PGAツアー初優勝を果たした小平智。その武器といえば、本人も「これでメシを食っている」というほど自信を持つドライバーショット。“世界”でもトップレベルであることを示したドライバーのスウィングを、プロゴルファー・中村修が解説する。

“精度”でもぎ取った初優勝

PGAツアー初優勝を果たした小平智選手。日本人史上5人目の快挙を成し遂げた背景には、精度の高いドライバーショットがあります。小平選手の優勝したRBCヘリテージでの平均飛距離は271.5ヤード。プレーオフを争ったキム・シウは287.0ヤードで、15ヤード以上の開きがあります。しかし、小平選手のフェアウェイキープ率が85.71%に対してシウは55.36%と、約30%も上回っていることがわかります。

まさに“精度”でもぎ取った初優勝と言っていいのではないでしょうか。早速、そのスウィングを見ていきましょう。

画像: RBCヘリテージでPGAツアー初優勝を遂げた小平(写真/Getty Images)

RBCヘリテージでPGAツアー初優勝を遂げた小平(写真/Getty Images)

まずはアドレスです。ドライバーショットの場合、体の軸をわずかに右に傾ける選手もいますが、小平選手の場合はどっしり真っすぐに立っています。

そして、右股関節にしっかりと体重を乗せながらトップへ向かいます。その際、右サイドに体重を乗せても右の腰が流れることはなく、バックスウィングのエネルギーをしっかりと受け止めることができています。

画像: 腰の約45度の回転に対し、肩は90度以上回されている。パンパンに膨れた右足太ももで、それにより生じたエネルギーを受け止めている(写真は2018年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

腰の約45度の回転に対し、肩は90度以上回されている。パンパンに膨れた右足太ももで、それにより生じたエネルギーを受け止めている(写真は2018年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

アドレスからバックスウィングにかけては、ベルトのラインと肩のラインに注目してみましょう。ベルトのバックルは約45度右を向き、それに対して肩のラインは90度以上回されているのがわかるでしょうか。飛ばしの源となる上半身と下半身の捻転差が作られていることが、このことからわかります。

ややコンパクトなトップながら、今にもインパクトに向かって切り返していこうとする躍動感が見て取れます。

小平選手のスウィングの最大の特徴は、切り返し以降、スウィング軸を右サイドに保ったまま振り抜いていくところです。右軸タイプのメリットはヘッドの入射角が浅くなりやすいこと。とくにドライバーショットでは、ティアップしたボールをアッパー軌道で打ちやすくなります。

画像: 切り返し以降右足を踏み込み、その反力を利用して腰の回転速度を上げている

切り返し以降右足を踏み込み、その反力を利用して腰の回転速度を上げている

そして切り返し以降、右のズボンのひざ部分にグッとシワがよっています。これは、それだけしっかりと右足で地面を踏み込んでいる証拠。次のコマでは、右脚全体で体の左サイドにジャンプするような動きをしていることがわかります。このように、地面を踏み込んだ反作用の力である“地面反力”を利用することで、腰の回転スピードを上げているんです。

小平選手は身長172センチと、日本人の中でも大柄とは言えません。大男がひしめくPGAツアーの中では、もっとも小柄な部類に入るでしょう。それでも、地面反力を利用してヘッドスピード、打出し角、スピン量が適正な、精度の高いドライバーショットを打つことを可能にしています。そして、それが“世界トップレベル”であることが、今回の優勝では証明されたのではないでしょうか。

連続写真は下記から。

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