2018年シーズン、選手会長としてツアーを盛り上げている石川遼。“石川効果”でトーナメント中継の視聴率などは回復基調とあって、本人の優勝が待たれるところ。そんな石川が現在取り組んでいるスウィング改造を、ゴルフスウィングコンサルタントの吉田洋一郎が論ずる。

「寝かせる」か「立てる」か

今シーズン、石川遼は米国にとどまり下部ツアーに参戦してPGAツアーの出場権を狙うという方法もありましたが、国内ツアーを主戦場に選びました。「300ヤードで曲がらない球を打ちたい」ということを目的に、昨年から取り組むスウィング改造をしやすい環境を選んだというのが、大きな要因のひとつではないでしょうか。

復帰した日本ツアーでは、国内開幕戦の東建ホームメイトカップで2位と好スタートを切りました。スター性のある石川の人気は相変わらず高く、「賞金王を獲得したころの強い石川遼が復活か」と、大きく報じられましたが、その後の3試合は予選通過はするものの、トップ10フィニッシュは1度もありません。

画像: スウィングへの葛藤がスコアに表れていると吉田は指摘する(写真は2018年のパナソニックオープン 撮影/大澤進二)

スウィングへの葛藤がスコアに表れていると吉田は指摘する(写真は2018年のパナソニックオープン 撮影/大澤進二)

国内2戦目のパナソニックオープンでは、2日目、4日目を「66」でまわりスコアを縮めたものの、3日目には「76」を叩くなど、4日間の中でも大きなアップダウンがある状況です。大きくスコアを落としてしまった3日目のラウンドを、18ホールをついて見て分かったのはスウィングに対する葛藤でした。

石川は昨年のスウィングを「ダウンスウィングでクラブが立って下りてきて、それを寝かせる動きが出る」と自己分析していました。ダウンスウィングで「立ちすぎだ!」と感じたものを寝かせる動きは自然と入ってしまうもので、この動きが強すぎるとフェースが開き振り遅れ気味のインパクトになります。

画像: 開幕戦では極端にフラットな素振りを繰り返していた(撮影/三木崇徳)

開幕戦では極端にフラットな素振りを繰り返していた(撮影/三木崇徳)

そして今年は開幕から、極端にクラブを寝かせてフラットにクラブを下ろし、ハーフウェイダウンからヘッドを戻してくる素振りを頻繁に目にします。

私が見たパナソニックオープンの3日目では、右にプッシュスライスのOBが2発ありました。いずれも左からのアゲンストで距離が500ヤードの長いパー4での右へのミスです。ドライバーで飛距離が必要な場面、いわゆる「振りに行く」スウィングをすると、元の動きと変更中のスウィングが混ざってしまうようです。

今の石川の場合、プレッシャーがかかった時にインサイドから振り遅れて右に飛んでいく傾向があります。タイガーの復帰直後もそうでしたが、練習場でほぼ完ぺきにクラブを扱えていても、コースで、しかも試合中に同じ動きを再現できるかはまったく別の話です。石川は練習場ではある程度の精度で思い通りに振れていますが、試合ですべてをコントロールできるまでには至っていません。

「改造」しながら結果を残す難しさ

昨年、石川は1月と9月にスウィング改造を行っています。1月は持ち球をフェードに変える大改修、そして9月からは再び持ち球をドローに戻しています。

1月の際は「フェースローテーションを抑えて、手元を低くすることを意識した結果としてフェードになった」とコメントしていました。よりコントロール性を高めたいという意図があっての改造だったのでしょう。そして9月には「腰の不安がなくなり体が回るようになった」ことから、再びドローのスウィングに戻しています。この2つのスウィングのコンセプトは真逆に近いものです。

画像: 石川の2017年2月のザ・ホンダクラシック(左)と2018年4月の中日クラウンズ(右)でのダウンスウィング(撮影/姉崎正)

石川の2017年2月のザ・ホンダクラシック(左)と2018年4月の中日クラウンズ(右)でのダウンスウィング(撮影/姉崎正)

現在は、手元を低く保つためにインサイドから下ろしてそのまま打つ、という動きを意識しているようです。しかしプレッシャーがかかった場面でクラブをリリースできなかったり、下半身が目標方向に流れてドライバーの球筋が安定していません。

試合を行いながらこのように細かい動きを取り入れるのは、とても難しいことです。スウィングを固める時間がなく、目の前の結果を求めるあまり、元の動きが自然と出てしまうためです。それでも休みなく試合に出続け、しかも予選を通過しているのは天性の才能を持つ「石川遼」だからなせる業です。

スウィングを変えることはメリットもありますが、デメリットとなるリスクもはらんでいます。一般的にはスウィングを1つ変えると、その影響で3つ動きがズレるほど繊細なものです。そして外科手術をしてすぐに健康になることはないように、体に馴染むのにも時間を要します。「手元を低くすることや、シャフト数本分インサイドから下ろすこと」は石川の今後のキャリアにとって、絶対に取り組まなくてはならない技術的な課題なのか。一度スウィング構築の原点に立ち返ってみることも必要な気がします。

アメリカに行きさまざまな課題を見つけた石川。復活までの道のりは険しいものですが、天性の才能と人気を兼ね備えた石川遼の活躍はゴルフ界には必要不可欠だと思います。遠回りがあったとしても復活へ一歩一歩近づいて行ってほしいと思います。

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