今シーズンから日本ツアーに参戦しているY・E・ヤンが、先日開催された中日クラウンズで、2010年のボルボ中国オープンぶりとなるツアー優勝を飾った。今年47歳になるヤンのスウィングの進化を、ゴルフスウィングコンサルタントの吉田洋一郎が解説する。

PGAツアーのシード権を失いQTを受験

09年に全米オープンを制し、アジア人初の男子メジャーチャンピオンに輝いたY・E・ヤン。ゴルフを始めたのは19歳と、プロになるには難しい年齢だったヤンは、基礎練習を徹底的に行ったそうです。

そしてヤンは、PGAツアーに参戦するためアメリカに渡った際、ブライアン・モッグというレッドベター理論を学んだコーチに師事しました。

「アメリカに来た際に彼のスウィングを見たが、アドレスのいくつかの部分と回転に関するポイントを修正しただけで、僕の仕事は終わってしまった」(ブライアン)と言うように、基礎を重視した練習に取り組んでいたヤンのスウィングの完成度は、非常に高いものでした。

その後も「常にひたむきに、試行錯誤を繰り返した」というヤンは、着実にPGAツアーでの経験を積み重ね、2009年にタイガー・ウッズを退け全米プロゴルフ選手権を制し、アジア人初のメジャーチャンピオンとなるのです。

画像: 2009年に全米プロゴルフ選手権(写真)を制し、アジア人初のメジャーチャンピオンとなった

2009年に全米プロゴルフ選手権(写真)を制し、アジア人初のメジャーチャンピオンとなった

しかし、その栄光の後思うようなゴルフができず、米ツアーのシード権を失い、QTを受けて今季は日本ツアーに参戦していました。この状況だけを見ると「既に終わってしまった選手」という印象を受けますが、ヤンの試行錯誤は続いていたのです。

バイオメカニクスを取り入れたスウィング改造

2012年以降、成績が一向に上向かなかったヤンは、バイオメカニクス(生体力学)を用いたスウィングの研究を行う、ヤン・フー・クォン教授の元を訪れます。

クォン教授は目に見える体やクラブの動きに加え、力の方向性を計測機器によって可視化させ、遠心力や反動の力を使ってパフォーマンスを上げるスウィングの研究をしています。

そこでヤンはクォン教授に、腰の使い方について指摘を受けます。

「彼は腰を水平に回すようにスウィングしていたんだ。これでは骨盤がめくれ上がってしまい、腰の回転でしか体を回せず、非常に効率が悪いと感じた」(クォン)

筋力が低下してくると、腰を回したり腕を振り下ろす速度は低下します。そのため自分の体が出す力(内力)に加え、いかに遠心力や反動の力(反力)を取り入れるかが、パフォーマンス維持のカギとなるのです。

ヤンのスウィングを計測後、教授は骨盤の前傾角度についてアドバイスをしました。

「腰を横に回転させる動きから、骨盤に角度を付けて縦(実際には斜め)に回転させるように話をしたんだ。腰を斜めに回転させる事で、テークバックでは右腰と右肩が高くなり、切り返しからインパクトでは左腰と左肩が高く伸びる形になる。この入れ替えの際に左足で地面を思い切り踏むのが重要だが、この動きを入れてからヤンの力の出し方は見違えるように良くなった」(クォン)

教授の言う地面を踏み込む動きを入れる事で、地面からの反力を使う事ができ、これまでよりも速く上半身を回転させる事ができるようになったのです。

教授がヤンのスウィングを計測、アドバイスしたのが2015年。そこからヤンはこれまで通り、「ひたむきに、試行錯誤を続けながら」スウィングの改造に取り組んだことでしょう。

今回、中日クラウンズで見せた腰の動きは、縦の回転が入ったキレのある動きでした。今シーズンの日本ツアーで、遅咲きのヤンが見せる進化はまだ始まったばかりです。

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