ティショットやセカンドショットで果敢にコースを攻め、アプローチではスコアを守る……なんとなくそういうイメージがあるものだが、2005年にレッスン・オブ・ザ・イヤーを受賞した増田哲仁プロは「ゴルフには”攻める”も”守る”もない」と話す。自身の著書「ネジらない!から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る。」からスコアを守る考え方を紹介。

「守り」に見えるショットがもっとも攻撃的なこともある

――ゴルフはその日の調子やホール状況次第で「攻め」たり「守ったり」しなければいけないと思うのですが、「攻守」について教えてください。

たとえばトーナメントでピンが2段グリーンの奥にたっているような状況のアプローチでは、ロブショットで球を高く上げてピンの真上から落としていくよりも、7~8番アイアンで手前から転がしたほうが寄る確率が高く、上手くいけば入る可能性だってあるわけです。

ところが多くのアマチュアは、がむしゃらにピンを狙っていくことが「攻める」ことだと勘違いしています。冷静に見れば手前から転がすほうがチップインの可能性が高いわけですから、「攻め」ていることになります。

――無謀なショットが「攻め」ではないというわけですね。

そもそもゴルフには「攻める」も「守る」もないというのが、私の考えなんです。ゴルフというのは1番ホールから18番ホールまで、まったく同じ精神状態でラウンドできるのが理想です。ここは攻めよう、ここは守ろうと、ショットごとに考えることは、わざわざ心に波風を立てているわけで、自分から崩れる状況を作り出しているだけです。

ホールのロケーションやボールの置かれた状況、自分自身の技術やそのときの調子など冷静に分析して、攻守ではなく、その状況に合った「最善のショット」を選択する。考えることは、ただの1点です。

画像: その状況での最善ショットを考える

その状況での最善ショットを考える

――18ホールを同じ精神状態で臨めるようにするにはどうすればいいのでしょうか。

実戦のなかで使えるショットのバリエーションを練習して、数多く持っておくことです。たとえばショットが曲がって林の中に入ってしまったときに、左右に曲げたり、高低を打ち分けられなかったら、パーオンを諦めて横に出すか、木にぶつかるリスクを背負って、狭い隙間を無謀に狙っていくしかなくなってしまう。必要以上の安全策か無謀かの両極端な2つの選択肢しかないから、それが「攻め」か「守り」と勘違いしてしまうんです。

林の中に入っても、そこから右や左にボールを曲げて打つ技術があれば、ティショットを失敗しても、「一か八か」とかパニックになるようなことはありません。ベストスコアを更新できそうになると決まって崩れたり、スタートや上がり3ホールで大叩きしてしまう人も、状況に応じた選択肢が少ないのが原因だと思います。

ショットのバリエーションというのは、なにもボールを左右に曲げたり、高低を打ち分けることだけではありません。プレッシャーがかかったときや、ラウンド後半になって体力的な疲労が襲ってきたときに、自分のスウィングがどう変化するか。また、その変化に対してどう対処すればいいか。これを知ることもまたショットのバリエーションであって、ゴルフの技術のうちなんですよ。

――引き出しを増やす経験と練習をしなければいけないんですね。

順番にいうと、まずはスライス、フックと自分の持ち球をはっきり決めることからスタートして、それができるようになったら、今度は逆にボールを曲げてみたり、どのくらいやればどのくらい曲がるのかといった練習をする。またラウンド後に練習場へ直行すれば、体が疲れた状況のときに自分のショットがどう変わるのかもある程度知ることができるでしょう。

曲げる技術を磨くには、サンドウェッジ(SW)を使った練習が最も効果的です。SWは一番短く、一番重いクラブであり、手先だけでは動かしにくい。それだけに「体の動きで球を曲げる」練習に最適なのです。

また、SWは最もつかまりのよいクラブでもあります。その利点を生かして、スライサーでもフックを打つ練習、逆につかまりのよさを殺してスライスを打つ練習をしてみてください。そして練習したショットが必要な状況になったら、できなくてもコースで積極的にテストしてみることです。

――実践で試したほうが、身につきやすいんですか。

練習場で「覚えたこと」はあくまでも目安にしか過ぎません。それに練習場では何度もやり直せますから、プレッシャーもかからない。ですからコースで試してうまくいかなければ何の意味もないし、身についたとはいえないと思います。本番で試した回数が多ければ多いほど、本当に必要な場面で怖さを感じることがなくなるはずですし、成功する確率も高くなるはずです。

「ネジらない!から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る」(ゴルフダイジェスト新書)より ※一部改変

撮影/渡部義一

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