ゴルファーにとって会員権を所持することは夢。しかし、いざ会員になると振る舞い方がわからない。ゴルフマナー研究家・鈴木康之の著書「ゴルファーのスピリット」からゴルフ倶楽部の会員についての心構えをご紹介。

先輩によろしく、新人によろしく

さる会社に勤める知人が、親父さんの権利を継承して、神奈川県のさる名門ゴルフ倶楽部に入会しました。それを聞き及んだ会社の上司、同僚、大学の同窓会に連れて行けと迫られました。元来仲間ゴルフしかしてこなかった彼、高齢者の多い名門コースに一人で行く気はおきず、仲間たちを順々に連れて行き、みんなから喜ばれました。

ある日の帰りしな、副支配人に「よく来られてコースにはもう慣れたでしょう」と声をかけられました。お愛想だと思った彼が「ええ、もうすっかり」と軽く答えると、副支配人はそこで本題ですがという顔になり「そろそろ倶楽部にも慣れてください」と言ったそうです。意味が分かりかねる顔をしていると、「せっかくここにご入会になったのですから、いろいろなメンバーさんとも回ってください」。

彼は「叱られちゃった」と私に話しました。あれから15年以上になりますが、その後はご無沙汰、彼がいいメンバーになったかどうか気になります。

さて、鷹之台カンツリー倶楽部でマナー・オリエンテーションという催しを拝見しました。名誉書記の音頭で数年前から始めた半年に一度の新入会員歓迎会です。各組に理事か委員が1、2名入る組み合わせになります。

画像: 千葉県にある鷹之台カンツリー倶楽部。日本オープンを何度も開催した名門コースだ

千葉県にある鷹之台カンツリー倶楽部。日本オープンを何度も開催した名門コースだ

スタート前に鷹之台のタイム・パーが説明されます。短いパー3は7分、長めのパー3は9分、パー4は13分、パー5は15分。プレーのペースの指標です。次のティへの移動が1分として、これでハーフがちょうど120分。

これより遅れないためのマナーが「ボクレパピ」です。ポケットにボールのスペアを持つ。クラブは数本持っていく。バンカーにレーキを持って入る。アプローチにはパターも持っていく。ピッチマークは人のものも直す。

先輩たちのお手本を見ながらの実践ラウンドになります。ゴルフはもう十何年もやっていながら、鷹之台の新人にとってはこれまでにやったことのない仕事もあります。やってみると理にかなっていて、なるほどと得心がいきます。そして、スピードで負けます。

役員たちはプレー巧者だし、すべての所作がさりげなく、手早く、実にマメです。鷹之台のいい話が聞け、打ち解けた仲になる。帰宅して名簿を見れば、お仕事でも「おお」と声の漏れるお方です。

さてパーティでは各組の成績、つまり所要した時間が発表されました。9組の平均は午前は緊張の中で2時間7分でしたが、午後は慣れて2時間3分に短縮されました。新入会員にとってはワクワクドキドキの入学式。そして進行するほどに、本当に入会してよかった、よろしくお願いしますの思いが募ってきます。先輩たちにとっては歓迎会。反応のいい新入生を見てこちら側もまた、鷹之台をよろしくの気持ちになります。

「鷹之台も運営は厳しゅうございます」とは鈴木俊雄名誉書記のスピーチです、「皆さんが今後、優良なゲストをどれだけ大勢連れてきてくださるか、メンバーとして大事な資質が問われているわけでございますよ」と言って笑わせていいます、「ただし当倶楽部は安売りはいたしません」。

「ゴルファーのスピリット」(ゴルフダイジェスト新書)より

写真/横山博昭

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