「ヒーロー・ワールドチャレンジ」を制したのはジョン・ラーム。今大会はジョン・ラームも幼少期から憧れ続けているというタイガーがホストを務める。プロ2年目に感じる成長を本人に聞いてみた。海外取材豊富の元ゴルフ編集長が語る。

2000年の全米オープンのハイライト動画を150回繰り返し視聴

先週、バハマで行われていた「ヒーロー・ワールドチャレンジ」。世界のトッププロ18名のみが出場できるPGAツアーの非公式大会だが、タイガー・ウッズがホストを務め、この大会に呼ばれることがエリートゴルファーのステータスとなっている。

一昨年には、当時5戦4勝という破竹の勢いの松山英樹が優勝し、憧れのタイガーからトラをかたどった優勝トロフィを授与されたこともある。

さて、今年の優勝者もまた、幼少の頃からタイガーに憧れていた「暴れん坊・ランボー」ことジョン・ラーム。2位のトニー・フィナウを4打差で抑えて今大会初出場で初優勝を遂げた。2000年の全米オープンではタイガー・ウッズがぶっちぎり優勝を果たしたが、ラームはその時のハイライト動画をなんと150回も繰り返し視聴し、ユーチューブでも彼のショットや優勝シーンなどをほとんど全て観ているというほどのタイガーマニアなのだ。

「僕はセベ(バレステロス)とタイガーの動画はユーチューブでほとんど観ている。(フィアンセの)ケリーに聞いてみてほしいんだけど、彼女とデートを始めた頃からずっとタイガーの動画を観ていたんだから。彼女はゴルフのことはよくわからないけど、パソコンで彼女にもタイガーのハイライトシーンやペブルビーチでの優勝シーンを何度も見せてるよ。こうしてすばらしい選手たちの偉業を見て学び、自分のゴルフに生かすことは大事なことだと思っている」

その憧れのタイガーとは今年、何度か交流があったジョン・ラーム。

画像: 憧れのタイガーがホストを務める今大会で優勝を挙げた(写真提供/PGAツアー)

憧れのタイガーがホストを務める今大会で優勝を挙げた(写真提供/PGAツアー)

ツアー選手権の会場で、タイガーが隣でパッティング練習をしていたことがあり、彼は“タイガー、僕にバミューダ芝のパットのコツを教えて”と聞いたことがあったという。ポアナや、ベントグラスのコースでゴルフを覚えたラームは、バミューダの攻略法はわからなかったのだ。すると彼は笑って、“感覚で打つことが大事だ”と教えてくれたという。

「今日こうしてバミューダ芝のグリーンを攻略して、優勝できたんだから、上出来でしょう?」

また、ライダーカップの最終日のシングルス戦ではタイガーとのマッチアップで勝利し、チーム優勝に貢献することができた。彼はその時のことを振り返り、「僕のゴルフ人生の中でも、あの日はベストな瞬間だったと言える。彼に勝って、少しは僕のことも1人前のゴルファーとして見てくれていると思うけど、あの日は我ながら自分をうまくコントロールできた1日だった」と語っている。

昨年に続き1年間で3勝を挙げるペースで勝ち続けているラームだが、「タイガーがこれまでやってきた20年間に比べたらまだまだ……」と言いながらも、自分自身の成長を確信している部分もある。

「去年22歳でプロ1年目を経験し、今年は2年目。まだまだいろいろなことを勉強しているが、あんなに小さな(スペインの)街から出てきて突然世界の大舞台で、世界のベストプレーヤーの一人としてプレーしているのだから、ナーバスになることもある。でもこの2年で人間的にもたくさん成長していると思う。今年を一言でいい表すなら“成長”かな。ゴルファーとしてだけでなく、人間としてもすごく成長できた1年だった。それがゴルフにも表れているんだと思う」

彼のプレーを観ていると、調子の悪い時はクラブを叩きつけたり、バッグを叩いたりと癇癪持ちの暴れん坊で、「ランボー」のように熱い男。近づきがたい雰囲気を醸すが、たしかに去年に比べると若干改善されてきたようにも思う。取材で話しかけようとしても、去年までは近寄りがたい雰囲気があったが、今年はタイミングを見計らえばきちんと話をしてくれるようになった。

バレステロスやガルシアなど、従来のスペイン人選手に比べると完全に「アメリカナイズ」されたスペイン人。英語もまるでアメリカ人のように流暢だし、持っている雰囲気もダスティン・ジョンソンなどのようにアメリカ人選手そのもの。その分、少しスペイン人の持つ「陽気でフレンドリー」という国民性とはかけ離れているような気もするが、そんな彼も、大学入学前は「英語が話せなかった」というからビックリだ。なんでもラップなどの音楽を聴いて、英語のリズムや発音を学んだのだという。

今年は世界ランク2位にまで上り詰めたランボーが、今大会で弾みをつけ、いよいよ来年は念願のメジャーを制し、世界ランク1位に躍り出ることができるか? 乞うご期待! 

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