いまやゴルフ界にはメンタルトレーナーが溢れている。技=テクニックと体=フィジカルが重視されていた90年代「このまま技術だけを追求しても進歩はない」とメンタルに特化した指導に切り替えたのが当時まだゴルフ後進国だったスウェーデンだ。やがてアニカ・ソレンスタムを中心に女子が活躍。そんななか独自の取り組みで“心”を鍛えていた選手がいた。

メンタルトレーニングを実践した最初のプレーヤーといえばイェスパー・パーネビックだろう。

スウェーデン出身で帽子のツバを上向きにしてかぶる個性派はかつてツアー仲間から“宇宙人(スペースマン)”と呼ばれていた。

震えるような寒さの日に大叩きをするとグリーン脇の池に飛び込み頭まで浸かるなど突飛な言動が目立ったことによる。ツバが上向きなのは「ポジティブなイメージだしパッティングのラインが見やすいから」だそうで、当初はメーカーが「ロゴが見えなくなるからツバを下ろしてくれ」と懇願したが頑として譲らず、やがてメーカー側が折れロゴマークをツバの内側に入れるデザインのキャップを考案したのだとか。

画像: 昨年JAL選手権で来日し、元気な姿を見せてくれたパーネビック。つばを上げるスタイルもご覧の通りに健在だ(撮影/姉崎正)

昨年JAL選手権で来日し、元気な姿を見せてくれたパーネビック。つばを上げるスタイルもご覧の通りに健在だ(撮影/姉崎正)

だが90年代の終わりに来日した彼にインタビューしたときの印象は“宇宙人”というより、むしろ聡明さと生真面目さを持つ好青年。キャディバッグの底には「核実験反対!」のステッカーが貼られていた。

そしてパーネビックが語ったメンタルトレーニングの内容がユニークだった。

「フロリダの大学に留学していたころなぜか白髪を紫色に染めるご婦人が目立ったんだ。で、日向ぼっこしてる彼女たちに近づいて声をかける。“なんてあなたは美しいんでしょう。あなたのようにきれいなご婦人に出会ったのははじめてですよ”ってね」

なぜ?

「恥ずかしさに慣れるためだよ。ゴルフでミスショットしたとき自分が向き合わなきゃならない羞恥心を克服するための鍛錬なんだ」

またあるときはコンビニに入ってドジなことをやりまくった。「棚の商品を落としたり大きな声でひとりごとをいったり」 多少迷惑ではあるがパーネビックは大真面目で人々の好奇の目に耐える“メンタルトレーニング”に取り組んだという。

アニカや宮里藍を指導してきた元スウェーデンナショナルチームのコーチ、ピア・ニールソンはこう解説する。

「選手はミスを恐れ、実際にミスするとそれを一大事ととらえて大袈裟に嘆きます。すると脳にある感情の貯蔵庫に負の感情がどんどん蓄積されてしまうんです。同じ状況になるとそのなかの負の感情が甦ってミスを繰り返す。ミスしたら感情的にならずさらっとなかったことにしてやり過ごす方が賢明です」

ニールソンのように科学的根拠があるわけではないのかもしれない。だがパーネビックが独自で実践していた“恥ずかしさに慣れる”トレーニングがプレッシャーのかかる競技に活かされたことは間違いない。その証拠に彼はタイガーの黄金期(2000年から2001年)に世界ランクトップ10の一角を担っていたのだから。

タイガーといえば前妻エリンさんはパーネビック家の元ベビーシッター。ツアーに同行していたエリンさんをタイガーが見初め引き合わせたのがパーネビックだった、なんて話もいまは昔。タイガーはいまエリンならぬエリカさんという気が利くと評判のガールフレンドとうまくいっているようだ。

HONMA

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