チームと契約しなくてはプレーができないプロ野球やサッカーと異なり、基本的には「引退」という概念が存在しない。それだけに、セカンドキャリアへの取り組みが進まず、ツアーで賞金を稼げない=収入がない、という図式が当てはまってしまう場合もある。プロコーチ・井上透が説くのは、プロゴルファーがより豊かな生活を築くための「兼業」のススメだ。

ツアーの夢を追いかける一方で、親からの援助頼りの現実も

近年、スポーツ選手のセカンドキャリアの問題が話題になっている。しかしゴルフ界ではセカンドキャリアという言葉すら聞こえてこない。それはプロゴルファーに引退という概念が存在しないからである。

もちろん古閑美保プロや宮里藍プロなど女子プロゴルファーの中には、結婚などを機に引退する選手はいるが、男子プロゴルファーには明確に引退をする選手は少ないのが現状である。

プロ野球選手やプロサッカー選手などは所属チームから引退(戦力外通告)を突きつけられる。そのため、本人が望む望まないに関わらずセカンドキャリアの問題が訪れる。しかしプロゴルファーの場合はツアーに出場できなくても引退をする必要はない。ここにツアーを目指すプロゴルファーの難しさがある。

もちろんツアーを目指すプロゴルファーの多くがゴルフ場に所属して業務をこなしたり、レッスン活動をしたりして練習と仕事を両立している。これは見方によっては夢を追いかけている、いう風に美しく見えるかもしれない。しかし実態は収入が少なく、親が費用サポートを行ったり、結婚もできない状況に陥っている。

画像: 華やかなツアーの舞台に立てるのは、男女問わずほんの一握りのプロだけだ(写真は2017年のダイキンオーキッドレディス・練習日)

華やかなツアーの舞台に立てるのは、男女問わずほんの一握りのプロだけだ(写真は2017年のダイキンオーキッドレディス・練習日)

そこで私がベストだと思うプロゴルファーのあり方は「兼業」である。最近、日本では、「副業」・「兼業」といった「働き方改革」が推し進められているが、とくに副業に関してはベンチャー企業を中心に認める企業が増えている。これにより社員のスキルも向上し、会社業績アップと個人の収入アップのウィンウィンの関係を構築している。

もちろんプロゴルファーがこの事例とまったく同じだとは思わないが、これからゴルフ人口が減少し、ゴルフ場や練習場が減少していく中で、ゴルフ業界の中で収入を得ることが難しくなっていくとすると、必然的に外に目を向ける必要が出てくる。

ただ一方、プロゴルファーの多くがジュニアゴルファーや学生時代にゴルフしかしていない場合が多く、「副業」と言っても何をしていいか分からないのが現状であろう。そういった意味では夢を追いかけるために学生時代に、社会で生きるためのスキルを身につける事は非常に重要である。

現在、多くの優秀な選手がプロゴルファー予備軍として大学や高校に在籍しているが、そういった意識でプロゴルファーの夢も追いかけて欲しい。かのボビー・ジョーンズの本職は弁護士であった。もちろん彼はアマチュアゴルファーだが世界トップクラスの優秀なゴルファーでもあった。昨今、スポーツ界ではプロとアマの境界線もファジーになっている。プロゴルファーとして生きるための副業という考え方は時代の必然ではないかと思っている。

以前からスポーツ界でもひとつのことに打ち込む生き方を美しいとする美学もあるかと思うが、明確なセカンドキャリアの存在しないプロゴルファーにとって「兼業」や「副業」が、プロゴルファーとしての生活や活動を好循環させる潤滑油になるはずである。

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