松山英樹が欠場、タイガー・ウッズが予選落ちしたジェネシスオープンで、話題をさらったのは2年ぶりの優勝となったバッバ・ワトソンだった。見事に復活を遂げたPGAツアー屈指の飛ばし屋に起きた変化を、ゴルフスイングコンサルタントの吉田洋一郎が解説する。

飛ばしの原動力

これまでツアー通算9勝を挙げ、PGAツアー屈指の飛ばし屋としても認知度の高いバッバ・ワトソンですが、ここ2年はツアー優勝から遠ざかっていました。体調不良を起こして体重が10キロ近くも減って、一時は「引退も考えた」(ワトソン)という状態にまで陥っていたといいます。

飛距離を武器にする選手が、加齢とともに成績を落としてしまうことはよくあります。ワトソンもPGAツアーではドライバーの平均飛距離は常にトップクラスでしたが、昨年は20位まで順位を落としています。しかし飛距離の低下は体調不良によるものだったことを、今回の優勝が証明した形となりました。

ワトソンのスウィングはかなり変則的な動きと言えますが、その中でも最大の特徴は、フィニッシュでつま先が目標方向に向くほど動く右足(前足)にあります。この右足が伸びて、時には跳ねるように動くのは、地面を強く踏んだことによる副作用的な動きです。

ワトソンはテークバックで右足をヒールアップさせ、ダウンスウィングで上げたかかとを強く踏み込みます。踏み込みを行った事で右足に地面から反動の力(=地面反力)が伝わり、右サイドが伸び上がる動きが発生します。この動きが右肩を上げ左肩を下げる縦の回転となり、高速に上半身を回す事ができるのです。

画像: テークバックでヒールアップし、フィニッシュでつま先が目標へ向くのがワトソンのスウィングだ(写真:2016年AT&Tぺブルビーチ)

テークバックでヒールアップし、フィニッシュでつま先が目標へ向くのがワトソンのスウィングだ(写真:2016年AT&Tぺブルビーチ)

つまりは肩を回すために強くかかとを踏み込んでいるのですが、踏み込みの力がとても強いため地面反力が強すぎて、足が跳ねるように動いているのです。

右足の踏み込み量で、球筋をコントロールしている

昨年体調不良によって飛距離のアドバンテージを失ったことで、地面反力を使った飛ばしだけではなく、ボールコントロールという武器に磨きをかけてきました。ワトソンは元々ストレートボールをあまり打たず、持ち球のフェード、そしてドローや高低の球を巧みに駆使してコースを攻略するタイプのプレーヤーです。

最終日の9番ホール、441ヤードの打ち上げのパー4。飛距離が欲しいこの場面でワトソンは目いっぱいのスウィングをしました。強く踏み込んだ右足は大きな地面反力受けて、靴1個ぶん背中側に移動をするほどでした。

対照的にフェアウェイが右傾斜をしている打ち上げの軽い右ドックレッグの18番ホールでは、足の踏み込みを小さくし、フォローも手の位置を肩の少し上で止めるなどコントロール性を重視したスウィングを見せています。レフティでフェードヒッターのワトソンは、右ドックレッグで右傾斜のコースを攻める場合、フェアウェイの左サイドにボールを落とす必要がありました。

コンパクトなショットから繰り出されたボールは見事にフェアウェイの左サイドに着地し、苦悩したワトソンに2年ぶりの優勝をもたらしました。

優勝したジェネシスオープンのアイアンショットの写真を見てみましょう。踏み込みを抑えてフィニッシュを小さくする動きが見られました。ヘッドの走りを抑える事で方向性をより出しやすくなり正確性を上げているのだと思われます。

画像: ドライバーの写真と見比べると下半身の動きは落ち着いていて右足つま先のずれもずれる幅も少ない

ドライバーの写真と見比べると下半身の動きは落ち着いていて右足つま先のずれもずれる幅も少ない

飛距離と方向性を兼ね備え、スランプを経験してベテランの域に達したワトソン。過去2勝を挙げているマスターズに向けて視界は良好です。

写真/有原裕晶、田辺安啓、姉崎正

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