上手いだけでなく強いゴルファーになるためには、普段から感覚を磨く練習をすることだと倉本昌弘は語る。PGA(日本プロゴルフ協会)会長を務めるレジェンドが書いた本「本番に強くなるゴルフ」から、“強いゴルファー”になる方法をご紹介しよう。

感覚を磨く訓練が強いゴルファーを作る

たとえば、小さな子どもが歩き始めたとします。でも、何も考えずによちよち歩いているから、何かにつまずいて転ぶ。それが転ばなくなるのはどうしてかというと、かつて転んだのと同じような状況に出会ったとき、その転んだ経験によって得られた情報から、危険を察知する(確認する)からです。こういうときは転びやすい。だから転ぶのを避けるためにゆっくり歩こうとか、足を高く上げようとする。その経験を積むことで、やがて転ばなくなるのです。つまり、転ばないようになるためには、実際に転んで、転ぶ状況を確認して、それを避けるという経験を脳にインプットすることが大事なわけです。この確認作業がないと、いつまでも転ぶ。ゴルフの練習も同じです。

上手く当てたい。曲げたくない。飛ばしたい。そういう不安や恐怖が出てくるとスウィングが完結できずにミスをします。だから、そういうミスを避けるために、ルーティンを確立して感情を出にくくし、たとえ感情が出てきてもスウィングを完結することでミスが減らせるという経験を積む。そうすれば、本番でもミスが出にくくなるわけです。ところが、ほとんどのアマチュアは、心が原因で犯したミスに対して、それを克服するための練習をしていません。そして、心が出てきてもミスをしなかったという経験をしていない。

練習場では、同じクラブを使い、同じところを狙って、たくさん球を打ってしまう。そうすると、徐々に不安や恐怖がなくなるからいい球が出る。でも、脳には何の経験もインプットされていない。だから、本番で感情が生まれたときにミスをする。確認作業がされていないので、いつまでも転ぶのです。不安や恐怖がない、つまり、何の障害もない状況で練習しても、本番では役に立ちません。強い、と言われないゴルファーは、そういう下手な練習をしている可能性が高いのです。

画像: 同じカップを狙ってたくさん打てば寄るのは当たり前

同じカップを狙ってたくさん打てば寄るのは当たり前

たとえば、パッティングの練習をするとき、同じカップを狙って100個のボールを打ち続けても、感覚を磨くという意味では、あまり効果がありません。同じ景色、同じ距離からたくさん打っていれば、そのうち誰でもカップに寄るし入るようになるからです。でも、それは確認作業がされていないから脳には何も残らない。だから、次の日コースに出ると、距離感も合わないし、入らないということになる。

そんな練習はパターマットじゃできないという人がいるかもしれません。でも、それなら1球ごとにカップの右ふちから入れる、左ふちから入れる、手前に止める、カップの向こう側にぶつけて入れるなど、自分なりに工夫すればいいのです。

もちろん、体の動きを直すときなどは、同じところを狙ってたくさん打っても構いません。こういう体の動きを直す練習(技術を磨く練習)と感覚を磨く練習は分けて考えなくてはいけないのです。大事なのは、感覚を磨く練習をしておかないと本番に強いプレーはできないということ。それが本番に強いゴルファーになるヒントだということなのです。

「本番に強くなるゴルフ」(ゴルフダイジェスト新書)より

写真/岩井基剛

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