レギュラーツアー30勝のレジェンド・倉本昌弘によれば、プロはアプローチでもショットのときと同じようにボールにフックやスライス回転を与えるという。それはなぜ? そして、どうやって!? 著書「本番に強くなるゴルフ」から、アプローチの極意を紹介!

スピンをかけて傾斜を「消す」

アプローチにおける、プロのテクニックについてお話ししましょう。落とし場所は、グリーン上のなるべく平らなところに設定するのが基本です。しかし、コースに出るとなかなかそういう都合のいい場所がないケースも多い。

たとえば、グリーンエッジを超えたところは右に傾斜していて、ピンの手前は左傾斜になっているなどということもあるわけです。そんなとき、私は、ちょっとフック回転をかけてアプローチしたりします。

落とし場所が右に傾斜していて、その先が左に傾斜していると、2つのラインを読まなくてはなりません。でも、そういう複合ラインを完全に読み切るのは難しい。そこでちょっとフック回転をかけて、落とし場所の傾斜を消してしまうのです。

そうすれば、ピンの手前の左傾斜だけを読めばいいから、ライン読みが優しくなるというわけです。最近の若いプロはあまりやらなくなりましたが、昔のプロは多かれ少なかれ、こういう技を使っていたものです。今でも米ツアーに出てグリーンのアンジュレーションが複雑なグリーンで戦ってるプレーヤーなどは、フックやスライスを打ち分けざるを得ないケースに出合うはずです。

画像: フックはインサイドアウトの軌道で左回転をかける

フックはインサイドアウトの軌道で左回転をかける

たとえば、傾斜にピンが切ってあって、ピンの上は急傾斜になっているような場合。それをグリーン左から狙うとします(ピンの左が高く、右が低い)。この場合、普通はピンの左に打っていきますが、ピンの左が急傾斜になっていると、球は傾斜の影響で加速して下りてくるため、左に打てば打つほど、ピンの右まで転がってしまいます。

そんなときは、ピンの右の傾斜が緩いところにフックを打っていくのです。すると、ピンにピッタリは寄らないかもしれないけど、ピンの右2メートルくらいには止められる可能性が出てきます。このように、グリーンのアンジュレーションや速さによって、ピンの上に打ち出すより、下に打ち出したときのほうが寄る可能性も高い場合もあります。

画像: スライスはカット軌道でヒールからトウに抜いて右回転をかける

スライスはカット軌道でヒールからトウに抜いて右回転をかける

フック、スライスの打ち分け方は、基本的にはショットと同じ。フックだったら、ポジションはいつもと同じで、ちょっとインサイドアウトの軌道で、フォローでフェースを少しローテンションさせていきます。

スライスだったら、ヒールからトウに抜いていくようにカットする。すると、バックスピン量はあまり変わりませんが、左右にスピンがかかっているぶん、ワンバウンド目の跳ね方が変わる。だから、落とし場所の右傾斜を消したいときとか、落とし場所が逆目になっていて普通に打つと止まってしまいそうなときはフック回転。逆に左傾斜を消したいときとか、順目で前に行ってしまいそうなときは、スライス回転で打っていったりするわけです。

ただ、フックを打つにしても、スライスを打つにしても、それほどスウィングを大きく変えるわけではありません。動きを解説すれば、前述したような表現になりますが、それはあくまで言葉にするからで、実際には、いつもと同じテンポ、同じリズムでちょっと「フックでいこう」とか、「スライスでいこう」と「思う」だけ。それだけで十分に回転がかかる。いずれにしても、極端にやりすぎないようにすることが大切なのです。

「本番に強くなるゴルフ」(ゴルフダイジェスト新書)より ※一部改変

撮影/岩井基剛

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