全米女子プロ選手権で畑岡奈紗がプレーオフに進出、健闘したことは記憶に新しいが、そんな畑岡、ユ・ソヨンとのプレーオフを制して勝利を手にしたのはパク・ソンヒョン。2017年には米女子賞金女王にも輝いた彼女のスウィングを、データ分析の専門家であるゴウ・タナカが徹底解剖!

データ的には「非の打ち所がありません」

2週連続、そして海外初メジャー勝利を狙った畑岡奈紗の最終日の猛追を、プレーオフにてしりぞけ優勝を飾ったパク・ソンヒョン。2016年、韓国ツアーで3戦3勝という勝率100%で注目を集め、2017年は米ツアーで賞金女王に輝いた今最も勢いのある24歳を支えるスウィングを徹底分析してみる。

特筆すべきは172センチの長身から繰り出されるその飛距離だ。2018年度の平均飛距離は273ヤードと4位で、1位との差は3ヤードと相当な飛ばし屋だということが分かる。畑岡奈紗選手との差は全米女子プロ選手権では10ヤードと、彼女がいかにロングヒッターなのか分かるだろう。

画像: 2017年には賞金女王にも輝いた。そのスウィングは美しいの一言(写真/2017年全米オープン、撮影/南しずか)

2017年には賞金女王にも輝いた。そのスウィングは美しいの一言(写真/2017年全米オープン、撮影/南しずか)

2018年度現在までの米女子ツアーの平均飛距離トップ5のデータを見てみると、基本的に飛距離は伸びれば伸びるほど精度は落ちる。これは必然だ。このトップ5の中でソンヒョンの精度が最も高く、フェアウェイキープ率は69.9%だ。

彼女の場合、インパクト時での腕とシャフトが作る角度が160度以内となる「R160(編注:筆者が提唱する超一流選手の共通項)」を満たしているのみでなく、飛ばしに必要なテクニック、そして精度も高めるスウィング要素を数多く備えている。

画像: スウィング研究家のタナカはかねてからソンヒョンのスウィングに注目。その素晴らしさを語っていた(写真/2017年全米オープン、撮影/南しずか)

スウィング研究家のタナカはかねてからソンヒョンのスウィングに注目。その素晴らしさを語っていた(写真/2017年全米オープン、撮影/南しずか)

そのパッと見た瞬間の美しさだけでなく、その詳細もまた素晴らしく非の打ち所がないのだが、その中でも注目したい2点について解説する。

やや高めに見えるトップポジションから、右脇をしめると同時にループを使いオンプレーンに乗せていく。この動きはイ・ボミ選手と共通する動きで、韓国人女子プレーヤーに特に多く見られる共通項だ。彼女は右脇を締めながら腰をしっかりと回転させインサイドからクラブを落としてくるのだが、その時のシャフトの角度がまた非常に素晴らしい。

シャフトは超一流のスタンダードである右上腕の真ん中あたりから降りてきて、その時にグリップエンドはボールよりもやや上を指している。これはフラットと言われがちだが、スウィングの統計的データをもとに考える私の水準では、これがスクウェアだ。

ダウンスウィング時のシャフトの角度はアドレス時のシャフトの角度(理想的なインパクト)となるべく平行にあるべきなのがその理由だ。そうすればそこから手が降りていく中、シャフトの無駄な動きはなくなり、スムースに理想的な形でインパクトができる可能性が上がる。

画像: データ的には「非の打ち所がありません」

そして彼女のインパクト時の右ひじの角度がまた非常に特徴的で良い。飛距離を生むためにはインパクト前で右ひじの曲がりが必要だが、パク・ソンヒョン選手の右ひじは曲がっている。その曲がり方は右ひじが地面を真下に指すのではなくかかと方向を指しているのだ。これはトップポジションで右脇が空いている人に対して言われるフライングエルボーに似ている。

一見不格好、そして悪いように思われる方がいるかも知れないが、全くもってそうではない。彼女は右腕の通り道がなくなるほど体の近くを腕が通っているということだ。右腕はインパクト時、右腰についているほど近い。彼女はトップからの切り返しで右脇を締めていく動きをしているのにもかかわらずインパクト時では右ひじがかかと後方に向いているということは、彼女がいかに体の近くに腕を落としてきているかを証明している。

この右ひじがかかとを向いたインパクトは3つの効果をもたらす。インサイドからのスウィングプレーン、しっかりと角度のついたインパクト(R160)、そしてフォローに向けて伸ばすことにより得るエクストラの爆発力だ。

この右ひじの角度はアマチュアの方にとっても比較的真似しやすい動作なので、格好にとらわれず試してはいかがだろうか。スライスに悩むプレイヤーにはとくにおすすめだ。

※2018年7月6日15時30分 一部文章を修正いたしました

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