野球やゴルフ中継で、選手が打った弾道が画面上に描かれ、飛距離やスピン量、弾道の高さなど表示されるようになってきている。実際に打った弾道をレーダーで追いかけ、画面にリアルタイムで表示させるものだが、これができる背景には弾道計測器の進歩がある。弾道のみならず、クラブの動きまでをも解析できる計測器の進化はゴルフになにをもたらすか、全国でプロ向けにワークショップを開催しているエンジョイゴルフの佐々木信也さんに話を聞いた。

テクノロジーの進化をどう活かすのか?

女子ツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」の練習日に、驚いたことがある。昨年の賞金ランキングでベスト10に入っている選手が、片手に弾道計測器の「トラックマン」を持って、練習場へと向かって歩いていたというのだ。なんでも、その弾道計測器、自腹で購入したとのこと。

このように、弾道計測器を積極的に利用するプロが増えている一方、まだまだ細かいクラブ解析にまで落とし込めていない場合も多いと、佐々木さんは言う。

「私は時折、ツアー会場に行ってプロのサポートをするのですが、なかなかプロも細かいクラブ解析をしていないこともあり、会場で測定すると思わぬことがわかったりします。ある日の女子ツアー練習日での出来事ですが、各番手のキャリーとスピン量、着弾角度などをチェックする『ギャップテスト』を東浩子プロに行ったところ、5番UTだけがやたらと右にすっぽ抜けたり大きめのフックが出たりしていました。その時のデータがこちらです」(佐々木)

画像: 右下の赤丸内の数値はトゥ側が下がってインパクトしていることを表している(計測器GC4によるデータ)

右下の赤丸内の数値はトゥ側が下がってインパクトしていることを表している(計測器GC4によるデータ)

画像右下を見ると、インパクトで「10.9度」トウダウン(クラブの先端側が下がる動き)していることがわかる。どんなクラブを誰が打ってもトウダウンは必ず起こるが、問題はこのクラブだけその数値が高いということだと佐々木さんは指摘する。

「トウダウンはボールを逃す動き(フェースが右を向く)につながるため、弾道のバラつきにつながっていました。解析の結果、スウィングの問題ではなくクラブに問題があったことが確定できた例になります」(佐々木)

プロなんだから、つねに自分にピッタリ合ったクラブを使っていると思いがちだが、さにあらずで、実際はこのような事態が起こり得る。佐々木さんは、他にも似たような事例があるという。

「亀田愛里プロのギャップテストでは、前後の番手とのキャリーの差がぼほないクラブが見つかりました。悩ましいことにこの選手は長い間使い慣れたこのクラブを中心にセッティングを組んでいましたが、14本のうち3本があまり飛距離に差のないセッティングになっていたのです」

亀田プロの場合、データをもとにロフトを変えてもらうことで、飛距離の階段ができ、ウッドからウェッジまでの流れができて、クラブ選択の迷いを減らすことができたという。プロが慣れ親しんだクラブを変えるのは簡単なことではないが、「感覚的に持っていた違和感をデータで確認し、言語化し、選手、ギアの担当者との間で共通の理解を作れたから」だと佐々木さんは言う。

また、計測器というと、以前はボールスピードやスピン量、打ち出し角などを測る器具、というイメージだったが、現在はできることが大きく増えているという。

「クラブの軌道、軌道に対するフェースの向き、入射角、インパクトの打点位置、インパクト時のライ角といったことの傾向が、十数発球打って計測すれば発見できます。ミスの傾向や課題が浮き彫りになることで、ティーチングプロ、クラブフィッターとのやりとりが深まっていくわけです。私は、スウィングの改善やクラブフィッティングに応用するインストラクターを育成することで、ゴルフをより楽しめるようになり、ゴルフ人口を増やすことにもつながると考えています」(佐々木)

画像: 左上から時計回りにクラブの軌道とフェース向き、ボールの曲がる度合いを表すスピン軸の傾き、インパクト時の打点、インパクト時のロフト角、ボールの打出し角、スピン量、クラブの入射角を表す(データはGC4による)

左上から時計回りにクラブの軌道とフェース向き、ボールの曲がる度合いを表すスピン軸の傾き、インパクト時の打点、インパクト時のロフト角、ボールの打出し角、スピン量、クラブの入射角を表す(データはGC4による)

計測機器の進化により、今まで感覚的にしか伝えられなかったことやフィーリングを数値に置きかえる、いわゆる“見える化”が進んだというわけだ。

計測器の進化によるゴルフの変化は、まだ始まったばかりだ。

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