今や正月の風物詩として定着している「箱根駅伝」。この成功例から学生ゴルフが学ぶべきこととは何だろうか。東京大学ゴルフ部監督として学生を指導するプロコーチ・井上透が考えた。

学生スポーツから日本を変える

現在、ゴルフに限らず、野球、サッカーなど多くの競技団体が競技人口の減少に頭を悩ませています。これは少子化の影響はもちろんありますが、ほとんどの競技で学生スポーツの魅力を伝える機会がほとんどないことも原因のひとつです。

そんな学生スポーツにとっては非常に厳しい状況の中で、唯一大きな露出に成功しているコンテンツがあります。それは東京箱根間往復大学駅伝競走(通称:箱根駅伝)です。既に国民的イベントとなった箱根駅伝は、1月2日、3日の2日間にわたって開催される大学駅伝の一つです。しかし、この一大イベントが関東地区のローカルの大会であることはご存知ない方も多いと思います。主催は関東学生陸上競技連盟なので、全国8地区ある陸上競技連盟のひとつです。

今年で94回を迎えた歴史ある箱根駅伝ですが、この地区ローカルの駅伝大会を、日本の正月の「国民的イベント」に押し上げた最大の要因は、1987年に全国ネットで日本テレビが箱根駅伝中継を完全ライブで始めた事がきっかけでした。これによって地方ローカルだった箱根駅伝が、一気に全国区になり国民的イベントに成長していくきっかけとなったのです。今では多くの中学、高校で陸上の長距離を目指す子供たちにとって憧れの舞台になっています。

画像: 第91回箱根駅伝で1位となった青山学院大学の優勝報告会の様子。選手たちを祝福するためにたくさんのギャラリーが集まっている

第91回箱根駅伝で1位となった青山学院大学の優勝報告会の様子。選手たちを祝福するためにたくさんのギャラリーが集まっている

私は箱根駅伝の成功をモデルにすることが、「学生ゴルフ」の裾野を広げ、ひいてはゴルフの魅力をより多くの人に知ってもらうきっかけになると考えています。ゴルフは子供から年配の方まで広く楽しむことのできるスポーツです。

自然の中で、他者とコミュニケーションをとりながら18ホールを回ること、それは、少々大げさですが、人生そのものと置き換えられるかもしれません。よくマラソンが人生に例えられますが、ゴルフにもそう言った側面があると思います。そして、医療技術や生活の質の向上により、「人生100年」と言われるようになった現代、もっと多くの人にゴルフを楽しんでもらうきっかけを作りたいのです。そのヒントを箱根駅伝に見出したいと思っています。

それでは箱根駅伝がなぜ魅力的なのかをいくつかの要素で考えてみましょう。それは「東京から箱根という馴染みのある場所での開催」「1年に1度のイベント」「若さ」「団体戦」「タスキを繋ぐ」「母校愛」「人間ドラマ」「ライブ配信」などでしょう。こうして挙げてみると、本当に多くの人を惹きつける要素を持っていると、改めて感じます。これらの要素を盛り込んだ学生ゴルフ版「箱根駅伝」ができれば少なからず、ゴルフの魅力を多くの人に伝える非常に良い機会になると考えています。

現状でこのコンテンツになりうる競技は、6月に開催される全国大学ゴルフ対抗戦、11月に開催される信夫杯争奪日本大学ゴルフ対抗戦 、または関東学生ゴルフ連盟の春と秋のリーグ戦でしょう。多くの方はまったくと言っていいほど聞いたこともなければ興味も持っていないかもしれません。しかし最初は箱根駅伝もそうだったように、本来そのスポーツが持つ魅力を、どのように伝えるかによって大きく変わるのです。

プロゴルフトーナメントやオリンピックだけがゴルフの魅力を伝える訳ではありません。高校野球が多くの人に愛されるように、ゴルフに限らず、学生がスポーツに真摯に取り組む姿は私たちの胸を熱くします。学生ゴルフをもっと多くの人に身近に感じてもらえる何らかのきっかけができることを、強く祈っています。そしてそれは、ゴルフのイメージを刷新できる可能性を秘めているのです。

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