神奈川県出身のプロゴルファー・祖父江歩を中心に立ち上げられた「神奈川レディースオープン」。昨年から始まった1日競技の小さな試合だが、祖父江によれば、この試合にはある思いが込められているという。本人に聞いた。

地元を愛するゴルファーを増やして盛り上げたい

ツアープロにとって12月はオフシーズンだが、そんな中、戸塚カントリー倶楽部(神奈川県)で行われたのが「神奈川レディースオープン」というワンデー競技だ。神奈川出身の原英莉花、吉田弓美子など、レギュラーツアーで活躍する選手も数多く出場し、大会を盛り上げた。

画像: リーダーボードも用意され本格的な試合の雰囲気

リーダーボードも用意され本格的な試合の雰囲気

同じく神奈川県出身で、今年レジェンズツアーで初優勝を飾った祖父江歩を中心とした神奈川女子プロ会が主催するこの大会は、プロ90名とアマチュア30名が出場するというワンデーながらかなり大規模な大会で、プロ3人とアマチュア1人が一緒にラウンドする競技方式を採用。「レディース」とつくだけあって、参加者はアマチュアも含めて全員女性。アマチュアは、学生を含む若手も参加でき、神奈川県アマから10名、神奈川県ミッドアマから20名が参加した。

大会は実に本格的で、今年はギャラリーの入場も解禁。若手女子プロも多く参加するということもあり、多くのゴルフファンが集まった。

神奈川県出身で、今年レギュラーツアー4試合に出場したプロゴルファーの植田希実子はこの試合についてこう話した。

画像: 神奈川県出身のプロゴルファー植田希実子「この大会をもっと盛り上げたい!」

神奈川県出身のプロゴルファー植田希実子「この大会をもっと盛り上げたい!」

「私は神奈川県の女子プロ会のメンバーなので、少し運営にも携わりながら出場もしました。運営側としては、最高のお天気で今日を迎えられたのが嬉しいですし、アマチュアの人たちも勝ち抜いて上位で上がってきている人たちなので、すごく上手な方も多くて感心しちゃいました。実際はアマチュアの人のほうが緊張しちゃうと思いますけど(笑)」(植田)

このコメントからも、この試合が“手作りの大会”であることがわかる。ただ、植田の言う通りアマチュアにとっては真剣勝負のプロとプレーできる貴重な機会。実際、見ているとプロとアマチュアとの間に交流が生まれ、真剣さの中にも笑顔が多い大会だと感じた。

実は新規大会ではなく、20年越しに復活させた

神奈川レディースオープン実行委員会の代表でプロゴルファーの祖父江歩は言う。

「新規の大会と思われていますが、実は今もある『神奈川オープン』という大会の女子の部を復活させたものなんです。1996年、私がプロテストに受かったときは神奈川オープンには女子の部もあったんですが、その年の大会で女子の部は終わってしまった。当時も地域の100社くらいに協賛して頂いて、応援してくださって、TVK(テレビ神奈川)さんも来てくれて、すごく温かいなって思った大会だったんです。いつか自分が復活させようと思って、昨年20年越しに復活させました」(祖父江)

と、この試合の復活が、自身がプロゴルファーになって以来の念願だったと話す。その実現の過程では、プロたち自らが、自分の戦う場を作るべく奔走したようだ。

画像: 2018年大会優勝の照山亜寿美(左)と祖父江歩(右)

2018年大会優勝の照山亜寿美(左)と祖父江歩(右)

「プロたちで実行委員会を作り、神奈川ゴルフ協会にもタイアップして頂きました。(今年参加した)吉田弓美子選手、原英莉花選手も神奈川アマ出身なんですよね。その子たちがみんなプロになって、今度は神奈川アマの人たちと一緒に回る、地元に帰ってくるという感じでゴルフ協会としても嬉しい。だからなるべく神奈川出身、神奈川県アマに出ていたという人たちはなるべくこの大会に出てもらいたいと思っているんです。昨年は福嶋浩子選手が優勝して嬉しかったですね。彼女も神奈川アマ出身ですから」(祖父江)

神奈川のアマチュアゴルファーがプロとなり、再び神奈川の地に戻ってアマチュアゴルファーと同じフィールドで戦う。たしかに、そのサイクルが繰り返されることで、神奈川の女子ゴルフが活性化することは想像に難くない。

そして、この神奈川発の試合は、全国に“飛び火”しそうな気配を見せているんだという。

「実は、帯広国際カントリークラブで道東オープンというのをやっているんですが、(地元の)大場美智恵プロが(神奈川レディースオープンを見て)女子の部を作りたいって。彼女がそれを同期で熊本出身の平尾南生子プロに話して今回見学に来てもらっているんですが、『私も九州オープンをやる』って言っていました。こうやって神奈川レディースオープンに視察に来てもらって様子を勉強してもらって、色々なプロに自分の地元でやってもらいたい。そこからゴルフの裾野を広げていきたんです」(祖父江)

ここまではあくまでも女子ゴルフ、そして競技ゴルフの活性化の話。祖父江には、この大会を通じて実現したい“もうひとつの目標”があるのだという。

画像: さらなる活性化を目指す

さらなる活性化を目指す

「プロギアさんにお願いをして、試打クラブだったものをご提供頂いて、高校にゴルフ道具を寄与します。ゴルフに触れる機会って家族や親せききっかけが多いと思うんですが、そういう部分以外でゴルフに触れる機会を増やしたい。ゴルフ人口を増やすためにきっかけを作って一歩踏み出すというのも私たちの目標です」(祖父江)

この日のギャラリーは500人弱。初めてギャラリーを入れた手作りの大会としては素晴らしい数字ではないだろうか。ゴルフをしたことがない人にとってはゴルフに触れる機会を作り、競技アマにとってはプロと戦えるまたとない機会となる。全国でこのような試合が次々に生まれる、そんな日は近いかもしれない。

撮影/矢田部裕

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