日本ツアーとアジアンツアーの共催試合、パナソニックオープンはラヒル・ガンジー(インド)が優勝して幕を閉じた。今週、名古屋ゴルフ倶楽部和合コースで「中日クラウンズ」が開幕する日本男子ツアーの現状を、ゴルフスウィングコンサルタントの吉田洋一郎がレポートする。

石川遼が率先する意識改革

人気低迷が叫ばれて久しい日本男子ゴルフツアー。今年は石川遼がツアー復帰し、選手会長、JGTO副会長として先頭に立って人気回復に努めています。

画像: 子どもたちと交流する石川遼(写真は2018年のパナソニックオープン 撮影/大沢進二)

子どもたちと交流する石川遼(写真は2018年のパナソニックオープン 撮影/大沢進二)

「こんなにギャラリーがいて賑わっている光景を見るのは久しぶりだよ」

田島創志JGTO理事は石川が連日多くのギャラリーを引き連れている姿を見て感慨深げに語っていました。

石川はプロアマでラウンド後に最後まで熱心に参加者に指導を行ったり、多くのファンのサインに応じるなど率先してホスピタリティ向上に努めていました。それを若手選手が見習うことでギャラリーへの対応やプロアマ参加者へのホスピタリティ向上などの好循環が期待できると感じました。

PGAツアー流の観戦スタイルが無関心層を取り込む!?

パナソニックオープンでは17番ホール・パー3を「ザ・ギャラリーホール」として、DJブースを設置して実況解説などを行い、会場を盛り上げていました。

「17番はホールインワンやバーディーが出やすいセッティングにして盛り上げたい」

コースセッティングアドバイザーを務める田島創志JGTO理事が大会前に語っていた狙い通りに、バーディが出るたびに歓声が数ホール先にも聞こえ、盛り上がっている様子がうかがえました。

その光景を見てPGAツアーのフェニックスオープンを思い出しました。PGAツアー史上最多の約72万人を動員するフェニックスオープンでは、16番のパー3が3階建てのスタジアムに囲まれています。プロアマでは音楽をかけ、DJが盛り上げたり、選手がマイクパフォーマンスを見せたりと「ここはライブ会場か?」と思うほどの盛り上がりを見せます。スタジアムの建物内ではブースを貸し切っている団体やVIP席で観戦する人など多くの人たちが集っており、パーティ会場の様相でした。

画像: DJブースを見学する松山英樹(写真は2017年のフェニックスオープン、撮影/吉田洋一郎)

DJブースを見学する松山英樹(写真は2017年のフェニックスオープン、撮影/吉田洋一郎)

そのため、選手がプレーしていても会場が静かになることはなく、グリーンを外せばヤジが飛ぶなど、とてもゴルフトーナメントとは思えない状況でした。実際、ゴルフを見に来るというよりもパーティのついでにゴルフを見る感じの観客も多いと思います。

このような取り組みは本来のゴルフ観戦とはまったく違う、紳士のスポーツにふさわしくないという声もあるかもしれません。しかし、ゴルフに興味を持ったことがない若者やプレー経験のない人にゴルフ場に足を運んでもらうには非常に良い方法だと思います。

純粋に楽しいと思える場を提供し、「ゴルフってなかなか面白いかも」と思ってもらえる取り組みが増えていくことを期待したいと思います。

アジアンツアー選手と話して感じた、恵まれた日本ツアー

パナソニックオープン会場では約40人のアジアンツアー選手と話をしたのですが、彼らと話してみて驚いたのはみんな英語を話せるという事。英語が母国語ではないタイや台湾の選手たちも流暢な英語を話していました。彼らは見ず知らずの日本人が話しかけても嫌な顔をせず足を止めてインタビューに応じてくれました。

「とにかく寿司が好きなんだ。カレーとどっちが好きかって? 寿司だよ、寿司!」

パナソニックオープンで優勝したラヒル・ガンジー(インド)は食文化だけではなく、日本人の性質や文化、治安の良さにも好印象を持っているようでした。

画像: パナソニックオープンを制したラヒル・ガンジー

パナソニックオープンを制したラヒル・ガンジー

「日本のコースメンテナンスは素晴らしいよね。特にグリーンの転がりはアジアンツアーにはない素晴らしいものだね」

昨年アジアンツアー賞金ランキング4位のSSP.チャウラシア(インド)は日本のコースメンテナンスの素晴らしさをそう絶賛していました。

私たち日本人は、日本にいると自分たちがどれくらい恵まれているのかがわからなくなるものです。アジアンツアー選手たちは必要に迫られて英語を覚え、まっすぐ転がらないボコボコのグリーンで戦っているのです。

アジアンツアー選手のようにハングリー精神を持って戦えなどと古臭いことは言いません。プロゴルファーはゴルフのプレーで魅せるのは当然のこと。技術を磨き自己研鑽するのは当たり前のことです。その上で感謝の気持ちをもってファンや関係者に接することができれば、その技術の凄さをより多くの人に伝えることができると思います。

一人のスターに頼るのではなく、ツアーメンバー全員が一丸となって多くの人たちに支えられているということを自覚し、ファンに感謝の気持ちを表現して伝えていくことで人気が回復していくのではないかと思いました。

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