最新ドライバーをチェックしているとフェースやヘッドの「たわみ」に関する謳い文句を目にすることが多くなった。しかし、たわみが注目され始めた2000年頃の“高反発ドライバー時代”と今とでは、説明のされ方が少し異なっているが……? 今一度、たわみの効果について考え直してみよう。

トランポリン的に説明される今どきドライバーに“?”

最近、最新ドライバーのセールストークで“たわみ”という言葉を、とくによく聞くようになった。カップフェースにして大きくたわむ、2本の柱効果でフェースがさらにたわむ、極薄クラウンでたわむ、筋金入りでもっとたわむ、などなど。

フェアウェイウッドなどでは、ソールのスリットでフェース下ヒットでも大きくたわむ。インパクトの衝撃で、とにかくフェースやボディをたわませるのが世界的なトレンドなのだ。採用される技術(構造/手法)は各社いろいろだが、目的はほぼ同じであると考えていい。インパクトの衝撃でフェースやヘッドをたわませることで、ボール初速をアップさせたり、バックスピンを減らしたりしようというのである。

“ギリギリ”というキャッチコピーでおなじみのプロギア「RS」のPR動画をみると、フェースの上で体操選手が跳ねているような絵が出てくる。あれはたぶん、トランポリン選手だ。フェースがたわんでボヨーンと戻るイメージを伝えたいのだろうな、と思ってみている。

8月6日に発表された“筋金入り”のキャッチコピーで話題の「TOUR B XD-3」(ブリヂストンスポーツ)も、「カーボンクラウンに金属の筋金を組み合わせることで、クラウンが大きくたわみ、そのたわみが鋭く復元することでボール初速をアップさせる」と担当者が説明していた。

画像: ブリヂストン「TOUR B XD-3」はクラウンに“筋金”を搭載し、たわみをより効率的に使えるよう設計されている(撮影/三木崇徳)

ブリヂストン「TOUR B XD-3」はクラウンに“筋金”を搭載し、たわみをより効率的に使えるよう設計されている(撮影/三木崇徳)

個人的にはこうした機能説明に接すると、アレレ、そうなの? 戻るから飛ぶんだっけ? と、毎度、違和感を覚えるのである。なぜなら、以前はちょっと違う理由でフェースやボディをたわませると説明されていたからだ。

自分が持ってもいないパワーを生み出して、遠くにボールを飛ばせるわけではない

フェースのたわみがクローズアップされたのは、2000年を境に始まった高反発ドライバー時代だ。当時も今と同じようにフェースを超薄肉化、そうすればフェースがたわんでボール初速がアップして飛ぶ! と宣伝されていた。しかし、たわんだものが素早く復元するから飛ぶ、という説明ではなかったように思う。

高反発時代、薄肉フェースにして打球面を大きくたわませる理由は、ボールを過度につぶさないためだった。軟らかいゴルフボールと硬い金属のドライバーヘッドが衝突すれば、ボール側が大きく変形してしまう。ボールが必要以上に変形するとそこにエネルギーが消費され、結果、ボール初速が落ちてしまうというのである。

画像: かつては、インパクトでボールの過度の変形を抑えるために「たわみ」があるという話だったが……(撮影/有原裕晶)

かつては、インパクトでボールの過度の変形を抑えるために「たわみ」があるという話だったが……(撮影/有原裕晶)

そこで薄肉フェースが登場。インパクトの衝撃でヘッド側もたわめば、相対的にボールの変形を少なくすることができる。変形が少なくなればエネルギーロスが抑えられるため、そのぶん初速がアップする。それが高反発時代のフェースやボディをたわませる、つまり軟らかくする理由だった。

当時はこれをテニスの硬式と軟式における、ボールとガットの違いに置き換えて説明したりもした。硬式ボールには太いガットをしっかりと張った硬いラケット面、ブニャブニャの軟式ボールを打つためには、ガットを細くゆるく張る。つまり、ボールと打球面の硬さを合わせることでボールの変形を調整し、効率良く飛ばし、コントロールもしやすくなっている、と。

ゴルフのドライバーもこれと同じで、とくにゴルフボールがどんどんソフトになっている中では、ヘッド側もこれに合わせてソフトにたわませる工夫が必要なのだと説明したのである。

おそらく、いま現在もフェースやヘッドをたわませる大きな目的は、インパクトでボールの過度な変形を抑えることにあるのだと思う。それによってエネルギーの無駄使いが減って、ボール初速がアップ、バックスピンも適正化される。その点では高反発時代と同じなのだから(当時も変形したボールとフェースの復元するタイミングを合わせることで、初速効率を上げる“インピーダンス・マッチング”という考え方があった)。

もちろん、違いはある。高反発時代はフェースが最もたわむ一点で当てなければ、高い効果は発揮されなかった(しかし、首尾よく最大たわみ点で打てれば初速アップ効果はものすごく高かった)。今は反発性能そのものが制限されており一発の飛びは抑えられているが、極薄クラウンやソールの溝、あるいはカップフェースなどの採用でフェースの広いエリアが等しくたわむようになった。広い打点でボールの変形が最適化するため、どこに当たってもそこそこ飛ぶ時代なのだ。

我々アマチュアは、打点がバラつくことが多く残念ながら持っているパワーをしっかりとボールに伝えることができていない。ヘッドのたわみは、そのパワーロスを軽減し、ボールに効率良く伝える役割を果たすのだ。

最新ドライバーを使えば、トランポリンのようなバネ的な力を借りて身長の倍も高く飛べるわけではない。強烈な復元パワーで自分が持ってもいないパワーを生み出して飛ばせるわけではないのだ。

今まで使えてなかった自分の力をフルに使って、もっと飛ばせるようになる。それがたわみ設計がトレンドになっている主な理由。普段、ミスヒットが多い人ほど、飛距離アップする可能性が高いのが今どきのゴルフクラブである。

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