い方もボールとフェース面の接触時間を長くするため、60度のロブウェッジをフェースを開いたままローテーションも極力抑えて振り抜いています。腕の動きを極力抑えて、アウトサイドインの軌道で、左腰を回してクラブを動かしていきます。

ショットでもフェードヒッターであるチャン・キム。アプローチと打ち方をそろえる事で、体の動かし方をシンプルにして、再現性を高めているのです。

「プロが厄介だなって思うのは、速いグリーンよりも硬いグリーンなんです」と語るのは前出の田島プロです。

「硬いグリーンはどんなに高さを出してもボールが跳ねてしまって止まりにくい。一方スピンで止める方法なら、スピン量を増やせば硬くても止める事ができます」(田島)

これからの時期、空気は乾燥し風も強くなります。そうするとグリーンはどんどん硬い状態になります。富士山からの吹き下ろしが強い御殿場や、風の強い宮崎や高知など、硬いグリーンが想定されるツアー終盤戦にチャン・キムのスピンで止めるアプローチは大きな武器になるでしょう。

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