前の組が終わるのをカートで待ちながらプレーする、という経験はゴルファーなら誰しもがあるはず。ゴルフマナー研究家・鈴木康之が著書の「ゴルファーのスピリット」からプレーファストを実践できる心構えを紹介しよう。

スポーツであればきびきびが当然

スターティングホールで何組も待たされることがあります。退屈でしょうから一度、一人がショットしてから次の人がティショットするまでの時間を計ってみてください。15秒の人はまれで、ほとんどの人が20秒以上かけているはずです。4人で1分30秒。

6分間隔スタートのコースでは、残り時間は4分30秒しかありません。スタート時刻の6分後は次の組のオナーが打って来る時間ですから、それまでに前進して、4人がクラブを用意して2打目を済ませ、後ろから打ってきてもいいところまで進んでいないといけない計算です。この進行が少しでも遅れると、順々に後ろの組に影響します。何組もが遅れますから、9時ごろには何組も溜まることになります。

そこで最近は7分間隔にするコースが増えてきました。8分間隔のところもあります。何分間隔にするかはコースの難易度や来場者の質に比例します。バブルの頃、6分間隔で入れるだけ入れたために、お尻の何組かは遅れに遅れ、日没のため回りきれず、金を返せとごねる騒動もありました。

因みに、日の長いセントアンドリュースのオールドコースは10分間隔です。

テキパキ打つ。打ったらさっさと歩く。このことがメンバーたちの意識に染み込んでいるコースや、そのペースメーキングが大事な仕事だと心得てキャディたちが立ち働いているコースでは、6分間隔が守られています。

もちろん誰かがトラブルに見舞われて滞ることがあります。そうしたコースでは前後の組との距離の感覚が時計になります。「これはいけない」と遅れの取り戻しにかかります。目配りがあれば大事に至らず、少々の遅れは少々の速度アップと段取りの気づきで簡単に現状回復ができます。

画像: 打ったらさっさと次の動作に移る。これが滞りなくプレーできる解決策だ

打ったらさっさと次の動作に移る。これが滞りなくプレーできる解決策だ

コースレート74.4という名にし負う難コースを持つ大洗ゴルフ倶楽部でも、プレーのペースが問題になり、スタート時間の間隔変更が理事会の議題に上りました。

しかし、6分を7分にすると1日平均4組16人、年間で1200人分の収入源になる、と営業面で総務委員会が、競技の面で競技・ルール委員会が、コース管理の面でグリーン委員会が、進行面でプロ・キャディ委員会が、マナーの面でフォローシップ・エチケット委員会が、それぞれに討究しました。

平成15年に50周年を迎えた記念事業としてコース見直し委員会ができましたが、結論は一つ、「井上誠一先生の原形を守ろう」と、時流に掉さして易きに走る改悪を嫌った大洗です。

スタート時間の間隔問題でも各委員会が出した結論は異口同音、「そのことを論じる前にスロープレーを改善する自覚の方が先だ」でした。「ゴルフには自らがジャッジするという厳しいルールが課せられているのだから」というのです。自分をジャッジするのはプレーの正否だけではなく、プレー態度にまで及ぶものという理解でしょう。

「スポーツであれば、きびきびとプレーするのが当然。のんびりしたプレーは遊びでしかない」、これが大洗のメンバーたちのゴルフセンスです。

「ゴルファーのスピリット」(ゴルフダイジェスト新書)より

写真/小林司

This article is a sponsored article by
''.