男子の二部ツアーにあたるAbemaTVツアーの第3戦「ジャパンクリエイトチャレンジ in 福岡雷山」で前代未聞の試みが実施された。それは、試合に出場するプロゴルファーが自らマイクを付け、プレーの模様を「生解説」するというもの。なぜこのような試みが行われたのか、実際にやってみてどうだったのか、当事者であるプロゴルファー・中井学に語ってもらった。

「予想」ではない、プレーヤー目線での「解説」が狙いだった

話は僕が「長嶋茂雄 INVITATIONALセガサミーカップ」のインターネット中継で、5年ほど解説を担当していたことに端を発します。選手のプレーを解説しながら、「これは、解説というより、予想だな」という思いがぬぐい難くありました。

「この選手は、この状況からおそらくこう考え、おそらくこう打ったと思います」と解説するわけですが、結局それは予想であり、本当にそうかどうかはわからないと感じたんです。ティーチング業がメインとはいえ、僕自身あくまでもプロゴルファー。しっかりと、ツアープレーヤー目線でプレーを伝えたい、という思いがずっとありました。

そこで僕が提案したのが、「頭に小型マイク、そしてピンマイクを付けてプレーしながら解説したい」というものでした。残念ながら、レギュラーツアーであることもあってハードルは低くなく、実現はしませんでしたが、その話が巡り巡って、今回のAbemaTVツアーで実現することとなったんです。

ただ、実際にやってみるとこれが想像以上に難しかった! なにしろ前例がないため、まずはなにをどれだけ話せばいいかのサジ加減がわからない。そして、「このホールはピンポジションが右から5ヤード、手前から8ヤードなので6番アイアンを持ってフェードで狙います」などいう言葉が万が一同伴競技者に聞こえたら、アドバイスとしてルールに抵触してしまう。

JGTO(日本ゴルフツアー機構)とも話し合い、視聴者に誤解を与えないことにかなり気を使いながらプレーすることになりました。スコアは6オーバーの78。言いわけではありませんが、プレーに集中できなかったのは事実です。

ミスをした後はすぐに切り替えて次のホールに向かいたいものですが、そのミスを解説しなくちゃいけない。全っ然、気持ちが切り替えられないんです(笑)。

ネット上のコメントを見てみると、面白がってくれる人が多数いた反面、「おちゃらけ」と取られて、辛辣な意見も多く目にしました。スコアが良ければ胸を張れますが、78ではそうもいきません。そこで2日目に向け、初日の放送のハイライトをホールアウト後にチェックし、「どこが使われて、どこがカットされたか」を調べました。2日目は、使われそうな場面では解説に注力し、そうでない場面は極力プレーに集中する、という作戦に切り替えたんです。

その結果、2日目は目標としていた60台(68)を出すことができました。ピンマイクを付けて、プレーを解説し、その上でスコアを出す。それができなければ、この試みには意味がありません。あくまで真剣勝負の中でのプレーヤーの思考や心理を一般ゴルファーにお伝えする。それが目的だったからです。いくら真剣勝負だと口で言っても、2日間で15オーバーでは説得力がありませんから。

画像: 初日のハイライト動画を見てコツをつかみ、2日目はプレー解説をしながらも68を叩き出した(写真はAbemaTVツアーのライブ中継の模様)

初日のハイライト動画を見てコツをつかみ、2日目はプレー解説をしながらも68を叩き出した(写真はAbemaTVツアーのライブ中継の模様)

欧州ツアーなどの情報をチェックしてみると、ツアー選手たちが1ホールを何秒でホールアウトできるかを真剣に競ったり、ゴルフ以外のスポーツの道具でゴルフをしたりと、面白い企画を多数実施し、SNSなどを通じて積極的に発信しています。そういった試みは、国内の男子ツアーの認知度を上げるためにも必要だと私は考えています。

本音を言えば、しっかりと予選を通過して、決勝ラウンドの緊張感もお伝えしたかったのですが、それは叶いませんでした。でも、また機会があれば、同じような試みを是非トライしたいと思っています。今回で、解説しながらプレーするコツも、ちょっとだけつかみましたから(笑)。

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