「CATレディース」は2位と3打差でスタートした20歳の大里桃子が逃げ切りで初優勝を挙げた。最終日最終ホールの3打目、勝利を自ら手繰り寄せたスーパーショットをプロゴルファー・中村修が解説!

パーオン率79.6%で全体の5位タイ

勝みなみ、新垣比菜、畑岡奈紗選手たちと同じ黄金世代ながら、プロ入りが1年遅れ、この夏にプロテストに合格したばかりながら早くも勝利を挙げた大里選手。一体どのようなプレーヤーなのでしょうか。

この試合における3日間の平均飛距離は249.5ヤードで全体の19位。飛距離は十分にありますが、一方でフェアウェイキープ率は決勝に進出した全選手51人中51位。なんと最下位です。ところが、驚くのはまだ早く、それでいてパーオン率は5位タイ。平均パット数も4位タイと、いいところに乗せていたことがうかがえます。

画像: 黄金世代の一人として注目を浴びながら初優勝を挙げた大里桃子

黄金世代の一人として注目を浴びながら初優勝を挙げた大里桃子

ティショットの多くでラフにつかまりながら、アイアンショットの抜群のキレでグリーンをキャッチし、バーディを量産したことがわかります。なかでも、最終日最終ホール、18番パー5の3打目、ピンまで105ヤードをピンそば20センチにつけたショットはお見事の一言。

バーディを奪えば勝ち。自分がパーで同組の森田遥選手がバーディならばプレーオフという状況。バーディが欲しい状況で、左奥目のピンに対して大里選手は攻める選択をします。クラブはピッチングウェッジ。距離と方向、両方をしっかりとコントロールする必要のある一打です。

大里選手は身長170センチの大型プレーヤー。ゴルフにおいて高身長はメリットが多いのですが、コントロールショットにおいては長い腕を持て余すことがままあります。

とくに女性の場合、腕や胸の筋力が男性に比べて弱いので、大里選手のように身長が高く腕も長いと、どうしても振り遅れやすくなるもの。クラブが長くなれば長くなるほど振り遅れやすくなるのと理屈は同じで、男性ならば振り遅れないよう体の正面にクラブをキープできますが、それが難しくなるからです。

写真1を見ていただきたいのですが、大里選手はややアップライト(急角度)なスウィングで、クラブを縦に使うことで腕の長さを活かしています。手が頭より高い位置にあるトップから、インパクトでは体に近く低い位置に下りていますが、このようにクラブを縦に使うことで、振り遅れを防いでいるのです。

長い腕を余らせず、しっかりとボールにパワーを伝えられています。

画像: 写真1:高いトップの位置から体に近い低い位置に手元が下りる(2018年CATレディース 写真/岡沢裕行)

写真1:高いトップの位置から体に近い低い位置に手元が下りる(2018年CATレディース 写真/岡沢裕行)

さらに注目すべきポイントは、インパクトでの右腕とクラブが作る角度です。フルショットに近くなるとこの角度は180度に近づいていきますが、写真2を見ると、アドレスとほぼ変わらない140度前後の角度をキープすることができています。

このようにインパクトできれば、構えたライ角や、フェースの向きが変わらないので、方向性に狂いが生じません。

画像: 写真2:アドレスで作った腕とクラブの角度とほぼ同じ角度でインパクトしている

写真2:アドレスで作った腕とクラブの角度とほぼ同じ角度でインパクトしている

写真3のフィニッシュでは、グリップとクラブヘッドが胸の前におさまっています。これはクラブを走らせ過ぎずにヘッドスピードをコントロールしながら打てたという証拠。フェースの向きもインパクトの向きそのままといった印象で、フェースを返し過ぎないようにすることで方向性を出しています。

おそらく、短いパー4の2打目やパー5の3打目で使う、このくらいの距離のショット練習を徹底的にやったのでしょう。その成果が現れた一打だと思います。見事な一打、見事な初優勝でした。

画像: フィニッシュでフェースを返し過ぎずに距離感と方向性を両立させた

フィニッシュでフェースを返し過ぎずに距離感と方向性を両立させた

次々に活躍する黄金世代。その中から、また一人将来楽しみなプレーヤーが誕生しました。後半戦に向け、彼女たち元気な若手が、中堅・ベテラン勢と激しい戦いを繰り広げることで、ますますツアーが盛り上がっていくのではないでしょうか。

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