男子ツアーで活躍する時松隆光が幼少期から師事し、テンフィンガーグリップをはじめとする桜美式「OSゴルフ理論」で多くのジュニアゴルファーを育成するゴルフ向学者の篠塚武久。スウィング中の体のねじりこそが飛距離を生むという教えは多いが、篠塚によれば「あまりにも多くのことを犠牲にしている」やり方だという。篠塚の著書「10本で握る テンフィンガースウィング」より、体をねじらない“桜美式スウィング”の極意をご紹介。

体をねじらないからスウィングがシンプルになる

時松プロのフィニッシュ(画像1)を見てください。彼はフィニッシュで、体をねじっていません。何もねじらないから、ラフや傾斜、雨や強風などの天候にも強いショットが打てるんです。これは左右分担型グリップ、テンフィンガーの特徴です。

画像: (画像1)時松隆光は体をねじらずにスウィングしている

(画像1)時松隆光は体をねじらずにスウィングしている

左右分担型のテンフィンガーは、雨でどんなに濡れても、滑りにくいし、ゆるみにくい。それに、利き手である右手で直接グリップを握れるので、天候が悪いときほど右手の感性が生きてくる。「桜美式」はグリップだけでなく、スウィングも雨風に強いんです。

普通は、腕をねじってテークバックし、それをインパクトでねじり戻す、いわゆるフェースローテーションの繊細な動きを駆使してスウィングしています。フェースの開閉を1000万分の1秒単位でインパクトにピシャリと合わせる複雑な離れ業です。

「肩は入れる」のではない

一方「桜美式」は、腕はねじらないから、フェースの開閉はほとんど起きません。テークバックからシャット気味に上げていき、そのまま下ろしてくるだけというシンプルな構造のスウィング。

そして、テークバックするとき、左肩がどんな動きをするか。従来のように両手合体型グリップで腕をねじりながらクラブを上げようとすると、「肩を入れる」動きになりがちです。

左肩をあごの下へと入れていき、トップを遠くへ高く上げるようなテークバックです。これだと、腕だけでなく、体までダブルでねじり込む動作になりますから、スウィングがさらに複雑で、不自然で、苦しいものになってしまう。

このねじり込みこそが飛距離を生むんだと言う方も多いようですが、あまりにも多くのことを犠牲にしている。スコアメークで大切なのは、10ヤードや20ヤード飛距離を伸ばすことではなく、真っすぐに飛ばす方向性と、クラブのロフトに応じた飛距離をきっちり出せる距離感です。それには、毎ショット同じスウィングをする再現性が最重要になってくる。

画像: 再現度の高いスウィングをするには肩を水平に入れず、縦に回すことを意識するといい(写真は2018年のVISA太平洋マスターズ)

再現度の高いスウィングをするには肩を水平に入れず、縦に回すことを意識するといい(写真は2018年のVISA太平洋マスターズ)

「桜美式」では、「肩を水平に入れなさい」とは教えません。しかし、時松プロのようにトーナメントでどうしても飛距離を稼ぎたいという心理が無意識のうちに働いたときに、少しだけ「肩を入れる」動作が生じてしまうこともあります。そんなとき、私は、「肩は水平に入れるものではなく、縦に立体的に回すものだよ」とアドバイスします。

トップがいつも同じところに収まる

テークバックで左肩をあごの下に入れるのではなく、その場で肩の関節を回すだけです。いいドリルがあります。人に正面に立ってもらい、長い棒を左肩に当ててもらいます。その棒があごの下へと引っ張られてしまうことがないように、その場でテークバックする。棒が動かなければ、「肩を入れる」ではなく「肩を回す」動きができています。

画像: 肩を横に入れるトップ(写真右)では、いつも同じところにクラブを上げられない。写真左のような状態がテークバックできていれば、肩を回せている証拠

肩を横に入れるトップ(写真右)では、いつも同じところにクラブを上げられない。写真左のような状態がテークバックできていれば、肩を回せている証拠

その場で「肩を縦に回す」。これだとトップをどの位置に上げるか迷うようなこともなく、毎回同じ位置に自然と上げられてスウィングが安定するはずです。それに、体をねじらないので、窮屈な感じがなくなります。ねじるという動きに人間は弱く、ゴルフで何千何万とねじって、ねじり戻してと繰り返していれば、腰や肩を痛めてしまうのは当然です。

時松プロは練習の虫ですが、過去に一度も大きなケガはありません。「桜美式」は、自然で、簡単で、安全がモットー。ショットが不安定な方や、ケガをされたことがある方は、「10本で握る」グリップを試してみてください。

「10本で握る テンフィンガースウィング」(ゴルフダイジェスト社)より *一部改変

撮影/姉崎正

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