最終戦の日本シリーズまでもつれ込んだ賞金王争い。いずれも自身初の賞金王を狙う小平智、宮里優作、チャン・キム。そして2年連続賞金王の可能性を残す池田勇太。賞金王の可能性を残す上位4選手は、奇しくもスイングのタイプがまったく異なる。タイプ別に、アマチュアのお手本となるスウィングをゴルフスイングコンサルタントの吉田洋一郎が紹介する。

地面反力を使う小平

小平のスウィングの最大の特徴は、切り返しで地面を踏み込んでその反発力を体の回転に変えて飛ばす、“地面反力”を使っている点です。インパクトでは両足がつま先立ちになり、フォローでは左のつま先が目標方向に動くほど地面を強く蹴っています。

“地面反力”を使ったスウィングでは、切り返しで地面を強く押すことで、その力が上(体)側に返ってきます。この力が、上半身のひねり戻しの回転の速度を速め、ヘッドスピードを上げる効果をもたらします。フィギュアスケートのジャンプで、ジャンプの前に深く沈みこんでから氷を蹴るのと同じ原理です。押す力が強いほどに回転力が増します。

画像: 小平のスウィングは、インパクトで左のかかとが浮く(2017年トップ杯東海クラシック)

小平のスウィングは、インパクトで左のかかとが浮く(2017年トップ杯東海クラシック)

ゴルフのスウィングでは、筋力が少ないジュニアや女子のプレーヤーに多く見られる体の動きで、年齢を重ねて飛距離が落ちてきているアマチュアにもおすすめの打ち方です。

以前、小平本人の話を聞いた際には「スウィング中にジャンプしている感覚はない」と言っていました。近年PGAツアーなどでも“地面反力”を使うプロが多くいますが、地面を押したり、飛んだりすることは意識していないという選手もいます。意識的に行っていない場合、ジュニア時代に飛ばすために無意識に行っていた動きがそのまま反映されていることが多くあります。

アマチュアが“地面反力”をスウィングに取り入れる際は、上半身まで伸び上がらないことを意識してください。反力によって伸びる意識が強すぎると、インパクトで頭まで起き上がってしまい前傾角度が伸びあがってしまいます。そうなると地面からの反力は回転力に転換されません。「足は伸びても前傾は崩さない」事を意識するとよいでしょう。

バランスが良く曲がらない宮里

プロの中でもスウィングの美しさに定評のある宮里。その理由は体と腕のシンクロにあります。ダウンスウィングで腕を振ったり、手を積極的に返すなどの動きが少ないため球筋が安定します。方向性を重視したいアマチュアは宮里のスウィングをお手本にするとよいでしょう。

始動では腕と体が一体となって動き出し、テークバックで手元が体の正面から外れることがありません。そのためコンパクトなトップで、手元の位置は毎回同じところに収まるようになります。

画像: 腕とクラブが一体となって動き出す宮里優作(2017年KBCオーガスタゴルフトーナメント)

腕とクラブが一体となって動き出す宮里優作(2017年KBCオーガスタゴルフトーナメント)

切り返しは下半身から上半身に連動して行われ、フィニッシュまで腕と体と一体化させたままスウィングするイメージです。インパクトで手元の力を使ってフェースをコントロールすることがないので、打点、球筋ともに安定感を得る事ができます。宮里のスウィングをお手本とする際は、スウィング中、両肘と胸にできる空間を変えずに振っていくことを意識するとよいでしょう。

飛距離を維持しつつ曲がり幅を抑えるキム

今シーズン3勝を挙げブレイクしたチャン・キム。彼の最大の武器は男子ツアーでも群を抜いている飛距離です。平均飛距離は315ヤードを超え、ドライビングディスタンスでは1位になっています。

188センチ、105キロの恵まれた体格を生かしたドライバーショットのヘッドスピードは55m/sを超えます。キムに限らずヘッドスピードが速いとそれだけフェース面のコントロールが難しくなり、打ち出しの方向にズレが生じやすくなります。

その対策としてキムはジョージ・ガンガスが提唱しているGGスウィング理論を参考にして体の回転だけで打つシンプルなスウィングを行っています。フェース面が上側に向くようなシャットフェースのトップから、左サイドの回転によって切り返し、インパクトゾーンでフェース面の開閉を抑えながら振ります。

画像: フェースが空を向くトップから、左サイドの回転で切り返すチャン・キム(2017年日本ゴルフツアー選手権)

フェースが空を向くトップから、左サイドの回転で切り返すチャン・キム(2017年日本ゴルフツアー選手権)

腕の動きを極力少なくし、垂直軸に対する体の回転をパワーの出力源とすることで、飛距離と方向性を両立させることができるのです。

世界ランク1位でPGAツアー屈指の飛ばし屋でもあるダスティン・ジョンソンも同じようなスウィングタイプ。パワーがあるけれど、方向性が安定しないアマチュアは試してみてもよいでしょう。

数少ないループスウィングの池田

4人の中でも個性が強く見えるのが池田のスウィングです。もっとも個性の感じられるのが、アウトサイドに上げてインサイドからクラブを下ろしてくるスウィングプレーンです。

クラブを立てながら大きくアウトサイドに上げる事で右腕が内旋された状態となるため、ダウンスウィングでさらに内旋の動きを入れ、外側からクラブを下ろすことは難しくなります。自然と右腕を外旋させたインサイドからクラブが下りるダウンスウィングとなり、球がつかまりやすくなるのです。

そしてもう一つ、池田の特徴はヒールアップを積極的行う点です。これもスライサーは取り入れるべき動きです。トップで左かかとを上げ、切り返しでそれを踏み込むことで下半身リードでクラブを下ろしてくることができます。切り返しのきっかけが下半身になるので、手打ちを防ぐことができるのです。

画像: 池田は大きいヒールアップから踏み込むことで切り返す(2017年KBCオーガスタゴルフトーナメント)

池田は大きいヒールアップから踏み込むことで切り返す(2017年KBCオーガスタゴルフトーナメント)

池田の場合は少し腕の運動量や下半身の動きが大きいものの、デビッド・レッドベターが提唱している“Aスウィング”のループ軌道や下半身の使い方と共通する部分があります。

頑固なスライスに悩んでいるアマチュアは池田のスウィングをお手本にするといいでしょう。

写真/姉崎正、有原裕晶

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