従来、シャフトは“軽くて柔らかい”か“硬くて重たい”の二択だった。しかし、2018年は“軽くて硬い”という新種のシャフトに大きな注目が集まった一年だったとギアライター・高梨祥明は言う。では2019年、シャフトはどのように進化していくのだろうか?

軽いは軟らかい、硬いは重たいを覆した2018年。

2018年は“軽・硬(かるかた)”シャフトに一部の興味が集まった年だった。私自身もフジクラの「プラチナム・スピーダー」の4Xや5Xで実験ドライバーを作り、主にレディースやシニア層のゴルファーに試してもらったりした。

通常、ものすごくしなるシャフトを使う人にとって、硬いシャフトは振りにくく感じられるのではないか? とも思っていたのだが、それはまったくの杞憂だった。なにしろ、打っている人たちが硬度X表記のシャフトだとはまったく気がつかないからだ。40グラム台、50グラム台であれば人は振りやすく感じる。そういう印象を持った。

従来、硬いシャフトは重たかった。軽さのためにカーボン積層を薄くすれば軟らかくなり、硬くするために積層を増やせば重たくなる。これこそが自然の法則であり、エンジニアからすれば二律背反の超難問だったのだ。

ところが近年、カーボン素材の革新が進み、高弾性で薄くても強靭な新素材、接着材が極端に少なくて済む夢の軽量素材があらわれた。1本のシャフトを作るのに数種類の最新素材を適所に使い、狙った強度(硬さ)と重量配分とすることが可能になったのだ。

軽量化技術をドライバー以外のシャフト設計にも活かす。

PGAツアーの猛者が60グラム台のシャフトを普通に使う時代だから、もはや軽量であることはドライバーシャフトの基本要件になっている。飛距離を欲しがるアマチュア向けのプレミアムモデルになると、30グラム台のシャフトも珍しくはなくなってきた。

ちょっと昔ならば30グラム級のシャフトなど作ってみたところで、薄肉すぎてポッキリ折れてしまっていた夢の領域である。それだけ現在はカーボン材料の技術が上がり、補強のための設計技術も高度になっているのである。

画像: カーボンシャフトも自社生産。だからこそ必死に難題克服に挑み18年で約10グラムの軽量化を達成した『ゼクシオ』のシャフト(撮影/阪上恭史)

カーボンシャフトも自社生産。だからこそ必死に難題克服に挑み18年で約10グラムの軽量化を達成した『ゼクシオ』のシャフト(撮影/阪上恭史)

こうした軽量でありながらある程度しっかり感のあるシャフトの開発は、日本のプレミアムドライバー、しかもその純正シャフトがリードしてきた。その筆頭は、ご存知「ゼクシオ」である。最新「ゼクシオ テン」の専用シャフトMP-1000は、硬度Rで40グラムと超軽量。2000年発売の初代ゼクシオの専用シャフトMP-100は、硬度Rで49グラムだったから、この18年で約10グラムも軽量化できていることになる。

その超軽量と並行して、さらに部分的にここを硬く、重たくなどと細かな設計を施してきたのが、現在の「ゼクシオ」専用シャフトなのだ。ゴルファーの中には、モデル専用シャフトをアフターマーケット用の単品売りシャフトよりも下にみる人もいるが、プレミアムドライバー用の超軽量シャフトに限っていえばこの見方はまったく当たっていない。高価な材料と高度な技で作り上げられた “超ハイスペック”なシャフトだといえるのだ。

2019年もこうした軽量“ハイスペック”シャフトはどんどん主流になっていくと思われる。なぜなら、時代はすでにヘッド単体ではなく、ヘッド、シャフト、グリップをトータルにした“クラブ”としてどう飛距離を伸ばしていくか、という方向に完全シフトしているからである。

これまでの軽量シャフトは軟らかかったがために、どこかシニアな香りがしていたが、この先はそこそこ硬い“振れる軽量モデル”も増えていく。

個人的にはそうなった場合、ますますドライバーだけがキャディバッグの中で、異様に軽くて、振り感の違うクラブになっていく危険を感じてしまう。すべてのクラブで一貫して振りやすく、つながりのあるゴルフクラブセットはできないものだろうか?と、考えてしまうのだ。

超軽量の技術は、何にでもトライできる設計上の“自由“であるはずだ。ドライバーだけでなく、UTやアイアンシャフトの超進化にも、来年は期待したいところである。

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