メキシコで開催された米男子ツアーのマヤコバゴルフクラシックで40歳のマット・クーチャーが初日から首位を守る完全優勝で4年ぶりにツアー通算8勝目を飾った。その勝利を一番喜んだのは“オオハシ(くちばしがカラフルな南国の鳥)”のニックネームを持つ地元のキャディだった!?

ローカルキャディが運を運んできた

そもそもクーチャーはマヤコバに出る予定ではなかった。そのためエースキャディのジョン・ウッドは以前からほかのアポイントメントを入れていた。

ところが急遽出場を決めたためクーチャーはキャディ探しから試合を始めなければならなかった。知り合いを何人か当たったがことごとく断られ、最後はトーナメントディレクターに依頼し地元のキャディを紹介された。

彼の名はロバート。“オオハシ”のニックネームを持つキャディは190センチのクーチャーの肩にも届かない凸凹コンビ。

「2人とも気楽なタイプだからウマが合った。ローカルキャディが運を運んできてくれることもある。彼がいってることは的確だし、楽しく回れているよ」と初日にトップに立ったときからクーチャーは相性の良さを口にしていた。

画像: 4年ぶりの復活優勝、通算8勝目を挙げた(写真は2018年の全英オープン)

4年ぶりの復活優勝、通算8勝目を挙げた(写真は2018年の全英オープン)

初日にはこんなアクシデントも。同組で回ったザック・ジョンソンのキャディがラウンド中に体調を崩し傍目にも倒れる寸前。そこで観戦していたクーチャーの妻シルビさんが代役を務めることになった。

シルビさんは試合で夫のバッグを担いだ経験があり「ジョンソンとも面識があるから大丈夫だと思った」とクーチャー自ら妻を推薦。残念ながらジョンソンは予選落ちに終わったが初日の7番パー5の
イーグルをアシストするなどシルビさんの確かな仕事ぶりが光った。

ひと仕事終えた妻は再びギャラリーに戻り快進撃が止まらない夫を見守った。トレードマークの笑顔を絶やさず“オオハシ”との会話を楽しみながら72ホールを完走した夫が後続に1打差をつけ14年のRBCヘリテイジ以来の優勝を飾るとともに勝利の美酒に酔いしれた。

「バカンス気分で仕事ができたのは“オオハシ”のおかげ」と相棒をねぎらったクーチャー。2人の間でどんな契約が結ばれていたのかわからないが、通常優勝するとキャディの取り分は賞金の10パーセント。

今回の優勝賞金は129万6千ドル(約1億4500万円)だから1450万円が“オオハシ”のギャラとなる。
ローカルキャディの月収が5万円前後といわれているから1450万円は単純計算して年収24年分に相当する。さぞかし笑いが止まらないだろう。

そして雇い主のクーチャーも笑いが止まらない。40代になって初めての優勝に「これでハワイに行ける!」と19年初戦のセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ(前年の優勝者のみに出場が許される)出場を手放しで喜んだ。

勝とうと思うと勝利は逃げていく。バカンス気分でプレーしても勝つときがある。クーチャー本人がいうように「ゴルフは不思議なゲーム」である。

撮影/姉崎正

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