国内女子ツアー第2戦「ヨコハマタイヤゴルフトーナメントPRGRレディスカップ」は鈴木愛とのプレーオフを制してアン・ソンジュが優勝を手にした。そのスウィングはそれぞれ個性的で、違いは一目瞭然……ながら「実は共通点もあるんです」とプロゴルファー・中村修は言う。二人の女子プロの違いと共通点は、果たしてどこにあるのだろうか?

トップまでは、全然動きが違う!

アン・ソンジュ選手と鈴木愛選手。どちらも女子ツアー屈指の実力者ですが、今回初めてじっくりと両者のスウィングを見比べてみて、「こんなに違うのか!」と思わず声が出てしまうほど、異なっていました。

まずは、画像1のアドレスを比較した写真をみてください。写真左のアン・ソンジュ選手は、骨盤を前傾させず、手元が低く、背中が丸まったように見えるアドレス。それに対し、鈴木愛選手は骨盤を前傾させ、手元を高く背筋を真っすぐ伸ばした大きな構えです。

アドレスはスウィングの基本中の基本ですから、この段階で、両者のスウィングが大きく異なることが予感されます。

画像: 画像1:手元を低く背中を丸めて構えるアン(写真左)と背筋を伸ばし大きく構える鈴木(写真右)(写真は2017年)

画像1:手元を低く背中を丸めて構えるアン(写真左)と背筋を伸ばし大きく構える鈴木(写真右)(写真は2017年)

そうはいっても、アドレスは「見る人が見れば違いがわかる」といったところかもしれません。しかしテークバックはもう「誰が見ても違いがわかる」レベルになります。画像2を見てください。

画像: 画像2:テークバックでクラブを縦に上げるアン(左)とインサイドに引く鈴木(写真右)

画像2:テークバックでクラブを縦に上げるアン(左)とインサイドに引く鈴木(写真右)

一言で言って、アン選手はクラブを「縦」に、鈴木選手は「インサイド」に上げています。アン選手は手首のコックを積極的に使い、カナヅチで叩くようにボールにパワーを伝えるイメージ。鈴木選手は体の回転でエネルギーを生み出すイメージが見て取れます。

これだけクラブを上げる方向が違うのに、下半身を見比べると、両者の動きは驚くほど似ているのも興味深い点。

画像: 画像3:トップが高い位置に収まるアン(写真左)と低い位置に収まる鈴木(写真右)

画像3:トップが高い位置に収まるアン(写真左)と低い位置に収まる鈴木(写真右)

画像3のトップでは、腕の位置に注目してください。アン選手はテークバックのまま縦方向の高い位置、鈴木選手は低い位置にトップが収まっています。前者は体を縦にねじり、後者は体を横にねじる。どちらも体幹がしっかりとねじられていますが、その方向は大きく違うんです。

切り返し以降のクラブの動きは衝撃的なほど似ている

驚くべきはここからです。画像4を見てください。インパクト直前のハーウェイダウンの瞬間を比較してみると、なんとほぼ同じ形となっているのです。実はこの両者、バックスウィングでのクラブと体の動きに大きな違いが見られましたが、ダウンスウィングのクラブと体の動きは非常に近いものがあるんです。

画像: 画像4:ドンピシャで同じ格好のダウンスウィングに入るアン(写真左)と鈴木(写真右)

画像4:ドンピシャで同じ格好のダウンスウィングに入るアン(写真左)と鈴木(写真右)

次にインパクトの画像を見てみよう。アンの方がヘッドの位置が30センチほど先行しているため、右腕の曲がり度合いにがわずかに差はあるが、シャフトの傾き、背中の筋肉の使い方もほぼ同じ。唯一の違いは、右足に体重を残しながら振り抜くアン選手に対し、左へ体重を移動していくタイプの鈴木選手の右足のかかとが、アン選手に比べて多く浮くことくらいと言えます。はっきり言って、似ています。

画像: 画像5:インパクトの形も瓜二つのアン(写真左)と鈴木(写真右)

画像5:インパクトの形も瓜二つのアン(写真左)と鈴木(写真右)

両者のスウィングを見比べたとき、どちらが個性的かと問われれば、鈴木選手のほうが個性的。練習の虫として知られるだけに、圧倒的な練習量によって磨かれたスウィングと言えます。とはいえ、アン選手のスウィングが教科書通りかといえば、そんなこともない。

一方で、ダウンスウィングのカタチは両者とも惚れ惚れするほど見事なもの。ゴルフスウィングでボールの行方に実際に影響するのはインパクト前後のヘッドの動き“のみ”であることを考えれば、両者のスウィングはカタチは違えど両方ベリーグッドです。つまり、スウィングで大切なのは切り返し以降の動き。そして、結果としてクラブのエネルギーを効率よくボールに伝えられるインパクトをすることです。

ティグラウンドや練習場で、アマチュアの方が自分のテークバックの形を細かく気にする姿をよく見ます。しかし、極論を言えば、ダウンスウィングの軌道さえ良ければ、バックスウィングはどこに上がってもいいんです。

ただし、条件は、手でクラブを上げるのではなく、体をしっかりとねじること。その上で、アン選手のように体を縦にねじるも良し。鈴木選手のように横にねじるのもまた良し。それさえできれば、テークバックに悩む必要は実はないんです。

写真/姉崎正、大澤進二

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