元世界ナンバー1で現在はジュニア育成やゴルフコースデザイン、ブランドの運営など現役引退後活躍の場を広げるアニカ・ソレンスタム。元女王が8歳になる娘アヴァに宛てた手紙に感銘の声が挙がっている。

メジャーリーグのスーパースターで14年に引退したデレク・ジーターが立ち上げた新しいメディアプラットフォーム「ザ・プレーヤーズトリビューン」にはさまざまな分野のアスリートたちが自らの言葉で投稿を行っている。

今年3月その「ザ・プレーヤーズトリビューン」でアニカの手紙が公開された。長女アヴァ宛ての手紙には自らの幼少時代からプロとして頂点に駆け上がり引退に至るまで自らの経験が包み隠さず認められている。

画像: 現役引退後も活躍を続けるアニカ・ソレンスタム(写真は2004年の全英女子オープン)

現役引退後も活躍を続けるアニカ・ソレンスタム(写真は2004年の全英女子オープン)

「親愛なるアヴァ あなたはシャイな女の子。弟(ウィリアムス)の方が人前に出るのが得意のようね。でも心配しなくていいわ。彼の積極的な性格なパパ譲りだから。いまにきっとあなたも自信を持って人前でおしゃべりできるようになるわ」ではじまる手紙は人見知りでおとなしかった母の血を引く娘への愛情が溢れている。

「信じられないかもしれないけれどママも子供のころは引っ込み思案で恥ずかしがり屋だった。学校で先生から質問されても間違ったらどうしようと思うと怖くて手を挙げることすらできなかった」

「ゴルフは強制されたわけでもなくだんだん好きになって打ち込むようになったけれど、アマチュアのころは試合に勝ちそうになるとわざと3パットして負けるようにしていた。優勝して人前でスピーチするくらいなら負けた方がいい、って本気で思っていたからよ」

「でも」とアニカはいう。「人にはそれぞれタイミングがあるの。急がなくていいわ。いろいろな経験を積んで自信を培っていけば、いずれあなたも自分の声を持つことができるようになるから」

シャイなアニカが自信を掴んだきっかけは米アリゾナ大学での経験だった。「言葉もわからず見るもの聞くものすべてが初めての体験で戸惑ったけれど、ゴルフチームの一員として自分を磨いていくうちに私にとって大切な基礎ができたの。ゴルファーとしてだけではなく人間としてのね」

プロデビュー2年目の95年には全米女子オープンに優勝。翌年連覇したことでマスコミに追いかけられる日々が訪れる。人前で話すのがなにより苦手だった彼女を質問攻めにするメディアに対し本人が編み出した解決法は「ノーといえる人になる」ことだった。

「メジャーに勝って注目されてトップの座に就きそれを守る日々はとても孤独だった。同僚の選手たちとも意図的におしゃべりをせず、もちろん食事に行くこともなくただひたすらゴルフだけに打ち込んできた」孤高の女王としての苦悩を吐露した母は「アヴァ、ノーといえる勇気を持ちなさい。いずれきっとこの意味がわかる日がくるわ」

08年に引退を宣言したのは「勝つことに喜びを感じられなくなった」から。「すべてをやり尽くしたと感じたの。ゴルフより自分のファミリーを持って新たな人生を歩みたいと思った。そしてあなたが私たちのもとにきてくれた」

「これからあなたにはなにかに情熱を傾けられる人になって欲しい。いつかときがきたらその情熱を次の世代に伝えられるような人になれるはずよ。愛しい私の娘。これからの人生を思いっきり楽しんで。どんなときも道端に咲く花の香りを楽しめる人になって欲しい」

途中をかなり省略してきたが手紙はこんな言葉で締めくくられている。

「家庭と仕事は両立できるわ。どちらにしようかなんて悩まなくてもいい。人生のバランスはいずれあなた自身が学ぶでしょう。あなたの人生の旅に寄り添って見守っていくのを心から楽しみにしています。愛を込めて。ママより」

子供の健やかな成長を願いながら、ともすると親は子供に過大な期待を寄せ自分が敷いたレールを進ませようとする。だが人にはそれぞれタイミングがある。アニカは自分に似た娘の成長をじっくり見守るというのだ。この手紙には人生を芳醇にするヒントが隠されている。

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