日本プロゴルフ協会の指導マニュアルである「基本ゴルフ教本」、その一部の「表現方法」や「指導方法」の改訂が検討されている。一体どう変わるのか。そして、一般ゴルファーにどんな影響があるのか? プロコーチの井上透が解説。

そもそも「基本ゴルフ教本」って?

みなさんは日本プロゴルフ協会(以下PGA)が発行している「基本ゴルフ教本」をご存知でしょうか。

多くのアマチュアゴルファーはその存在すら知らないでしょう。しかし、この「基本ゴルフ教本」は、アマチュアゴルファーの方も知らないうちに何らかの影響を受けているのです。先ずはこの「基本ゴルフ教本」とは何かを説明したいと思います。

画像: これがPGAの「基本ゴルフ教本」

これがPGAの「基本ゴルフ教本」

この「基本ゴルフ教本」は4000名を超えるPGAティーチングプロやLPGAティーチングプロの指導マニュアルであると同時に、日本プロゴルフ協会公認スクールでも使用されている教科書でもあります。その為、スクールを受講した経験のある方は見たことがあるかもしれません。

私もPGAティーチングプロの資格取得時には、「基本ゴルフ教本」を完全に暗唱できるまで覚えたものです。これはPGAとして指導者の質を担保する上では非常に大切な事と言えます。

ただし、これだけ聞くと内容は凄いことが書いているような感じがしますが、特別に難しい内容は一切ありません。この教本の対象者はゴルフ初心者や初級者なのでアドレスやグリップ、ボールの位置、スウィングなど非常に基本的なもので構成されています。

それだけ基本に特化したものである為、この「基本ゴルフ教本」は長年、大きな改訂もなされずにここまできました。その為、クラブや技術の進化に対応したものではありませんでした。

画像: ティーチングプロの指導マニュアルとしても使用されている「基本ゴルフ教本」。プロコーチとして活躍する井上透(写真右)自身も資格取得時に読みこんだという(撮影/戸村功臣)

ティーチングプロの指導マニュアルとしても使用されている「基本ゴルフ教本」。プロコーチとして活躍する井上透(写真右)自身も資格取得時に読みこんだという(撮影/戸村功臣)

そこで5月末に、倉本昌弘PGA会長の声がけによって「基本ゴルフ教本」の改訂の為の会合が行われました。私も呼ばれ、参加させて頂きましたが、他の参加者は倉本会長や井上建夫副会長はもちろんPGA会員の中から、様々な形で活躍しているメンバーが集められました(江連忠プロ、桑田泉プロ、中井学プロ、西海英世プロ、淵脇常弘プロ、松尾貴將プロ、三觜善一プロ、米田博史プロ。※50音順)。

そもそも「基本ゴルフ教本」について議論する場が、存在しなかった事を考えると、それだけでも非常に大きな意味を持っています。

それでは実際どのような点が話し合われ、改訂を検討されたのか、皆さんに少しお伝えしたいと思います。

そもそも「基本ゴルフ教本」は、ゴルフ初心者や初級者用のマニュアルである為、難しい表現や内容は対象者にフィットしません。そのため、1からすべて作り直す訳ではなく、一部の「表現方法」や「指導方法」の改訂になります。

話し合われている内容の一例を挙げると、「基本ゴルフ教本」では、ボールの位置はすべてのクラブにおいて「左足かかと内側の延長線上」と説明されています。これは「不動法」とも言われ、ボールの位置は固定してスタンス幅を変えることで対応する方法です。一般的には、番手によってボール位置を変える「変動法」を採用する場合が多いですが、初心者や初級者にとってどちらがわかりやすいかという議論もあります。

画像: ボール位置は番手が変わっても不動とすべきか否か……そのような議論がなされているという

ボール位置は番手が変わっても不動とすべきか否か……そのような議論がなされているという

それ以外にも「基本ゴルフ教本」の中には「最低点」表現が出てきます。一般のアマチュアゴルファーの方は「最低点」って何? と首をかしげてしまうかもしれませんが、これは一般的には「最下点」と呼ばれる事が多いと思います。この件についても今後、話し合いがされていくでしょう。

まだまだ始まったばかりですので、結論ありきで進んでいる訳ではありませんが、「基本ゴルフ教本」の改訂が継続に行われるような仕組みを作る事が大切です。PGAも本気で改革に取り組んでいます。

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