前回は”タメ”は形だけマネてもダメなんだ。時計の6時の位置でインパクトせずに7時の位置でインパクトするためにはしっかり体重移動が必要だと教わりました。

今回は大型ヘッド時代のスウィングについて、少し深い話をお届けします。永井プロ延広プロにパーシモン時代から現代のギアの違いをクラブとスウィングの両面から教えてもらいました。

クラブの進化で入射角が変わる

アイアンのインパクトについて教えていただいていますが、現代のクラブでおさえておかなければならないポイントを教えて下さい。

注目するポイントは アタックアングル(入射角)にあります。ドライバーが一つ基準になるべきなのだと考えます。インパクトというかアタックアングルを基準に考えると、ドライバーのインパクトが体の正面で、シャフトポジションがターゲットに対して直角になる。

「低スピン&高打ち出し」というのを、自分の打ち方とヘッド軌道で作っていた時代ですよね。いわゆる“アッパー軌道”です。それの一番の具現者が、メタル時代のジャンボ(尾崎)さんの“ハイティアップ”ですね。

画像1: クラブの進化で入射角が変わる

それは何が伏線になってるかというと、パーシモン時代から考えます。パーシモン時代って、基本的に「打点」つまり「フェースのどこに当てるか」というのがすべてでした。ヘッドが動く方向とボールが飛ぶ方向の関係性が、そんなに深くないんですね。いわゆるパーシモン的に考えると、 トウ側に当てて、右に打ち出して、いわゆるギア効果で低スピンのフック回転のボールを打って飛ばす という技術です。

逆に、重心点でセンターヒットしたりとか、フェースが向いた方向とかヘッドが抜けていく軌道に対して、ボールが飛ぶような、オンプレーン的なスウィングの人は、飛ばないけど曲がらない。ショットの正確性は素晴らしい選手たちもいました。ですが、ドライバーを飛ばすという人たちは、ヘッドが動く方向とか関係ナシに、とにかくトウに当てて、右からの低スピンフック弾道を打ちこなすのが上手い人たちの時代でした。

画像2: クラブの進化で入射角が変わる

じゃあ“パーシモン打法”って何だろう? と考えると、 トウに当てるからクラブの軌道はアウトサイドイン なんです。アウトサイドインに左に振っていかないと、トウに当たらないのです。インサイドアウトに振るとヒールに当たります。**インサイドからアタックすると、ヒールに当たる人はパーシモンのクラブを打てません。

パーシモンの名器は、ニクラスのマクレガー「M85」なんてまさにその典型。**フェースアングルがオープンなんです。だから(球が)右に出るわけです。クラブのマークとかもちょっと右を向いてたり。思い切って左に振ったときに、ボールが右へ出るドライバーっていうのが、当時のプロが好んだ顔つきです。

今のカチャカチャの調整でフェースが開いているというのとは大きく意味合いが違っていて、ヘッド軌道がアウトサイドインというか左に振る打ち方で、左に振ることでトウに当てて、トウに当たるとフェースアングルが右へ向いていけば、球が右へ飛び出しやすいし、そこへギア効果がかかってくるからカーブ(フック)がかかってくる。**

結局、アウトサイドインでトオ側に当てて飛ばしていた選手がメタルへの対応が遅れた人たちと言えます。同じようにメタルでトウ側に当てたら、ボールが思ったようにフックしてくれないので、スウィングの対応が遅れたわけです。

ジャンボ尾崎のハイティアップのワケ

メタル対応がスムーズにできた人たちは、いわゆるオンプレーンとか、ヘッドのパスに対してボールがわりとスクェアに出てるようなスウィングをしている人たちですね。ジャンボさんは、ちょうど低迷期だったこともあるんですが、自分で矯正したわけですよね。それが“ハイティアップ”の“アッパー打法”。ヘッドが抜けていく方向と、ボールが飛んでいく方向を重ねるという打法でした。

クラブの軌道がアウトやインからではなく、アッパーかダウンブローの上下方向の「軌道」のことです。打ち出し角に対してもヘッドを重ねていく時間が長い。いわゆる「ベクトルを重ねる」。後藤修さんのレッスンでも、ベクトルを重ねるという表現が出てきます。ベクトルを重ねることで、効率を良くする。具体的には「低スピン&高打ち出し」になる。

画像: 90年代のジャンボ尾崎のセッティング

90年代のジャンボ尾崎のセッティング

ギアのトレンドで見ると、7~8度の低ロフトのドライバーを使って14~15度くらいの高い打ち出し角を作るということは、軌道がアッパーになるということです。単純計算はできませんが、仮に14度の打ち出しを作るのに8度のロフトだったら、6度のアッパーが入ってるということになる。それはシャフトの戻りとかもあるので単純には言えませんが、考え方としてはそうなります。

それの集大成というか具現者が、アニカ・ソレンスタムではないでしょうか。彼女が、ロフト8.5度とかのドライバーを使って、“アッパー打法”みたいなものをやってた。アイアンでも“ノンターフ打法”で、あえてターフをあんまり深く取らない打ち方が流行ったりした時代ですよね。ちょうどそのアニカ=キャロウェイだから、ある程度やさしいアイアンとマッチしている時代でもありました。

パーシモンからメタル時代になる過程でスウィングを変化させる必要があったんですね。次回は現代の大型ヘッドへの対応にはどんなポイントがあるのか、しっかり紹介します。

月刊ゴルフダイジェスト8月号より一部抜粋

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