反発力で勝るレジェンドクラブ。最新モデルは上回ることができるか!?
最新モデルは過去のクラブと比べて果たして本当に飛ぶのか? ゴルファーならば、誰もがこの疑問を抱いたことがあるだろう。反発係数がルールで規制される前の高反発ドライバーと打ち比べたら、もしかしたら最新モデルでもかなわないのではないか……?
しかも、今回ミズノプロの2モデルがガチンコ対決を行うのは、ミズノが誇る名器たちだ。
まずは「ミズノプロ300S」。1999年にこのドライバーを使って“怪物”川岸良兼が復活優勝を遂げ、米山剛や手嶋多一といったプロたちがツアー初Vを手にした伝説のドライバー。
「300Sが飛ぶ!」というウワサはツアーの間で瞬く間に広まり、契約外のプロも「300S」をキャディバッグに忍ばせて、違うヘッドカバーをかぶせてカモフラージュするほど。この“青いイナズマ”の快進撃によって、プロモデルも「ドライバーの大型化=300cc時代」に入った。そして多くのアマチュアが「300S」に夢中になった。
もう1本の“レジェンドドライバー”は2005年発売のモデル「JPX E300」だ。SLEルール、いわゆる高反発規制が施行される3年前にリリースされた高反発モデルであり、それまでにないレベルの“たわみ”を持つ「生チタン」と呼ばれるフェース素材を用いた飛び重視のドライバーで、ヘッド体積は399ccまで大きくなった。
実はミズノプロ300SやJPXE300は、今回のミズノプロの2モデルのフェース素材として採用された“βチタン”と同じ素材。ミズノプロはこの“禁断の素材”を使用して一旦ルール上限を超える反発性能を出し、そこからルール内に収めるという製法を採用することで、ルール内での過去最高の反発性能を獲得している。
伝説級のクラブとはいえ、今打って本当に飛ぶのか? ましてや、メーカーの倉庫でいわば“資料”として眠りについていたクラブだ。答えを先に言おう、試打者である中村が驚くほど飛んだ。
「まずは300Sですが……いまだにホレボレする形状です。もちろん私も実際に使用していましたが、今打つとヘッドが小ぶりで、想像以上につかまります。計測してみると、低スピンのライナー弾道で、グイグイと前へ飛んで転がる球が打てました。一方のJPX E300は、さすがの反発性能。非常に球離れが速いです。ただ、どセンターで打った場合にスピンが多く入るのは意外でした」
というわけで計測結果は以下の通り。ヘッドスピード43m/s前後で飛距離はどちらも250ヤードを超えてきた。正直なところ、最新モデルドライバーの計測値と言われても納得の数字が並んでいる。とくにミズノプロ 300Sは試打者中村のかつてのエースクラブということもあり、トウ側上目に当てて飛ばすという“飛ばし方”を熟知していたこともあり、なんと260ヤードに迫る数値を叩き出している。これを超えるのは容易ではないが……。
【ミズノプロ 300S】
ボール初速 打ち出し角 スピン量 キャリー 飛距離
63.1m/s 10.7度 2317rpm 229Y 259Y
【JPX E300】
ボール初速 打ち出し角 スピン量 キャリー 飛距離
63.9m/s 11.2度 3316rpm 233Y 251Y
新作ドライバーの「モデルE」「モデルS」はこの記録を超えていくことができるだろうか!?
圧倒的な飛距離性能を示した「ミズノプロ モデルE」
結論を言えば、飛んだ。とくに、ミズノプロ モデルEは、キャリーで15ヤード、トータルで10ヤード飛距離で凌駕。伝説の名器であるミズノプロ300S、JPX E300を軽々と超えていった。
また、キャリーではそれに引けをとらなかったものの、コントロール性重視でスピンがやや多めに入るモデルSは、モデルEに総飛距離では及ばなかったものの、レジェンドドライバーの叩き出した記録はラクにクリアしている。
【ミズノプロ モデルE】
ボール初速 打ち出し角 スピン量 キャリー 飛距離
64.8m/s 13.4度 2434rpm 244Y 269Y
【ミズノプロ モデルS】
ボール初速 打ち出し角 スピン量 キャリー 飛距離
64.2m/s 11.7度 2821rpm 242Y 262Y
「ニューモデルの2機種は総じて、フェースの広いエリアでボール初速が稼げる上に、打ち出しが高くなってスピン量が抑えられています。いわゆる“飛びの3要素”をトータルでバランス良く高めている印象ですね。一発の飛びでも、平均飛距離でも、曲がりの少なさにおいても、文句なしに最新モデルのほうが飛ぶという結果となりました。長い年月をかけて積み重ねたクラブ作りのテクノロジーやノウハウが、結果=飛びにしっかり反映されているのでしょう」
新・旧ドライバーを打ち比べて、一目瞭然なのは「ヘッドの大型化」だ。ヘッドが大きくなれば慣性モーメントも大きくなり、芯を外しても球が曲がりづらくなって飛距離のロスが抑えられる。とりわけ、近年のドライバーは「大慣性モーメント」がトレンドだが、一つ注意しなければいけないことがある。
大型で重心距離が長いために、ヘッドを返しづらいのだ。フェースターンが間に合わず開いたまま当たったら、球が右方向へ真っすぐすっ飛んでしまう。それを嫌ってムリやり返そうとしたら、今度は左に引っかかる。そんな悩みを抱えているゴルファーは多いのではないだろうか。
だからといって、返しづらいヘッドの特性に合わせて「フェースをシャットにした(閉じた)まま打ちなさい」といきなり言われても、スウィングのイメージをそうそう変えられるものでもない……。中村はこう言う。
「シャローバック形状の『モデルE』は、ヘッドの投影面積が大きくて安心感があるのに、打ってみるとフェースをスクェアに戻しやすいんです。今までの感覚で打って“フェースが開いた”“カットに入った”と思っても、プッシュアウトしたり右へすっぽ抜けたりしないで、ターゲットに向かって真っすぐ高く飛び出しますし、ヘッドがターンするスピードも生かせるのでヘッドスピードが上がりました。大きいのに返りやすい。これは他のドライバーにはない魅力ですね」
まるで“飛んで曲がらない300S”。「ミズノプロ モデルS」
一方で「300S」という名器の流れを汲んだまま大きくなって進化したドライバーが「モデルS」だと言う。ヘッドは435ccと小ぶりなハイバック形状で、インパクトでボールをしっかり押し込んで力強く飛ばせる。
「引き締まった顔つきとぶ厚い打感・打音は、まさしく『300S』に通じるものがあります。今どきドライバーの中では小顔で小回りが利くし、バルジがついた丸みのあるフェースということもあって、ドロー・フェードと球筋を打ち分けやすい。“曲げようと思ったのに真っすぐ飛んじゃった”とか“逆球”が出る不安がありません。ワザが使えるけれど、ミスの許容性も程よく備わっている。持ち球を生かしながら、イメージした球筋でコースを攻略できるドライバーですね」
最新作となる「ミズノプロ」シリーズのドライバー「モデルE」「モデルS」は、ミズノが培ってきた伝統的な形状や打音・打感を損なうことなく、飛びにおいて過去の名器を完全に凌駕する進化を遂げていた。
その中でも、ストレート弾道で飛ばせる「モデルE」、コントロール性を求めた「モデルS」というすみ分けができている。好みのモデルを選んだ上で、打ち手のパワーや技量にクラブのスペックとシャフトをアジャストすれば、アスリートだけでなく幅広いアマチュアがやさしく飛距離アップをモノにできる。
この飛距離、体験しないのはもったいない!