スパインという言葉をご存知だろうか。背骨を意味するこの言葉、実はシャフトの性能を語る上でも使われ、ある新商品ではこの“シャフトスパイン”にフォーカスを当てた機能が搭載されている。果たしてシャフトスパインとはなにか。クラブの性能にどう影響するのか。ギアライターが考えた。

シャフトスパインとはそもそもなにか

新製品発表が続くゴルフ業界だが、今週も都内でホンマゴルフの発表会が行われた。同社のフラッグシップともいえるツアーワールドシリーズは、イメージカラーやロゴも一新。「TW747」というモデル名で、ドライバー、FW、UT、アイアン、ウェッジのフルラインナップで11月16日に発売となる。

その説明会で同社独自のキー・テクノロジーとして力説されていたのが、P-SAT(Precision Spine Alignment Technology)である。簡単にいうと、カーボンシャフトの背骨となる“スパイン”を徹底的に管理することで、最新技術によって最適に設計された新クラブのパフォーマンスを安定して発揮させる、というものだ。

何、背骨? スパイン? 疑問符がたくさん浮かんだ読者もきっと多いと思う。簡単にいうとと書いたが、この話題、なかなか簡単ではないのだ。

まず、シャフトの背骨(スパイン)とは何か。これは鉄芯にカーボンシートを巻きつけていった結果、最後にほかの面より厚く重なって残ってしまう箇所のことである。ビニールテープでもガムテープでも、巻き終わり部はその下の面よりも一巻き分多重となるため、そこに段差が生じる。カーボンシャフトにもこの巻き終わりの段差が手元から先端までまっすぐに走っているのである。

シートの段差が生じさせる問題は、厚さが違うことでそこに硬さの違いが生まれてしまうということだ。ホンマでは硬さの違いがシャフトの動き(振動の方向)に影響するため、常に一定の動きをしやすい位置に背骨(スパイン)を向け、ヘッドに接合しなくてはいけないと、昔から考えているというのだ。

画像: 大手シャフトメーカーの工場でも背骨(スパイン)を調べマーキング。それに対してロゴや模様の転写を正対して行うことが基本となっている(撮影/富士渓和春)

大手シャフトメーカーの工場でも背骨(スパイン)を調べマーキング。それに対してロゴや模様の転写を正対して行うことが基本となっている(撮影/富士渓和春)

具体的には、ホンマのクラブはすべて背骨(スパイン)が真下(6時方向)に位置するように組み立てられ、その組み立てを前提にヘッドの設計やシャフト自体の設計もされているのである。

スパインの向きが揃っていないより、揃っていた方がよい!?

クラブに詳しい方ならご存知だろうが、このシャフトスパイン(背骨)の話は、昔から性能に影響する、しないと、両論飛び交う難しいテーマになっている。街のゴルフ工房でも独自にシャフトスパインを調べ、組み立てに生かしているところが結構あるし、それだけにスパインとロゴの転写位置がズレている場合は、返品の対象になってしまうこともある。

そうした背景もあって、多くのシャフトメーカーでは製造段階でも必ずスパイン位置をマーキングし、それに対してロゴや柄を正対して転写するのが通例。基本的にはホンマ以外のカーボンシャフトも、信頼できる大手メーカー品ならスパインを意識して作られているのが現状である。

では、実際にこのスパインの位置(向き)が、スイング中のクラブの動きに影響を与えるのかというと、これが前述の通り、賛否両論あってはっきりとはしない。

たとえば、現在、ドライバーの標準装備になったシャフトの脱着システムだが、多くのメーカーではシャフトを回転させることで先端の角度が変わり、フェース向きやロフトが変わる可変式スリーブ方式を採用している。この場合、調整を加えるとスパインの向きが変わってしまうことになるが、この方式が多い現実をみれば、さほど影響なしと考えているメーカーが多いことになるだろう。

基本的にはスパインの位置は真上か真下を向いている方が安心だが、それが少しくらい変わっても影響はない。このあたりはメーカー云々より、実際に調整を加えて使っているゴルファーが判断していることのようにも思う。

せっかくクラブを買うならば、シャフトを回さずに済むものを選びたい。

ホンマゴルフにしても、スパインが6時を向いていなければ、いいショットが打てないとまでいっているわけではない。あくまでも所定の検査方法でシャフトが安定して動く位置がその方向であり、全てのクラブにおいて必ずその方向で組むことによって、セット全体で予測不能の動き、バラつきを防ぐことができるとしているのだ。

そうした細やかなこだわりこそが安心感や高品質の源であり、P-SATはそのわかりやすい一つの例ということだろう。ニューモデル「TW747」ドライバーには、ツアーワールドシリーズでは初めて可変システムが採用されているが、この機能はシャフトを回さずに角度が変えられる独自のもの。シャフトではなく、ヘッド側の受け部を回転させることでヘッドの角度を変えることができるのだ。

画像: シャフトではなく、ヘッド側の受け部が回転することでシャフトを回さずに調角ができる、TW747の調節システム

シャフトではなく、ヘッド側の受け部が回転することでシャフトを回さずに調角ができる、TW747の調節システム

スパインの影響。それがどれほどあるのか、正直いってよくわからない。しかし、よくわからないならば、その向きは一定方向に揃えておいてほしいと、個人的には思う。また、シャフトを回す可変システム付きが一般的な中で、こんなことを書くのは問題かもしれないが、せっかく新しいクラブを買うならば、シャフトを回さないで済むものを選びたいとも考える。可変システムはまさかのときの保険みたいなもので、使わないで済むにこしたことはないからだ。

そのためには、買った後のチューニングではなく、買う前のフィッティングに時間を使うことが大切だと感じる。丁寧に作られた道具を、丁寧に選ぶ。そうすればもっと確実に、進化の恩恵を受けられるはずだ。

※2018年10月5日18時51分、誤字を修正しました

This article is a sponsored article by
''.