「サタデーグランドスラマー」と、いつの間にか、グレッグ・ノーマンに辛い形容詞がついた。“世界最強”のゴルファーと呼ばれていた。にも関わらず、メジャーでなかなか勝てない。いや土曜日の3日目まで首位に立ちながらの逆転負けが多かったのだ。当時の写真から振り返ってみよう。

悲劇のヒーローの印象付けた86年“3度の逆転負け”

画像: 86年マスターズ最終日、ノーマンも「70」とスコアを伸ばしたが、ニクラスは「65」をマーク、1打の逆転を許した

86年マスターズ最終日、ノーマンも「70」とスコアを伸ばしたが、ニクラスは「65」をマーク、1打の逆転を許した

特に1986年は、年間グランドスラムを達成してもおかしくなかった。4月のマスターズでは、1打リードして最終日を迎え、優勝争いをしながらジャック・ニクラスがバック9を30で回って逆転負け、2位。

画像: 「Jack is back!」の大合唱がオーガスタを包んだ86年マスターズ

「Jack is back!」の大合唱がオーガスタを包んだ86年マスターズ

6月、全米オープンでも首位でスタートしながら75と崩れ、66を出したレイモンド・フロイドに敗れ12位。7月、全英オープンで、ようやく中嶋常幸に競り勝って優勝。

8月の全米プロ。3日目を終えて2位に4打差の首位。ボブ・ツエーとの優勝争いは、最終ホールまでもつれ込んだ。ツエーは、絶体絶命と思われたが、奇跡的にバンカーから直接カップに沈めて、逆転負け。

画像: 86年全米オープンのノーマン。この年はすべてのメジャーにおいて3日目終了時点で首位に立っていた

86年全米オープンのノーマン。この年はすべてのメジャーにおいて3日目終了時点で首位に立っていた

この出来事から「サタデーグランドスラマー」と呼ばれたのである。とりわけマスターズでは、9回ベスト5入りをしているが、遂に優勝は叶わなかった。

何かが、勝利の女神が、あるいはちょっとした風が、ノーマンに吹いてくれていたら……という感傷的な分析もしたくなる。

「僕は16歳でゴルフを始めたんだ。だからこの先10年が私の年。ほんの少し年をとったメジャー・チャンピオンがいたっていいじゃないか」とノーマンは、当時語っていた。そのノーマンが、ようやく2度目のメジャーに勝てたのが、1993年の全英オープンだった。

ノーマンは、いつしか“不運の男”と呼ばれてしまったけれど、彼のリスクを恐れない魅力とアグレッシブなゴルフは、誰にも深く記憶に残っている。

文/三田村昌鳳

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