石川遼がドライバーの不振に苦しんでいる。出場中の関西オープンでもドライバーのコントロールが効かず、結果を残せていない。かつてツアーにも挑戦したプロゴルファーであり、現在はティーチングプロ兼クラブデザイナーとして活躍する吉田一尊は、石川遼の現状を「彼は天才。スウィングが悪いわけがない」という。そうであれば、なぜ石川は苦境にあるのか。話を聞いた。

「石川遼クラスの超絶天才ゴルファーが、ドライバーだけ真っ直ぐ打てないって…スウィングが悪いわけないやん」自身のSNSにそう投稿したプロゴルファー・吉田一尊。自身もかつてチャレンジ(現・AbemaTV)ツアーに参戦し、どうしてもドライバーが真っすぐ打てないという悩みを抱えていたという彼に、投稿の真意を聞くべく早速コンタクトをとってみた。吉田は、石川の現状をどう見ているのだろうか?

「まず最初に言いたいのは、石川遼プロは日本の宝であり、技術的には間違いなく天才の域にいる選手だということ。そんな彼がドライバーが自分でも信じられないくらい曲がっているのだとしたら、スウィングに原因があるわけがありません」(吉田)

画像: 現在賞金ランク8位ながら、フェアウェイキープ率は137位の石川。ドライバーへの悩みは深い(写真/2018年の日本プロゴルフ選手権)

現在賞金ランク8位ながら、フェアウェイキープ率は137位の石川。ドライバーへの悩みは深い(写真/2018年の日本プロゴルフ選手権)

では、石川のスウィングはなぜ曲がるのか。

「スウィングとクラブのマッチングが取れていないと僕は見ています。石川選手は手元を浮かせてフェースを返し、大きいドローを打っていましたが、それでは世界のメジャーで戦えないという意識から、手元を低くするスウィングに改造しています。それ自体は悪いことではなく、それによってフェアウェイウッドからショートアイアンまで、すべてのショットに好影響があります。問題なのは、手元を低くする理想的スウィングだと、ボールがつかまりにくくなるということです」(吉田)

石川は昨年の秋から手元を低くするスウィングへと改造している。そうすると、ドライバー以外のすべてのショットに好影響があるが、ドライバーに関してはつかまりが悪くなる。左へのミスが減るということの反面、右へのミスが増えるため、フェースをローテーションしてボールをつかまえる必要がある。しかし、そうすると今度は手元が浮いてくる……その堂々巡りになる危険があると吉田は指摘する。

「僕自身、まったく同じような経験をしているんです。この問題は、ドライバーだけがとっ散らかってしまうこと。本人が強いこだわりを持つドライバーだけに、真面目な性格の石川選手は、“きっとスウィングが悪いんだ”と考えて、一生懸命努力すると思うんです。でも、それだと堂々巡りの泥沼にハマる危険性があると僕は思います」(吉田)

画像: 平均パット数1位の石川。小技に抜群の上手さを持つだけに、ロングゲームがひとつ噛み合えばいつでも勝てる状態だ(写真/2018年の日本プロゴルフ選手権)

平均パット数1位の石川。小技に抜群の上手さを持つだけに、ロングゲームがひとつ噛み合えばいつでも勝てる状態だ(写真/2018年の日本プロゴルフ選手権)

問題を解決しようと頑張りすぎるあまり、曲がるのが怖くなり、ドライバーが振れなくなったり、他のクラブへ悪影響が及ぶことが最大のリスクだと吉田は言う。

「ドライバーに関して、クラブがねじれる感覚があるという発言を石川選手はしていますが、これは重心距離が長くなる大型ヘッドの宿命ともいえること。それを嫌えばシャフトを硬くするしかありませんが、そうするとしなり量が減ってつかまりが悪くなり、また別の問題が生じます。あえて極端なことを言えば、今の石川選手はドライバーをバッグから抜き、スプーンでティショットすればすぐに勝てる状態。しかし、それでは世界のメジャーで戦えないのもまた事実でしょう。ならば、たとえばフィル・ミケルソンが2013年のマスターズで採用した長さ45インチ、ロフト8.5度で形状的にはスプーンに近い“フランケンウッド”のようなクラブ(ミニドライバー)を一時的にでも試すといった方法もあるのではないでしょうか。繰り返しになりますが、彼は天才であり、日本のゴルフ界の宝です。だから、深刻に悩みすぎてほしくないんです」(吉田)

今年は選手会長としてもツアーを引っ張る石川。ドライバーの問題を解決し、日本ツアーで、そして世界のメジャーで大暴れする姿を見たい。

撮影/姉崎正

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