成田美寿々、川岸史果らトッププロを指導するプロコーチ・井上透は、20年以上ライフワークとしてジュニアゴルファー育成に携わってきた。世界ジュニアゴルフ選手権の日本代表監督も務める井上が、第一人者としてジュニア育成が抱える“課題”について寄稿してくれた。

スコア改ざんは「厳しすぎる親」だけが原因ではない

私がジュニア育成に携わり始めてはや20年以上が経ちますが、ジュニアゴルファーに関する問題点は未だ沢山あると感じています。

ゴルフ大会において、「スコア改ざん」や「故意のルール違反」、このような問題ははるか昔からありますし、現在でもしばしば起こる問題です。紳士のスポーツとしてスタートしたゴルフには審判が存在しません。性善説を大前提にしたスポーツなのです。試合になればもちろん競技委員はいますが全ての組にプレーをチェックする審判が存在しないという点では、上記のような問題が起こる可能性のあるスポーツと言えます。

私が主催するジュニア大会でも故意かそうでないかは定かではありませんが、このような問題が発生する事もあります。もちろん私が競技委員長を務める試合においては、当事者からよく話を聞いた上で事実を整理し判断を下します。しかし本当の問題はその場の判断、あるいは制裁では無く、その選手が「その後どのような姿勢でゴルフ競技に向き合うか」ということだと思っています。

もし仮に、誰かしらによって何らかの意図を持って引き起こされたスコアに関する問題があったとしたら、それを引き起こした選手がその後どのように自分の弱さに向き合うかが重要なのだと私は考えています。

一般的に、このような問題は保護者が厳し過ぎる事によって、子供が怒られる事を恐れて起きると言われていますが、それは一因に過ぎません。実際、親子関係が良好で、温和な保護者の方の子供でも同様な問題が起こる場合もあるのです。

とくに最近では競技志向のジュニアゴルファーの低年齢化に伴い、いろいろな問題点が生まれています。そもそも小学校低学年の子供を思い浮かべてみてください。ゲームで負けそうになるとリセットボタンを押したり、何かをいたずらして遊んだりと、やんちゃでルールを守れない事が子供の特徴とも言えます。子供がゴルフという審判のいないスポーツを始めるということは、ある一定の年齢やレベルまで暖かく見守る必要があると思っています。

画像: マスターズ開幕直前のオーガスタでは、ジュニアゴルファーを対象とした試合ドライブ、チップ&パット選手権が開催される。米国でもジュニア育成は当然ながら、盛んだ(写真/2014年のDCP選手権、撮影/岡沢裕行)

マスターズ開幕直前のオーガスタでは、ジュニアゴルファーを対象とした試合ドライブ、チップ&パット選手権が開催される。米国でもジュニア育成は当然ながら、盛んだ(写真/2014年のDCP選手権、撮影/岡沢裕行)

もちろん指導者としては「ルール」や「エチケット・マナー」を指導しています。しかしながら小学生からゴルフをするという事は常にそのようなリスクを持っているのです。「うちの子に限って」と思うジュニアゴルファーの保護者の方もいらっしゃると思いますが、誰にでも起こり得るのです。

子どもに手を上げる親も。……子だけではなく親への啓発も必要

またジュニアゴルファーの低年齢化による保護者の問題も出てきました。今から20年以上前は、ジュニアゴルフ大会の会場に保護者が入ることはまずありえませんでした。しかし時代は変わり、私の主催しているジュニア大会でも低年齢のカテゴリーでは保護者の方にキャディーをお願いしたり、中高生カテゴリーにおいてもカート運転をお願いしたりしてします。特にキャディーとして子供をサポートする保護者の中には、自分の子供に対して罵声や手を挙げる方もいます(もちろん厳重に対応します)。また勝利を目指すあまりマナーやエチケットを守れない保護者もいます。子供に対しての暴力は論外として、マナーやエチケット、ルールも含めて保護者の方に対する「啓発」が必要だと感じています。

もちろん、ご自身としては十分なゴルフ経験や社会的経験がお有りになる保護者の方も、ひとたび親という立場になれば誰でも新米のグリーンパパ・ママになります。どうすれば子供のゴルフが上手くなるかを考え、自分のこと以上に熱くなることもあるのはよくわかりますが、それがたとえ我が子であっても暴力という形になったり、あるいは不正やスコア改ざんのような問題につながることはあってはならないことです。

ゴルフ上達の為に最も重要な事はゴルフが好きになることです。好きになれば自分から練習しますし研究もします。そういう選手が伸びるのです。先ずは家族でゴルフを楽しんでください。ゴルフは自然と戦う素晴らしいスポーツです。私は多くの子供達にその素晴らしさを伝えていきたいと思っています。ゴルフは子供を大人にしてくれます。そんな、品格を備えたジュニアゴルファーを育成したいと願っています。子供は意外に早く成長してしまうものです。ゴルフに限らずですが、親子で同じスポーツを楽しむことができる時間は、宝物のような時間なのです。

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