ヘッドスピードが速い人は硬いシャフト。遅い人は軟らかいシャフト。これは、ゴルファーなら誰もが認識する、いわば“常識”だ。しかし、その常識は、本当に正しいのだろうか? ギアライターが、ちょっとマニアックに考察した。

ドライバーが、なぜセットの中で最も軟らかいシャフトなのか? という疑問。

ヘッドスピードが速い人と遅い人、硬いシャフトが合うのはどちら? と問われたら、ほとんどの人が“ヘッドスピードが速い人”と即答するだろう。では、キャディバッグに入っているウェッジとドライバー、どちらのシャフトが硬い? と問われたらどうだろうか?

答え。ヘッドスピード的には、ドライバーの方が圧倒的に速いが、シャフト硬さの指標となる振動数を測ってみると、一般的なウェッジの振動数は、350cpm程度。ドライバー(SR相当)は、250cpm程度となる。シャフトは硬いほど細かく震えるため、振動数の数値は大きくなる。つまり、速く振るドライバーよりも、コントロールショットで使うウェッジの方が断然硬い! のが、現在主流のゴルフクラブの在り方なのである。

これっておかしくない!? と、一部のゴルフ好きの間で密かな実験が進められている。テーマとしては、ドライバーとウェッジのシャフト硬度を揃えてみたらどうだろうということ。もちろん、ドライバーのシャフト硬度をググッと上げていく方向での取り組みだ。

画像: 独自のオートクレーブ製法によって研磨工程なく、無塗装で精密シャフトを作れるセブンドリーマーズ。塗装の有無は軽量化にも大きな影響を与える

独自のオートクレーブ製法によって研磨工程なく、無塗装で精密シャフトを作れるセブンドリーマーズ。塗装の有無は軽量化にも大きな影響を与える

この考え方は、シャフトメーカーの「セブンドリーマーズ」でも取り入れられており、同社ではフィッティング結果によっては、シャフト硬度350cpm以上のドライバーシャフトをオーダーメイドすることも珍しくないという。

硬度350cpmは、前述したとおり一般的なウェッジ相当の振動数である。従来、硬さは重さとなり、硬いシャフトは重量級であることが当たり前だったが、同社では独自の製法によって余分な接着樹脂を残存させることなく無塗装で仕上げることで、“軽く・硬い”という二律背反の壁を打ち破っている。

さらにFSP社では「NORM(ノーム)」という、同じく硬度350cpm以上となるウッドシャフトを限定的に2017年秋から発売している。こうした超硬いシャフトが生まれる背景には、どんどん軽く、長く、軟らかく、セットの中で“浮いた”存在となってしまった最新ドライバーへの危惧、疑問があるのである。

画像: 現在のところ、販売店舗を限定して展開されているFSPの「NORM(ノーム)」

現在のところ、販売店舗を限定して展開されているFSPの「NORM(ノーム)」

超軽量ならば、女性でも硬さXシャフトが意外と打ててしまう。

筆者もこの2年ほど、ドライバーほど硬く、ウェッジにいくに従いなだらかに軟らかくなるセッティングを自分で作り、試行錯誤する“実験”を続けているが、その中でうっすらと見えてきたのは、シャフトの硬さとは振りやすさに通じるかもしれないということだ。 

簡単にいうと、長く、軟らかいシャフトを、短く、硬いシャフトに代えてみると同重量のヘッドならば、後者の方が圧倒的に軽く感じやすくなる。この軽さは人によっては、振りやすさとなるようである。そして、これも人によるが、硬い方が自分のタイミングでインパクトを作りやすくなる。クラブに自分を合わせる努力がいらなくなるといえばいいだろうか。

先日も、フジクラシャフトの「プラチナム・スピーダー」を使って女性用の実験クラブを作ってみた。シャフトの硬度は4X表記で、振動数270cpm(43.75インチ/先端カット1インチ)である。振動数270cpmは、一般的なウェッジの振動数と比べるとまったく軟らかい。つまり、硬度Xだが、この実験においては男性用とはいえず、むしろ女性用としてピッタリの予感がしたのである。

女性用のドライバーシャフト(硬度L)の振動数は、230cpm以下が普通。振動数270cpmでも異次元の硬さになる。ちなみにシャフトの重さは51.5グラム。軽量でしっかり硬い、いわゆる「軽・硬」仕様だ。素材革新、技術の進歩によって、硬い=重いは常識ではなくなり、女性でも硬いシャフトが試せるようになっている。それが今なのだ。

画像: 高弾性90トンカーボンを全長に使い、硬度Xで51.5グラムと超軽量のフジクラ「プラチナム スピーダー」。本来は長尺に向いているが、実験クラブではあえて短尺で使用

高弾性90トンカーボンを全長に使い、硬度Xで51.5グラムと超軽量のフジクラ「プラチナム スピーダー」。本来は長尺に向いているが、実験クラブではあえて短尺で使用

さて、試打結果はどうだったか? 体験者はまだまだ少ないものの、打った女性ゴルファーの評価はすこぶる高い。「軽くて振りやすい」「当たりやすい」というのがポジティブ意見の筆頭だが、これについて一般女性ゴルファーへのレッスン経験も豊富なプロゴルファー中井学はこういう。

「この結果はとくに驚くべきことではありません。私自身、レッスンの一環として女性ゴルファーに男性用Rシャフトのクラブを打ってもらうこともありますが、総じてミート率が上がり、軟らかい女性用のLやAシャフトより安定した好結果が出ます。振りにくいなどというネガティブな反応もないですよ」(中井)

さらなる飛びを追い求めた結果、ドライバーのシャフトは長く、軽く、しなり、そして大きく動くようになっていった。それもゴルファーニーズを満たす一つの道であると思う。しかし、それではなんとなくうまく打てない、と感じているゴルファーも増えているように感じる。

ならば、短く、軽く、硬い方向に進んでみるのも一つの道ではないか。ドライバーをキャディバッグの中で浮いた存在にしない。そうすることで見えてくる世界、開けていく道があると思う。違う道が複数あってこその“選択肢”。新しい道作りが、密かに始まっている!?

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