もともと男子プロや上級者に好まれる傾向にあったフォージド(鍛造)アイアンだが、女子プロ界にもその人気は波及している。ニッポンハムレディスで優勝争いを繰り広げたアン・ソンジュ、テレサ・ルーらも使う「女子プロフォージド」5機種を、プロゴルファー・中村修が試打!

同じ「フォージド」だけど、見た目や打感は?

ライ角、ロフト角が調整しやすく、打感などフィーリングが良いことから男子プロや上級者に好まれることが多いフォージドアイアン。実は、最近は女子プロでもフォージドを使う選手が増えている。

フォージドアイアンを使用する代表的な女子プロは、ヤマハ「RMX 118」を使う有村智恵、キャロウェイ「Xフォージド」を使う上田桃子、柏原明日架、テレサ・ルー。ブリヂストン「ツアーB JGR HF2」を使う葭葉ルミ。ミズノ「MP518」を使うアン・ソンジュ。テーラーメイド「P770」を使用する松森彩夏などだ。

クラブ好きならピンときたかもしれないが、男子プロが使うフォージドアイアンとは異なるモデルが主に人気。一概には言えないが、男子プロが使うものよりロフトがわずかに立ち気味、ヘッドサイズがわずかに大きめのヘッドに、軽量スチールシャフト、あるいはカーボンシャフトを装着するのが“女子プロフォージド”の特徴だ。

女子プロのヘッドスピードは一般アマチュアのそれに近く、スペック面では大いに参考になる。ということで、今回は女子プロに人気のフォージドアイアン5機種をプロゴルファー・中村修が試打、それぞれを解説した。

画像: 写真左から、ヤマハ「RMX 118」、ブリヂストン「TOUR B JGR HF2」、キャロウェイ「X FORGED」、テーラーメイド「P770」、ミズノ「Mizuno Pro 518」。いずれも番手は7番

写真左から、ヤマハ「RMX 118」、ブリヂストン「TOUR B JGR HF2」、キャロウェイ「X FORGED」、テーラーメイド「P770」、ミズノ「Mizuno Pro 518」。いずれも番手は7番

ヤマハRMXはやさしさが前面に出たフォージドアイアン

まずは復活優勝を期す有村智恵が使うヤマハの「RMX 118」。ロフトが31度とややストロングで、飛距離も十分に出るモデルだ。

画像: ヤマハ「RMX118」。試打クラブのシャフトはNSプロ RMX95のS

ヤマハ「RMX118」。試打クラブのシャフトはNSプロ RMX95のS

「7番のロフト31度とやや立ち気味のロフト角。構えた感じですが、フェース面が大きくて難しさは感じないですし、ターゲット方向に真っすぐにフェースを合わせやすくなっています。トップブレードが比較的直線的なので、大きい割にはシャープなイメージです」(中村、以下同)

実際に打ってみると、ロフトが立ち気味であることもあってか打ち出し角は他のモデルに比べるとやや低めながら、スピンはしっかりとかかり、止まらないという心配はない。

画像: ヤマハ「RMX118」はやや大きめのフェース面でヒール側とトゥ側にウェートを配分したことでフェースの直進性が高い

ヤマハ「RMX118」はやや大きめのフェース面でヒール側とトゥ側にウェートを配分したことでフェースの直進性が高い

中村が評価したのはその抜けの良さ。

「あんまりしっかり打ち込まなくても大丈夫だし、ソールのリーディングエッジ側が少し削れているので、深く入り込んでいかず、滑るように抜けていってくれます。トウ側、ヒール側に重量が配分されているため直進性が高く、フェースの開閉をしっかり使って打つというよりは体の回転を重視して振り抜くスウィングに合いますね」

やっぱりミズノプロの顔つきと打感

続いては、大手量販店でも売れ行き好調だというミズノの「ミズノプロ518」。ミズノプロには3モデルがあるが、契約フリーのアン・ソンジュなどショットメーカーに支持されているのがこの「518」だ。

画像: ミズノ「MP518」。試打クラブのシャフトはダイナミックゴールド95のS200

ミズノ「MP518」。試打クラブのシャフトはダイナミックゴールド95のS200

「今回試打した5モデルは7番のロフト角が31〜33度でしたが、このクラブは32度とちょうど中間。ロフト角は数字が大きいほどボールが上がりやすくなりますが、このクラブは数字以上にボールが高く上がります」(中村)

ミズノプロ518はバックフェースにチタン、タングステンを配することで最適な重心設計がされていることも、上げやすさにつながっているようだ。

「ミズノプロらしい顔つきで、ネックからフェースにかけての丸いラインが非常に違和感なく美しく、構えやすい。トップブレードはやや丸みを帯びていて、包み込むような印象ですが、大きさは女子プロフォージドの中では小ぶりと言えます。小ぶりなのに打つとやさしい(=上がりやすい)というのがこのクラブの特徴ですね」(中村)

画像: ネックからフェースにかけての丸いラインが美しい

ネックからフェースにかけての丸いラインが美しい

打感はプロが思わず「超柔らかい! 食いつく!」と叫ぶほど。ボールに食いつきながらも、かなり柔らかい打感。バックスピンがしっかりかかるので操作性が良く、曲げたり弾道の高低を打ち分けられるところがプロモデルらしいところだと中村は評価した。

飛び系だけどフォージド「JGR HF2」

ブリヂストン「ツアーB JGR HF2」は“飛び系”を謳ったフォージドアイアン。7番のロフト角は31度と立ち気味で、プロが打った計測結果ではキャリーが180ヤードを超えた。飛ばし屋として知られる葭葉ルミが契約フリーで使用している。

画像: ブリヂストン「ツアーB JGR HF2」。試打クラブのシャフトはNSプロ モーダス3 ツアー105のS

ブリヂストン「ツアーB JGR HF2」。試打クラブのシャフトはNSプロ モーダス3 ツアー105のS

「今回試打した女子プロフォージド5モデルの中で、もっとも飛距離を重視していると言っていいのがこのクラブです。31度のロフトで、低重心。その分スピン量はやや少なめで、ストレートボールの高さで止めるという印象になります」(中村)

ヘッドサイズはRMX118とミズノプロ518の中間ぐらい。ややグースネックになっていてつかまりが良く、ネックの短かさからも分かる通り低重心。シャープというより、安心感を強調したデザインとなっている。

画像: ブリヂストン「ツアーB JGR HF2」はややグースネック。ネックの長さが短く低重心で球が上がりやすい

ブリヂストン「ツアーB JGR HF2」はややグースネック。ネックの長さが短く低重心で球が上がりやすい

「フォージドと言っても、ダウンブローに打ち込むというよりは、浅い入射角で払うような打ち方に自然となるアイアンですね。アイアンでも飛距離が欲しい。それでいて、フォージドアイアンが良いという人には最適解になりそうです」(中村)

歴代のモデルは名器揃いの「Xフォージド」

続いては、上田桃子、柏原明日架、テレサ・ルーらキャロウェイの契約女子プロたちがこぞって使い、男子プロにも人気が高いキャロウェイ「X フォージド」。歴代モデルがすべて名器と呼ばれる、大人気モデルだ。その形状を、中村はこう評する。

画像: キャロウェイ「Xフォージド」。試打クラブのシャフトはNS950のS

キャロウェイ「Xフォージド」。試打クラブのシャフトはNS950のS

「トウが高くてヒールが低い、昔ながらの海外ブランドのアイアンの形状です。ロフトは33度と、今回比較するモデルでは一番ロフトが寝ています。実はこのクラブとRMX118は形状がよく似ているんですが、RMXがトウヒールに重量を配分しているのに対し、このXフォージドはしていない。結果、フェースを開閉させながらダウンブローに打ち込んでいくスウィングと好相性となっています」(中村)

画像: 海外ブランドならではの形状の「Xフォージド」。丸みを帯びたバウンスが抜けを良くしている。全体的に、アイアンらしいアイアンだ

海外ブランドならではの形状の「Xフォージド」。丸みを帯びたバウンスが抜けを良くしている。全体的に、アイアンらしいアイアンだ

小ぶりなヘッド、7番で33度のイマドキとしては寝ているほうに分類されるロフト設定、異素材を配合しない軟鉄一体成型フォージドであることなどを見ても、もっとも古き良きアイアンの面影を残すのが本モデルだ。

「7番のロフト33度なので球がよく上がりますし、打感はもちろん柔らかい。抜けも良いし、スッときれいに芝が真っすぐ抜けたこの感じ、抜けが良かった証拠ですよね。しっかりと打ち込むことができ、フェースの開閉も気持ち良くさせてもらえた結果、私はこのアイアンが一番飛ばせました」(中村)

というわけで、しっかりと打ち込める人、フェースの開閉を使える人には強い武器になりそうという結果になった。

見た目以上に球が上がる「P770」

最後は松森彩夏が愛用するテーラーメイドの「P770」。バックフェースにタングステンを搭載し、低重心にしたモデルだ。中村は、構えた顔をまずこう評価する。

画像: テーラーメイド「P770」。試打クラブのシャフトはNSプロ950のS

テーラーメイド「P770」。試打クラブのシャフトはNSプロ950のS

「トップブレードが厚めで、フェースの幅に対してスコアライン(溝)が長く見えるため、フェース全体が大きく見えて、安心感があります。実際に打ってみても、インパクトでのブレがなく、スイートスポットが広い(ミスに強い)という感じがします」(中村)

画像: 「P770」はトップブレードが少し厚く、安心感のある形状

「P770」はトップブレードが少し厚く、安心感のある形状

Xフォージド同様、ロフト角は33度と“寝気味”。

「顔と打感は玄人好みで、それでいてソールが少し厚くなっているので、あまり打ち込まなくてもボールが上がりやすい設計になっています。ミスへのやさしさ、飛距離、操作性、すべてにおいてバランス重視と言えます」

さて、総括するならば、5つの女子プロフォージドは、打ち込んでいきたいクラブと、横から払い打ちたいクラブに大別できることがわかった。打ち込んでいきたいクラブほど重心は高めでスピンが効き、フェースの開閉は多め、操作性は高めとなり、払い打ちたいクラブほど、重心低めでミスヒットに強く、ヘッドの直進性が高く、ボールの直進性も高くなる。

順番でいえば、Xフォージドがもっとも打ち込むスウィングに合い、ほぼ同率でミズノプロ518。P770がちょうど中間に位置し、RMX118からはやや払い打ちたいモデルとなっていき、JGR HF2は明確に“飛び系”であると言える。

アン・ソンジュやテレサ・ルーなど、しっかりとダウンブローに球をとらえるタイプは「MP518」や「Xフォージド」を選び、松森彩夏や有村智恵のように入射角を浅くも鋭角にも打ち分けるタイプは「P770」や「RMX118」、あまりダウンブローを強くしたくない葭葉ルミは「ツアーB JGR HF2」を選ぶというように、女子プロたちは自身のスウィングと相性の良いアイアンを選んでいるようだ。

女子プロたちを参考に、自分のフィーリングに合ったフォージドアイアンを見つけてみては?

撮影/姉崎正 取材協力/ニュー南総ゴルフ倶楽部

※2018年7月10日12時10分 一部内容を修正いたしました

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