2010年に宮里藍が勝っている米女子ツアーのホンダLPGAタイランドでジェシカ・コルダが2年ぶりの優勝を飾った。初日から後続に影を踏ませず大会最少ストローク記録の通算25アンダーで完全V。その裏で彼女は壮絶な大手術を乗り越えていた。

コルダを見て「あれ?」と思った。別人とまではいかないがずいぶん雰囲気が変わっていたからだ。その理由はオフに行った大手術にあった。もともとコルダは顎が狭く噛み合わせは極端に上の歯が下の歯に被さる深刻なオーバーバイト(被蓋咬合)。

慢性的な頭痛がまさか噛み合わせの問題だとは思っていなかったが、次第に顔面の痙攣に悩まされるようになり手術を決意する。

ところがそれはただ噛み合わせを矯正するというような生易しいものではなかった。施術法を聞いただけで身が縮むほどだ。

根本的な顎の位置を矯正するため主治医は彼女の鼻の骨を折り、続いて上顎の3カ所と下顎の2カ所の骨に亀裂を入れ、あるべき位置に顎を修正。27個のスクリューで止めて固定する大手術を敢行した。その後数週間固形物は摂れず母がスポイトで流動食をわずかに開く口の隙間から流し込まなければならなかった。

それでもコルダは前を向いていた。

「2011年にプロデビューしたホンダLPGAタイランドで復帰する」と。

術中、術後の苦痛は耐え難いものだったに違いない。その証拠に後続に4打差をつけツアー5勝目を挙げた今大会で「(手術のあと)こんなに早く結果が出ると思っていた?」という米ゴルフウィーク雑のベテラン記者ベス・A・ニコルズ女史の質問に思わず涙したコルダ。

画像: 美人プロとして知られるコレダ。鉄の精神力の持ち主であることも証明した(写真は2017年の全米女子オープン)

美人プロとして知られるコレダ。鉄の精神力の持ち主であることも証明した(写真は2017年の全米女子オープン)

「大会前はどんな結果を期待すれば良いのか、まったくわかりませんでした。これまでの優勝はすべて特別だけれど、今回ほどうれしいことはありません。オフシーズンの苦労がこんなに早く報われるなんて」

「まだ顔に痺れが残っている」というが、整った口元で満面の笑みを浮かべトロフィーを掲げたコルダは美しかった。

「自分の写真を見ても本当にこんな見た目なのだろうか、ってしっくりきていません。でも昔の写真を見ても同じ人間とは思えない。この顔に馴染むのはこれからですね」(米ゴルフウィーク報道)

昨年ツアーデビューし美形と評判の妹ネリーとともに今後のコルダ姉妹に注目だ。

写真/南しずか

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