ルーキーながら早くもPGAツアーで1勝を挙げ、平均飛距離にして約330ヤードを飛ばす飛距離とともに注目を集めるキャメロン・チャンプ。統計学的データ分析の専門家、ゴウ・タナカが、その圧倒的な飛距離を生み出すスウィングを分析!

2018-2019年シーズンですでに1勝を挙げ、タイガーウッズと比較されるほど注目をあびているキャメロン・チャンプだが、彼の武器は何といってもその圧倒的な飛距離だ。

画像: 平均330ヤードという圧倒的飛距離をもつキャメロン・チャンプ(写真は2017年の全米オープン 撮影/岡沢裕行)

平均330ヤードという圧倒的飛距離をもつキャメロン・チャンプ(写真は2017年の全米オープン 撮影/岡沢裕行)

現在の平均ヘッドスピードとボール初速はダントツ1位の130.20mph(58.2m/s)、193.61 mph(86.55m/s)で、2位とそれぞれ6mph(2.68m/s)ほども差をつけている。去年平均ドライビングディスタンス1位の、あのロリー・マキロイの平均ヘッドスピードはは121.41mph(54.27m/s)である。いかにチャンプが抜きんでているかが分かるだろう。

とにかく飛ばすチャンプのスウィングを分析して、そのヘッドスピードの秘密を探ってみたところ、そのスウィングは私の知る限りもっとも効率のよいシャフト、そしてヘッドの使い方をしていることが分かった。

いかに効率よく腕の動きに対してヘッドを速く走らせているかというのを数値化したことがある。それはダウンスウィングでの「タメ」とフォロースルーでの「たたみ」の効率を数値化したものだ。

画像: ダスティン・ジョンソンは、タメが強く(写真左)、たたみも速い(写真右)タイプの代表的なプレーヤーだ(撮影/姉崎正)

ダスティン・ジョンソンは、タメが強く(写真左)、たたみも速い(写真右)タイプの代表的なプレーヤーだ(撮影/姉崎正)

ダウンスイングでシャフトと左腕が作る角度が最初に90度以上になる位置と、フォローでシャフトと右腕が作る角度が最初に90度以下になる位置から算出した独自の数値で、グリップが動く距離に対してクラブヘッドが動く距離を表している。少ないグリップの移動距離に対してヘッドがより多く動いている方が効率が良いことになる。

画像: チャンプは「タメ」と「たたみ」の効率数値130という驚異的な数値をたたき出した。(撮影/田辺安啓)

チャンプは「タメ」と「たたみ」の効率数値130という驚異的な数値をたたき出した。(撮影/田辺安啓)

ダウンスウィングでタメが強ければ強いほどインパクトにむけて、ヘッドは強くひかれた弓矢のように加速する。タイガー、マキロイ、バッバ・ワトソンなどは、このタメを非常に強く使えているプレイヤーだ。それと同じように、フォローでもヘッドをグリップの動きに対していかに速く動かせるかは、同じ力でよりヘッドスピードを速くする重要な要素となる。

バッバ・ワトソン161(少ないほど無駄が少なく効率が良い)、マキロイとDJは198、飛ばし屋ブランドン・ハギーが184だ。タイガーはタメの強いタイプだが、この数値は303と彼らに比べ高い。その理由はフォロースルーでのたたみがかなり遅いことである。ただ、このスウィングタイプのコントール性は上がりやすいと言える。ちなみに我らが松山英樹は290だ。

今まででもっとも効率の良かったプレイヤーはバッバ・ワトソンだったが、なんとチャンプは130という驚異的な数値をたたき出した。とにかく言えるのは、ダウンスウィングで半端ではないタメを作りインパクトで加速させた後に、ものすごいスピードでヘッドがたたまれていくのだ。ダウンスウィングでリストの使い方がやわらかく、フォローにむけて返しが非常に強いということが言える。

インパクトでは腰がほぼ完全に開いているほどの下半身リード

上のヘッド効率がすでにその飛距離の秘密を物語っているが、もう1つ飛距離と直結する彼のスウィングの特徴は、やはり切り返しでの腰の切り方の早さだ。右ひざが前に出ていくのが非常に早く、腰もかなり早いタイミングで回転しはじめ、インパクトではもう腰が完全に開いているほど下半身リードでスウィングしている。

にもかかわらず上半身、そして末端である腕も下半身に対して遅れてきておりカット軌道にもならない、理想的な捻転、ラグをつくりだしている。そしてインパクトは、このスピードの中でもデータ的に超一流に共通する。

画像: インパクトの時に腰が完全に開いて、下半身リードになっているのがわかる(撮影/田辺安啓)

インパクトの時に腰が完全に開いて、下半身リードになっているのがわかる(撮影/田辺安啓)

一方、R160(筆者が提唱する、インパクトで左腕とシャフトが作る角度が160度以内という一流選手の条件)を満たした150度でインパクトできている。つまり安定感もあるスウィングだ。ジャスティン・トーマス、バッバ・ワトソン、ダスティン・ジョンソンなど飛ばし屋は脚の蹴りを強く使う傾向にあるが、チャンプの脚の蹴りは意外にも彼らに比べかなりおとなしい。

蹴りよりも捻転、そしてヘッドの効率的な動かし方で飛距離を出しているタイプだ。脚の蹴りを使えばもっと飛ばすことができると考えると末恐ろしい。身体への負担はスウィングスピードの割に少なそうだが、手首への負荷は強そうなのでそこが少し気になるところだ。

画像: チャンプは腕とクラブが作る角度は150度でインパクトできている。(撮影/田辺安啓)

チャンプは腕とクラブが作る角度は150度でインパクトできている。(撮影/田辺安啓)

ではアマチュアがこのチャンプ流から参考にできることはあるのだろうか? まず、腰の切り返しだが、よほどの柔軟性がない限り下半身先行を意識すると上半身も一緒についてきてしまいカット軌道を誘発しひっかけ、スライスが強くなってしまう人が多いだろう。距離は伸びずにミスが増えてしまう。非常に難しいテクニックだ。

では、チャンプのようにヘッドをうまく走らせることはできるのだろうか? まずタメだが、これを意図的に作ることはできたとしても、それで今まで通りインパクトし良い球を打つことは難しい。タメを作ると基本的にはハンドファーストが強くなり、上から鋭角にインパクトをしがちになる。ヘッドスピードがないプレーヤーは球をまともに上げることができないだろう。

つまり飛距離を伸ばすことはできずに、ミスが増えてしまうだろう。なので、唯一可能性があるとすれば、フォローに向けてヘッドを走らせることだ。ただ、この動きも手首を使い意識的に早くヘッドをたたんでいくのでひっかけなどが最初は出ることは覚悟しなくてはいけない。ミスは増えるがタイミングをつかめば距離は伸びる。

以上をまとめると、どれも難しく参考にするのは容易ではないことが結論づけられてしまい、やはりアマチュアはミート率を上げることに専念するのが近道だろう。ただあえてチャレンジするならたたみを早くすることだ。是非、チャンプの異次元のタメとたたみに注目していただきたい。

撮影/田辺安啓

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