1950年代から名器と謳われてきたマグレガーのパーシモンドライバー「ターニーM85」はジャック・ニクラスやジャンボ尾崎など世界中のトッププロが使用したモデル。そんな逸品がマグレガー創業120周年を記念して、チタンヘッドの現代版として蘇るのだが、2018年4月10日から発売されるのはR&Aの適合外だという。高反発でもないのに適合外とはどういうことなのか。マグレガーの松下健氏に話を聞いた。

アイオーマティックの名を冠しているのに代替案は考えられなかった

まず、簡単に「適合」「適合外」の説明をしておこう。ゴルフクラブには長さやサイズその他、細かく定められた規則があり、メーカーはクラブが規則に適合であるかどうかを、ルールを統括する機関(R&A)に送り、認可を仰ぐ必要がある。

「ルール破りの高反発ドライバー!」といった宣伝文句のドライバーがあるが、そういったクラブは規則で定められた値より反発係数を高めることで、飛距離性能を高めている。ただし、そうなるとルール適合外になるため、競技では使用できず、エンジョイゴルフ専用となる。

「ターニーM85」の現代版「ターニークラシックM85 Eye-o-matic・Celebrating 120thドライバー」は、その名の通りマグレガー社の創業120周年記念モデル。競技ゴルフの世界で愛された歴史的名器の現代版だけに、競技ゴルフに対応している。つまり、高反発ではない。なのになぜ、適合外とみなされてしまったのか? マグレガーの松下健氏に聞いた。

みんなのゴルフダイジェスト編集部(以下、編集部):今回の記念クラブが適合外になってしまった経緯を教えてください。

松下健氏(以下、松下):ターニーM85はフェース中央のEye-o-matic(アイオーマティック。フェースの視認性を高める三段インサート)が特徴のクラブです。120周年モデルでは、このイメージに近づけるためにフェースの一部をIP(イオンプレーティング)加工して再現したのですが、(ルールを統括する)R&Aとしてはインパクトエリア全体が単一素材でなければいけないということで、適合外だと判断されてしまったんです。

IP加工はしていますが、フェース面は同一素材で作っています。それでも「IP加工のあるなしは素材の違いと認識する」との回答でした。

画像: これが120周年モデル。「eye-o-matic」を再現するため、フェース面をIP加工するなど、様々な工夫が凝らされている

これが120周年モデル。「eye-o-matic」を再現するため、フェース面をIP加工するなど、様々な工夫が凝らされている

編集部:その後適合させるのに色々試した?

松下:そうですね。代替案もいくつか考えていく中で、アイオーマティックの代わりになる形も模索しました。でもアイオーマティックをなくしてしまったら果たしてターニーM85をモデルにしたクラブと言えるのか、という根本的な話になって。

今回のモデル名「ターニークラシックM85 Eye-o-matic・Celebrating 120thドライバー」にもアイオーマティックと入っているのに、これがない代替案はこのモデルのコンセプトから外れてしまうと考えたんです。

編集部:それで適合外モデルとしてそのまま出すことを決めたんですね

松下:はい。結果、高反発じゃないけど適合外ということになってしまいました。珍しいですよね。でも、多くのゴルファーに愛されたモデルを現代版として送り出したいという気持ちが勝ちました。

というわけで、フェース面の加工という微妙な部分がルールに抵触すると判断されてしまったと言うのがことの経緯。松下氏曰く「COR(反発係数)以外のことで適合外と裁定されたのは初めて」とのこと。

このクラブ自体は120周年を記念した120本の限定品。また、泣く泣くフェース面を「ごく普通のシルバー一色」(松下氏)とすることで、適合外でなくなった適合モデルも6月を目途に発売されるそうだ。

一本のクラブが世に出るまでには、実に様々なドラマがあるものである。

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