昨年古希を迎えた尾崎将司。日本ゴルフ界のレジェンドは今、2人の若手女子プロ選手を教えている。50歳近く歳の離れた尾崎からの教えとはどんなものか。ゴルフスウィングコンサルタントの吉田洋一郎が話を聞いた。

「俺、女子は知らねーから」から始まった師弟関係

日本ツアー94勝の尾崎将司は、今、原英莉花と田村亜矢という2人の女子プロを教えています。原は今シーズン下部ツアーで2勝し先日行なわれたプロテストに10位で合格、田村は昨年のファイナルQTで3位に入り今シーズンの出場権を獲得したという伸び盛りの2人です。

画像: 今シーズン注目の原英莉花(右)と田村亜矢(左)。ともにジャンボこと尾崎将司に師事している(写真は2018年のサイバーエージェントレディス 撮影/大澤進二)

今シーズン注目の原英莉花(右)と田村亜矢(左)。ともにジャンボこと尾崎将司に師事している(写真は2018年のサイバーエージェントレディス 撮影/大澤進二)

原が尾崎の元を最初に訪れたのは15歳のとき。知人の紹介で場を設けてもらったと言いますがそのときは「とても偉大な事は知っていたけれど、(プレーヤーとしても人としても)詳しく知らなかった」そうです。15歳の少女が、その道でもっとも実績を残したと言っても良い先駆者に、話を聞きにいったときの緊張感は計り知れません。

「緊張で、とにかく認めてもらうためにひたすら走っていました。自分の持っているものを最大限出さないと認めてもらえないという気持ちが強かったです」(原)

そんな原に尾崎が言ったのが「俺、女子は知らねーから」という一言。「ものすごく怖いと思った」そうですが、ここで怯まなかったのがさすが。その後に打ったドライバーショットを見た尾崎は「オー」と感嘆の声を上げたと言います。アプローチは「ダメ」と評価されるものの、その後は定期的に尾崎の元を訪れて技術と気持ちの両面からさまざまな事を学んでいると言います。

「プロになるときにジャンボさんから『絶対に妥協するな』と言われました。これは今でも忘れません」

そんな尾崎と原が、技術的な部分で追い求めているのが飛距離です。

求められた飛距離の探求

原は今シーズン出場した11試合中9試合で予選を通過する上々の成績を収めていますが、賞金ランクは71位とシード権を保持するトップの選手との間にはまだ壁があります。しかし、平均飛距離を見てみると251ヤードで全体の5位。同じく尾崎に師事している田村も賞金ランクでは87位ですが、平均飛距離では31位につけています。

「『飛距離を限界まで諦めるな』と言われています。トレーニングはシンプルですが、体をどう使ったら最大限に力を発揮できるかという部分を突き詰めて練習しています。素振り一つとっても、ただ速く振るのではなく飛距離に結びつけるためにはどうしたら良いかを常に考えます。」(原)

画像: 平均251.60ヤード飛ばす原英莉花(写真は2018年のサントリーレディス 撮影/姉崎正)

平均251.60ヤード飛ばす原英莉花(写真は2018年のサントリーレディス 撮影/姉崎正)

一方の田村も「下半身リードのための股関節や、腰の使い方といった技術的なアドバイスまでもらっています。ドローで飛距離が出るようになった」と言うように、教えの中でも飛距離へのウェートが高い事が分かります。

ジャンボが作り出すメンタルタフネス

とは言えドライバーショットも含め、普段の指導は手取り足取りの具体的なレッスンは少ないようです。師事している2人とも「最初は見て学ぶ」部分が多く、自分自身で考えながら取り組んでいるときに「最適なタイミングでアドバイス」をくれると言います。

そういった技術的な部分に加え、2人が尾崎に師事する事で得られたのがメンタルの強さです。

「練習の緊張感が半端じゃないんです。常に本番以上の緊張感の中で練習ができているので、実際の試合でいっぱいいっぱいになる事がなくなってきました」(田村)

画像: 田村亜矢はジャンボ尾崎に師事する事でメンタルが鍛えられたという

田村亜矢はジャンボ尾崎に師事する事でメンタルが鍛えられたという

PGAツアーのトップ選手の口からも聞かれますが、「何を教わっているか」と同じくらい重要なのが「誰に教わっているか」という事です。教わっている側も技術を持ち合わせたプロのため、納得感や受け取る言葉の意味合いはとても重要です。「あのジャンボさんが言ったのだから」という納得感は、取り組む上での大きな信頼感にもつながっているでしょう。

また原は「ジャンボさんは褒めてくれないから、早くそうなる(褒めてもらえる)ような成績を出したい」と公言しており、モチベーションの糧ともなっているのです。

平成最後となった今年、昭和の一時代を築いた名選手がどのように技術を継承していくのか。今後の2人の活躍に注目です。

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