ブームが続く熟成肉ではないが、ゴルフのスウィングも熟成させるのが上手くなる秘訣だというのはプロゴルファー・中井学。全英オープンを制したフランチェスコ・モリナリがそのお手本になるというのだが……!?

全英を制したモリナリですが、地味ながらずっと欧州ツアーを中心に活躍し、私自身いい選手だなあとかねて思っていた選手の一人です。

さて、そんなモリナリですが、私が見ている限り、そのスウィングの印象に変化がありません。プロの中には、スウィング改造と称して、体に馴染んだ動きを捨て去り、新しいコーチの教えに従ってガラッと動きを変える選手が少なくないのですが、モリナリの場合、そのような大規模な改造を行わず、持って生まれた自分のスウィングを熟成させ続けてきたような印象を受けます。

ゴルフにおいてスウィング改造を行う目的のひとつに「飛距離アップ」があります。ドライバーでの飛距離がたとえば20ヤード伸びれば、その分セカンドショットの距離が短くなり、一見有利に思えます。

画像: 熟成させたスウィングでメジャーを制した35歳のモリナリ(写真/2018年の全英オープン)

熟成させたスウィングでメジャーを制した35歳のモリナリ(写真/2018年の全英オープン)

では、仮にスウィング改造に成功し、飛距離が20ヤード伸びたとしましょう。するとどうなるか。アイアンも少なからず飛距離が伸びてしまうんです。「最高じゃないか」と思うかもしれませんが、これはプロにとっては(アマチュアゴルファーのみなさんにとっても、実は)大問題。

なぜなら、アイアンが飛んでしまうということは、スピン量、ボールの高さも変わるということ。グリーン上に落ちてからの転がりも変われば、左右の曲がりの幅も変わります。つまり、距離感が大きく変わってしまう。結果、自分のゲームプランをイチから作り直すことになってしまうのです。つまり、スウィング改造には仮にそれが成功したとしてもなお、リスクが付きまとうわけです。

一方、スウィング熟成はどうでしょうか。これは改造の場合とは異なり、10回打って10回とも同じ高さ、同じスピン、同じ曲がり、同じ飛距離を得ようとする作業です。番手ごとの飛距離とは、コースを攻略するために必要な物差しのようなものです。物差しに求められるのは、常に一定の数字を計測できること。使うたびに伸びたり縮んだりしてしまっては、使いにくくて仕方がありません。

スウィングを熟成させ続けた35歳のファランチェスコ・モリナリ。まさに今が“旬”といったところでしょうか。

撮影/姉崎正

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