「上りのパットを残す」のはスコアメークの基本のキ。しかし、パットを専門的に研究する星谷孝幸氏は、必ずしも上りのパットがやさしいとは限らないと警鐘を鳴らす。パットに対しての考え方がガラリと変わる法則を、著書「入っちゃう!パットの法則」からご紹介。

上りのパットはやさしいとは限らない

3パットを防ぐにはセカンドパットで真っすぐな上りのパットを残すようにするのはセオリー。ただ、その場合の上りと言うのは、1メートル以内の短いパットの話。バーディを狙いたくなるような5メートルくらいの距離では、ちょっと話が変わってきます。

実は、私自身かつてパットが苦手だった頃、上りのほうが入る確率が高かったわけではありませんでした。そこで研究してみると、実は上りのパットにも難しい点がいろいろあるということがわかってきたのです。

パットというのは、打った直後、つまり初速が一番速く、そこからどんどん減速していきます。上りのパットはこの「減速率」とでもいうべきものが大きく、芝目やちょっとした左右の傾斜にも影響され、方向性が悪くなる傾向があります。

また、ダウンブローにヘッドが入りやすく、地面に対してボールをめり込ませるような動きになるため、初速が落ちて転がり、方向性が悪くなるのはもちろん、ますます芝目などに左右されやすくなるのです。

一方下りは、基本的には上りと逆です。インパクト後からの減速率は緩やかなので、カップ際で芝目などの影響が小さく、変に切れることは少ない。また、インパクトではアッパーブローに打ちやすいので、スムーズな順回転のボールが打ちやすくなり、ますます地面の影響を受けにくくなります。

また、気持ちがストロークに作用することもあります。

上りは「しっかり打たなきゃ」という気持ちになるので、必要以上にストロークが大きくなったり、インパクトでパンチが入ってしまうケースがありますが、そうなるとヘッドがブレるので、ますます確率が悪くなってしまいます。

画像: 上りの場合、ヘッドが地面に対して当たっていくように動きやすいので、地面の摩擦抵抗を受けやすく、転がりが悪くなる。インパクト以降、左ひじを引き上げるようにするなど、アッパー軌道を強めると転がりがいいボールが打てる

上りの場合、ヘッドが地面に対して当たっていくように動きやすいので、地面の摩擦抵抗を受けやすく、転がりが悪くなる。インパクト以降、左ひじを引き上げるようにするなど、アッパー軌道を強めると転がりがいいボールが打てる

対して下りは、狙ったラインにボールを転がしてあげるだけでいい。後は重力によってボールは進んでくれるので、ストロークは小さくていいですし、ヘッドのブレも小さくて済みます。

下りはラインにスッと乗せてあげればいいのに対し、上りは自ら「出力」して打たなければならない。プレッシャーで手が動きにくいときには、ますます上りは難しいということになります。

減速率が大きい下りのパットやグリーンが重い状態のときは、前に述べたとおりストローク幅で調整するのではなく、リズムを変化させてストロークしましょう。上りでは速く、下りではゆっくりに。変えるのは始動のスピードです。

上りの場合、始動を速くすると反作用で切り返しも速くなり、インパクトの出力が上がります。また、速くすることでヘッドの慣性力が上がるので、軌道やフェースのブレが小さくなります。振り幅はそのままでもスピードを変えれば、強く正確に転がってくれるのです。下りの場合は、逆にゆっくりすることでインパクトが強くなることを防ぐので、狙ったところに転がし出すことだけに集中しましょう。

「入っちゃう! パットの法則」(ゴルフダイジェスト新書)より

写真/有原裕晶

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