ブリヂストン、スリクソン、タイトリストといったツアー選手が多く使うブランドが、相次いで新製品を発売。昔はプロモデル=難しいというイメージだったが、2018年モデルはその印象がガラッと変わってきた。なにが変わり、どれを選ぶべきか。ヘッドデータから読み解く。

どれも“つかまり方向”に舵を切ってきた

ドライバーを評価する方法は大きく分けてふたつある。ひとつが実際に人やマシンが打つ試打テスト。もうひとつが、ヘッドサイズや重心データを計測する方法だ。今回は、ブリヂストン、スリクソン、タイトリストが発表した5つのモデルの重心データを計測。比較してみた。

計測したのはブリヂストンの「ツアーB XD-3(以下、XD-3)」、ダンロップの「スリクソン Z585(以下、Z585)」「スリクソン Z785(以下、Z785)」、タイトリストの「TS2」「TS3」の5本。計測を行ったユニバーサルゴルフ社の村田辰也がまず注目したのが、タイトリストの「TS2」だ。

画像: タイトリストの「TS2」はこれまでの同社のイメージとは大幅に異なる「つかまる」設計になっている

タイトリストの「TS2」はこれまでの同社のイメージとは大幅に異なる「つかまる」設計になっている

「今までのタイトリストにはなかった大きな重心深度(注1)、とくに軸線深度(注2)が極大化しているのが内部重心データでの大きな特徴です。史上最高クラスの初速性能を持ちながら、つかまりも両立しやすくするための工夫と見ても良いかもしれません。SS(スウィートスポット)高さ(注3)も低めで低スピン性能を狙ったものになっています。大きな投影面積とは裏腹に、非常に俊敏なヘッド挙動を達成しています」(村田)

注1:重心深度=ヘッド内部の重心からフェース面までの距離
注2:軸線深度=重心深度からFP(フェースの出っ張り具合)の深さを除いた数値
注3:SS高さ=フェース面上の芯の位置。低いほど、低スピンボールが打ちやすくなるその

軸線深度は深いほど球が上がりやすく、つかまりやすく、オフセンターヒットにも強くなる。要するに、やさしくなる。今回計測した5モデルの軸線深度の数値を比較したのが以下だ。

【軸線深度】
TS2:23.8ミリ
TS3:19.4ミリ
Z585:17.7ミリ
XD-3:17.4ミリ
Z785:15.4ミリ

タイトリストの2モデルが他メーカーのものよりも大きい数値となっていることがわかる。タイトリストのドライバーは“やさしい”というよりも、シャープ、操作性が高い、といったイメージがあるが、明らかな変化が重心位置から見て取れる。

それはつかまり度合いに大きく影響する重心角(クラブを平らに置いたとき、フェース面が上を向く角度)を比較してみても明らかだ。

【重心角】
TS2:31度
TS3:31度
XD-3:26度
Z785:25度
Z585:24度

一概には言えないが、重心角がおおよそ25度を超えるとつかまるドライバーと言え、つかまり性能に特化したドライバーであるヤマハの「インプレス UD+2」は重心角が33度であることを公表している。それに近い数字であることからも、タイトリストの2本のドライバーが過去の印象と異なることがわかる。実際、前モデルである「917」シリーズに比べ、大きく数値が増えている。

短い重心距離でつかまえる! ブリヂストン「ツアーB XD-3」

タイトリストとは異なる方法でつかまりの良さを目指しているのが、ブリヂストンのXD-3だと計測者・村田は指摘する。

「『筋金入り』カーボンクラウンの印象が大きいですが、内部重心の大きな特徴は非常に短い重心距離だと思います。少なめのFPはギリギリまでフェースが開いていても、一気にターンできる俊敏な操作性を感じることができます。人気モデル『ツアーB JGR』同様につかまるイメージを出しやすく、シャフト軸から大きく離れた重心設計を取らないことで他社モデルにはない特徴を出しています」

重心距離はヘッドのターンしやすさに大きく影響する数値。これが、XD-3は抜群に小さいのだ。数値を比較してみよう。

【重心距離】
XD-3:31.6ミリ
TS3:35.7ミリ
Z785:35.8ミリ
TS2:37.3ミリ
Z585:39.1ミリ

と、XD-3が突出して重心距離が短いことがわかる。FP、すなわちシャフト軸線に対してフェース面がどれだけ前に出ているかを表す値も16.9ミリとTS2の15.8ミリに次いで短く、フェース面があまり出っ張っていないこともフェースターンの容易さにつながっていると村田は指摘する。

前モデル、同じ名前のツアーB XD-3は重心距離がむしろ“長い”のが特徴のヘッドだった。重心角も前モデル比で大きく増えていることから、前モデルに「つかまらない」という印象を持った人ほど、使ってみて驚きを感じられるかもしれない。

画像: ブリヂストン「ツアーB XD-3」は前モデルと比べ、つかまり重視の重心設計がなされている(撮影/小林司)

ブリヂストン「ツアーB XD-3」は前モデルと比べ、つかまり重視の重心設計がなされている(撮影/小林司)

前作とガラッと変えたという意味では、スリクソンもそうだ。Z585に関して、村田はこう言う。

「前作から一線を画した、全く新しい設計がヘッドの各所に見られます。大きなFP(フェイスプログレッション)と平均的な軸線深度のバランスは、かつてのスリクソンとは大きく異なる点です。加えてやや少なめな重心角とフェースセンターにほど近いSS高さは、つかまりのバランスも最適化しています。接着ヘッド構造によるクラブとしての一体感は、地クラブ的なテイストの振り心地もある新生スリクソンです」(村田)

画像: バランス重視のスリクソン。Z585(右)とZ785(左)のラインアップ(撮影/姉崎正)

バランス重視のスリクソン。Z585(右)とZ785(左)のラインアップ(撮影/姉崎正)

タイトリストが深い軸線深度と大きい重心角、ブリヂストンが極めて短い重心距離でつかまりの良さを前面に押し出す中、スリクソンはバランス重視。Z585は数値的には同社の泣く子も黙る大ヒットモデル「ゼクシオ テン」に近づきつつ、“適度につかまる”というラインに落とし込んでいる印象だ。

「(可変式)スリーブ重量を加算した上で綿密な重心設計を行うこと個性を出している」と指摘するZ785も、数値的には前作よりもやさしさが強調されている。こちらは、“つかまるけれど、つかまり過ぎない”といったラインか。

主に内部重心の数値から導き出せる特徴を、以下にまとめよう。

TS2=非常に大きい重心角と非常に深い軸線深度でつかまえて飛ばす。ミスにも強い新種
TS3=非常に大きい重心角と深い軸線深度でやさしく飛ばす。短めの重心距離で俊敏性も確保
XD-3=非常に短い重心距離と大きい重心角でフェースターンでボールをつかまえて飛ばす
Z585=全体的なバランスの良さで振りやすさを追求し、ボールをほどよくつかまえて飛ばす
Z785=大きめの重心角と短めの重心距離でコントロールしながら飛ばす最新型

ブリヂストン、スリクソン、タイトリストから新たに登場したプロモデル5機種は、このようにヘッドの内部重心をみるとそれぞれ異なる設計思想を持つプロダクトであることが良くわかる。これらヘッドデータを参考に、ショップで試打を重ねれば、自分に最適なドライバーが見つかるはずだ。

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